従兄様の横暴
従兄様からのご褒美として高そうな美容室に放り込まれ、何故かドレスアップして髪を弄られ、化粧をされ、また別人な私が完成したころに従兄様もきっちりスーツを着て迎えに来てくれました。
そのまま説明もされずに車に揺られること1時間、何故かまた豪華なお家の門をくぐっています。
あれ、おかしいな。
車を降りると不機嫌全開な陸斗くんが待っていました。
そして私の顔をみたとたんくわっと従兄様に噛みつきました。
「明、てめぇまた沙奈になんの説明もなしに連れてきやがったな!」
「よくわかったな」
「この顔みてわからねぇやつがいたら逆に怖ぇよ!!」
「まぁ、そういうことだ。あとは頼んだぞ」
「おいいいいい!!!」
颯爽と去っていく従兄様には陸斗くんの抗議は届きません。
ため息を吐いた陸斗くん曰く、今日はどうぞのお金持ちが開いたパーティーらしいです。
陸斗くんもお兄さんとお姉さんに拉致られるように連れてこられたらしく、私の顔をみてアキ兄が絡んでいると確信したそうです。どうやらまたひと波乱あるようです。
「……パーティー初心者の私はどうしたらいいですか」
不安しかないですという顔で陸斗くんを見ると陸斗くんは髪型を崩さないようにそっと私の頭を撫でて隣でにこにこしてりゃ、俺が何とかしてやるととっても男前なことをおっしゃいました。
なにこのイケメン!ずるくない?ずるくない?とか思いながらも陸斗くんの言葉に甘えて陸斗くんの隣でにこにこしてます。
見ず知らずのおじ様、香水がくさ……すてきですね。酔いそうです。
滅多にこういう場には顔を出さないなんて言いながらも陸斗くんは群がるおじ様おばさま、お姉さまを華麗にさばいていきます。すごい。
というか、さっきから陸斗くんにすごーく熱い視線を送ってくるお姉さまがいるんですけど。
なにこのイライラ。なんでこんなにイライラするの。
ぎゅっ。
「沙奈?」
「なんでもない」
思った以上に拗ねた声がでて焦ります。でもからめた腕は離しません。
ついでにお姉さんを睨むのもやめません。陸斗くんは私のだもん。
…………。
ん?なんか今、とんでもないことを思ったような……。
「沙奈、機嫌が悪そうだな?」
老若男女問わず多くの人の視線を引きつれて従兄様がすべてを見透かしたように口の端をあげました。
私はキッと従兄様を睨み付けます。
「素直になることが大事だぞ」
その顔を見て従兄様は喉でクツクツと笑うと陸斗くんと一言二言話してまた別の人のところに行ってしまいました。
話しかけてくる人も少なくなって陸斗くんとふたり壁の花を決めこんでいます。
「陸斗くんってモテるんだね」
「なんだ妬いてんのか?」
「……そうだって言ったら?」
からかうような陸斗くんの言葉にむっとしながら陸斗くんを見上げます。
陸斗くんは驚いたように目を見開いた後おかしそうにクツクツと笑いだしました。
「クク、お前はほんとに可愛いな」
「陸斗く、」
抗議するように陸斗くんの名前を呼ぶと遮るように影が私にかぶさり、長い指がそっと前髪を払いのけました。
邪魔のなくなったそこに柔らかい何かがふれた後、驚きに満ちた顔で陸斗くんをみると今まで見たことのない顔をした陸斗くんがいました。
「好きだよ。お前のことが好きだ」
「おでこじゃやだ。ちゃんとキスして」
我儘を言う私に陸斗くんは人目から私を隠すようにしながらそっとキスしてくれました。
従兄様の横暴に振り回されるのもたまには悪くないです。
多少強引な気もしますがこれにて完結です。
今までお付き合いくださりありがとうございましたm(__)m