従兄様の思惑通り
結論から言うと、陸斗くんのお父様に私と陸斗くんの婚約を認めて頂けました。
従兄様……いえ、この場合はおじ様ですね、の名前を出したら一発でした。
従兄様一家が私を猫可愛がりをしているというのはどうやらこの世界で有名な話らしいです。
本当に何やってんのあの人たち。
いくら溺愛するお母さんの娘だからって、いくら女の子が私しか産まれなかったからって!
「……外堀が埋められて行くってこういうことを言うんだな」
私が悶々としている間にも遠い目をしてコーヒーを啜る陸斗くんのライフゲージは限りなくゼロに近いです。
というのもここまで出てくるのも一苦労で、自棄を起こした陸斗くんがデートなんだから邪魔してんじゃねぇ!!とキレて根掘り葉掘り聞いてくるお父様からなんとか逃げ出してきた次第であるからでございます。
あのお父様の勢いは怖かったです。
「アキ兄の思惑通りだねぇ」
「呑気だな!てめぇはよ!!」
もぐもぐとケーキを食べる私に陸斗くんがガックリと項垂れました。
だって焦ったところでしょうがないじゃない。皆さんもそう思うでしょう?
ああ、このお店コーヒーだけじゃなくてケーキも美味しいんだ。幸せ。
「……親父のやつ目がマジだったぞ」
「むぅ。それを言うならアキ兄だって大マジだよ。もぐもぐ」
「そうだよな。明のやつもマジだよな。
……幸せそうに食いやがって、美味いか?」
「おひしぃー!」
「そりゃ、よかったな」
「ごくん。まぁ、お互いに好きな人を見つけることからはじめましょうよ。
じゃなきゃ婚約破棄の理由がつくれない」
「……そうだな。お互いに問題ないのは明のやつがよく知ってるからな」
溜息混じりにそう言いながら陸斗くんは自分の分のケーキを切り分けて私に差し出します。
なんとなくそのまま食べてしまいましたがコレって巷で有名なあーんってやつではないでしょうか。
ひとくち、ふたくちと差し出されるフォークに遠慮なく齧りついておいてなんだけどそれマズくないですか?はたからみたらただのバカップル……。
あ、でもこのチーズケーキもおいしい。
おいしいからしかたない。うん。