従兄様はシスコンでした。
つい先ほどとんでもない爆弾を投下してくださった従兄様は私たちの必死の抗議に耳を傾けてくれません。
「ちょ、ちょっと待ってよ!アキ兄!婚約ってなに!?」
「そうだ!納得いくように説明しやがれ!!」
「説明もなにも、いつかどこの馬の骨ともしれない野郎に奪われるくらいならお前の方がマシだと思っただけだ」
真顔で言い切った従兄様に私も陸斗くんも言葉がでません。
え?なに?この人、こんなキャラだっけ?確かに可愛がってもらっていたけれども!でも、可笑しいよね。どう考えてもこの流れは可笑しいよね?
「ジジイに決められるくらいなら俺が決める」
「いやいやいやいや!!なんでそうなるの!?というか私、婚約なんてしないからね!
相手の迷惑も考えてください!!」
「そうだ!俺やコイツにだって選ぶ権利っつーもんがあるんだぞ!!」
「ちょ、それどういう意味ですか!?なんか失礼!」
「いや、そういう意味じゃなくてだな。
お前が悪いとかそういうことじゃなくて、お前にだって好きなやつや彼氏がいるだろ」
その単語に私よりも敏感に反応した人がいました。従兄様です。
ギロリと鋭い目がこちらを睨みつけてきます。美形なだけに迫力満点です。怖いです。
何してくれてんだこの人!!
内心涙目になりながら無言の圧力に耐え黙秘を主張……できる訳もなく、数秒で無駄な抵抗をやめました。
「……いませんけど」
「はぁああ!?お前女子高生だろ!?なんつー枯れた学生ライフしてんだよ」
「うるさい!
いないもんはいないんだからしょうがないじゃん!
枯れてるのなんか私が一番わかってんだよ!
友達がいればいいもん!男より友達だもん!!」
だからそんな可哀相な子を見る目で見るな!
というか
「そういう自分はどうなんですか!?」
「……いない、なぁ」
自分だっていないんじゃないか!とギャンギャン吠える涙目な私の頭をよしよしと撫でながら従兄様は満足そうに頷いた。
「なら、問題ねぇな」
「「問題しかない!!」」
……誰か助けてください。