従兄様に呼び出されました。
従兄様に呼び出されました。
この従兄様というのが大変曲者で一般ピーポーな私とは住む世界が180度ほど違っておりましてですね、大変お金持ちの御曹司様なのでございます。
従兄がお金持ちならお前もそうじゃねぇの? ですって!? それが違うんですよ! 我が家の大黒柱サマはごくごく普通のどこにでもいるサラリーマンです。ママンがいいとこのお嬢様だったってだけで。
そういうわけでパパンとママンの結婚の際にはいろいろとあったらしいですが、ママンが家をでてパパンと一緒になるってことで落ち着いたらしいです。
それでママン……いい加減めんどくさいな。お母さんの実家と小説や漫画みたいに縁を切った訳じゃなく、お正月やらなんやらの度にちゃんと顔を出します。
純然たる庶民のお父さんと私は未だにビクビクしてたりしますが、そこら辺は察してください。だって住む世界が違うんだもの。
話を戻しましょう。そんな住む世界の違う従兄様からわざわざお呼び出しがあったんです。
お金持ちの御曹司特有?の冷たい印象をもたれる従兄様は何故か私のことを可愛がってくれてます。そんな従兄様に懐かない訳がなくて、いつもならワンコのごとく尻尾を振ってお呼び出しに応えるんですが、いや、今回も尻尾を振って従兄様の元に出向いたんですが、これは一体どういう状況ですか?
大好きな従兄様の部屋には従兄様と見知らぬ男の子。
彼も私が来ることを知らされていなかったのか私の顔を見てこいつは誰だと言いたげに従兄様を見ています。
私も彼と同じようにその人だれ?なんで私呼ばれたの?という顔で従兄様を見つめます。
けれど従兄様は私たちふたりの疑問に答えることなくどことなく満足そうな顔で微笑みました。
あ、嫌な予感。
「沙奈、こいつは俺の友人の陸斗だ」
「はぁ、」
「陸斗、従妹の沙奈だ」
「……おう」
戸惑いを大いに含んだ私たちの視線を綺麗にスルーして従兄様は笑顔で爆弾を投下しました。
「お前ら、婚約しろ」
「「はぁああああ!?」」
初対面の人と婚約って何考えてんの!?
そう叫ばなかった私を誰か褒めてください。いや、この場合叫んだ方がいいんですか!?
混乱して固まるしかない私と陸斗くんを放置して従兄様はとても満足そうでした。