従兄様はおっしゃいました。
見るたびに真っ赤になってゴロゴロと転がりたくなるような写真を机の鍵付きの引き出しに封印してなんとか日常を過ごしてます。
でも、ふとした瞬間にあの写真が蘇ってきてわぁあああと叫びたくなります。
いつの間にあんな写真撮ったんですか!?
まともな撮影にならなかったのにすごくご機嫌だったと思いましたけど!陸斗くんが気味悪ぃと呟いてたのも聞きましたけど!!陸斗くんのお兄さんの微笑ましいものを見守るような微笑みは気のせいじゃなかったんですね!
じゃあ、帰りの車で従兄様がちょっと不機嫌だったのも気のせいじゃないんですか!?ってそれは関係ないですね。従兄様が気まぐれなのはいつものことですし。
「沙奈、あんたさっきから何百面相してんの?」
キモイ。つか怖い。と怪訝そうな顔をする親友はひどいと思います。
「ひどくないし。つかアンタ大丈夫なの?来週の中間」
「……。チュウカン??」
「何それって顔してもダメだから。知らないふりしても現実は変わらないから」
「美紀様―――!!」
「ヤダ。あんたのお守りするくらいならカラオケ行くわ」
「冷たっ!親友<カラオケってどういうこと!?」
「イケメンの従兄様に今回も頼るのね」
「無理だよ!アキ兄スパルタ!死ぬ!というか殺される!!」
ガクブルな私を親友様はとっても呆れた顔で自業自得だと言い捨てて机の上に広げられた雑誌に目を落としました。
どうしてこの親友様は派手な容姿に反して勉強ができるんだ!裏切り者!!心の中で叫んだはずなのに親友様に睨まれました。撃沈。
がっくり項垂れて机にべたーんと突っ伏した時、タイミングを計ったかのようにスマホが震えました。
「げっ!」
「なに?どーしたの?」
「従兄様からの死刑宣告。赤点とったら一日おもちゃにされる……!!」
「あら、いいじゃない」
「いくない!しかも今回は自力で何とかしろって。無理じゃん!美紀様ぁああ!!」
「イ・ヤ!今回はあんたに構ってられないの」
「うぅっ」
「余裕ができたら見てあげるからたまには自力で頑張りな」
「あい」
とは言ったものの数学は敵!な私が自力で何とかできるわけもなく図書館に陸斗くんを召喚しました。
「……お前、学校で何やってんだ?」
「友達と楽しく過ごしてます!」
キリッとした顔で答えると陸斗くんはこれ見よがしにはぁとため息を吐いて従兄様並みにスパルタ授業を開始しました。死ぬ。マジで死ぬ。
「まずは公式を叩き込め。話はそこからだ」
「はい……」
黙々と問題を解かされること数時間力尽きた私に飴を与える陸斗くんがいます。
「よく頑張ったな」
「うー」
うんうん唸ってる私に苦笑いしながら陸斗くんがケーキを口に放り込んでくれます。
ぐったりしながらもしっかり口を動かす私に小さく笑いながらコーヒーを飲む陸斗くんをぼーっと眺めます。
甘やかされてるなぁと思うけど心地いいから自分からはやめられそうにありません。
なんだかんだで私を甘やかす陸斗くんが悪いと思います。
「沙奈、ここで寝るな。送ってやるから家まで頑張れ」
「うぅー」
「重症だな」
「陸斗くんスパルタ」
「明よりマシだろ?」
「うん」
「クク、ほら、ケーキ食っちまえ」
陸斗くんに餌付けされるの、嫌いじゃないから困る。なんて思いながら差し出されたケーキに噛り付きました。