従兄様からのご褒美
従兄様からのミッションもとい、テストで陸斗くんのおかげで赤点を回避―――いえ、珍しく高得点を叩き出した私はなぜか従兄様に褒められています。
「よくやった」
デレモードな従兄様は芸を覚えた仔犬を褒め、甘やかすようにぐりぐりと私の頭を撫でてます。
私、人間なんですけど。そんなことされたって嬉しくないこともない。いえ、うれしくなんかな、ないんですから……!と、とにかく!いつまでもぐりぐりしないでください!
「沙奈、ご褒美はなにがいい?」
「陸斗くんにもらうからいい」
些細な反抗心を出した私に従兄様は笑顔のままぴしりと固まって禍々しいオーラをまき散らすようになりました。
「う、嘘!嘘です!アキ兄にもたくさん褒めてほしいですっ!!」
「だよな」
にっこり。
なんですか、これなんて罰ゲームですか。怖いんですけど。ありえないくらいに怖いんですけど!!!
「とりあえず出かけるぞ」
「……」
「不満か?」
「イエ、メッソウモナイデス」
でもたしか、この展開前にもあったきがするんですけど。
前回はなんかとんでもないことに巻き込まれた気がするんですけど。
ちなみにあの写真は机の鍵付きの引き出しに封印してます。
だって恥ずかしすぎる。誰にも見せられない。自分でも直視できない。
「じゃあ行くぞ」
ご機嫌な従兄様に首根っこをつかまれてずるずると引きずられていきます。
車に乗せられてしばらくすると例の結婚式場の前でちょうど信号待ちになりました。
「沙奈、見てみろよ」
「なにぎゃあああああああああああ!!!何これ!なにこれぇえええ!!!」
「うるせえ」
従兄様が見せてきたチラシには私と陸斗くんが微笑みあってる写真が使われていました。それもけっこう大きく!!
「よかったな」
魂の抜けきった私はなにも言えません。
お姉さんのことを考えるとよかったんでしょうけど、私にとってはちっともよくありません。
これがご近所に配られているかと思うと、というか我が家にもこれ、あるんですよね……。
もしかしてお母さんの笑顔が妙に輝いていたのはこのせいですか。というかお母さんにはこの別人な私がちゃんと私に見えてるってことですか!?
「おばさまも褒めてたぞ」
「いやぁああああ!!!バレてるぅうううう!!」
ぎゃあああと取り乱す私をうるさいの一言で黙らせて従兄様は一件のおしゃれなお店の前で車を止め、私を下ろしました。
一般ピーポーな女子高生には縁のない高そうな美容室(といっていいのかもわからない)の美容師さん(たぶん店長さん)に「じゃあ頼んだ」とポイっとわたしを押し付けるとさっさとお店を出ていきます。
またこのパターンですかぁああ!!!と叫ばなかった私を誰か褒めてください。