襲われちゃった(誰が?)
九話目~
二日に1回の投稿になりつつあります……。
投稿のペースはどうなるか分かりませんが、そのへんよろしくですm(_ _)m
そして、今回は三人称なんでそこもお願いしまーす。では、始まり~
その者は暗くなったカルミラ城を一人歩いていた。しかし、その者の容姿は暗闇とは不釣り合いなものだ。端整な顔立ちに女性でも羨む美しい金色の髪をなびかせている。着用している鎧も傷一つなく暗闇の中でも輝いている。鎧にはこの国の騎士団の紋章が書かれていた。そう、その者は騎士団の者だった。だったというのはもうその者は騎士団では無いからである。その者の名はバウル・クルーラー。元騎士団長で、今日セシア姫と同様に勇者に同行することを命じられたものである。だが、何故こんな時間に出歩いているのか?先程も言ったが、彼はもう騎士団では無い。それに明日から勇者との旅も控えている。すぐに休むべきだろう。そして、何故彼の顔にはいつもニコニコした笑みではなく、不釣り合いな歪んだ笑みを浮かべているのか……。そしてバウルはある部屋の前で止まった。そしてドアをノックした。
トントン
「はい、どなたでしょう?」
透き通る様な声がドア越しに響いた。
「夜遅くにすいません。バウルです」
「あ、バウルですか。ちょっと待ってくださいね」
そう部屋から聞こえドアは開かれた。そこには美しい少女がいた。
「どうぞ、入ってください」
そう言いながら少女は部屋に招き入れてくれた。その少女とはセシア・カルミラ。この国の王女にして今日ヤマトを召喚した張本人である。また、同じくバウルと共に勇者に同行する様に命じられた者だ。だから、こんな時間にバウルが訪れたことに、セシアは別段不思議に思うことはなかった。それが間違いだった……。
「明日から旅が始まりますね、姫様」
出された椅子に座りながらバウルそんなことを言った。
「えぇ、私たちが世界を平和に導かなければなりません。ヤマト様と一緒に」
そう言いながらセシアは少し頬を赤く染めた。セシアはこの2年間色々なことを学んだ。それは勇者のことについてもである。そしてセシアは勇者のことを学ぶにつれて、一種の憧れのようなものを抱いていた。そして自分が呼び出した勇者は世界を救うと宣言してくれた。自分の思い描いていた勇者にヤマトが重なったのだ。その時を思い出し、また体が熱くなるのを感じた。
「えぇ、ヤマト様と一緒に、ね」
そうバウルはセシアの言葉を繰り返し呟いた。
「バウル?どうかしましたか?」
「いえ、何も」
バウルはスッと立ち上がり
「そんなことより、姫様」
セシアに近づき
「ーー操られるのはお好きですか?」
近くにあったベッドに押し倒した。
「え…」
セシアは一瞬、理解出来なかった。そしてハッとなり
「バウル⁉何を⁉」
慌てて聞き返した。
「何をって決まってるじゃないですか」
そう言いながら彼はあるものを取り出した。
「それは⁉」
彼の手には首輪の様なものが握られていた。
「【隷属の首輪】⁉」
セシアは驚き声を上げた。
「どうしてあなたがそんなものを⁉」
そう、普通は持っているはずが無いのだ。
【隷属の首輪】
これを付けられた者は首輪の力によって拘束され、主人となった者のいいなりになってしまう。拘束されるのは、首輪にかけられている魔法のせいだ。着脱可能だが主人にしか外せない。これは普通、奴隷身分の者に付けられる。だが、決して無理矢理では無い。奴隷身分になる者は、何かしらの理由がある。それは人によって様々だが、襲われて奴隷になった者はいないはずだ。はずと言うのは、奴隷にされてしまっては、それすらも主人の許可が無い限り喋ることも出来ない。
今この状況は、そんな知られていない稀な光景なのかもしれない。
「それは許可がない限り持ってはいけないはず⁉なんであなたが持っているんですか!」
怯えつつも、セシアは怯まない様に問いただした。
「それにこんなことをして許されるはずがーー」
そこまで言ってセシアは言葉に詰まった。何故ならバウルが今まで見たことのない歪んだ笑みを浮かべていたからだ。
「えぇ、確かに許されないでしょうね。一国の王女にこんなことをすればきっと国が、そしてカルミラ王が許さないでしょうね」
「だったら何故ーー」
「しかし、これが王の考えだったら?」
「え…」
セシアはバウルが何を言っているのか理解出来なかった。
「これが僕だけの犯行だと?そんなわけないでしょう。これは王の、もっと言えば国の犯行です。まぁ城にいる重鎮だけですがね」
そしてバウルは話し出した。
「王様はね、勇者を意のままに動かしたかったんですよ。今この時、勇者は世界の希望です。その勇者を召喚させたまではいいでしょう。しかし、もし勇者が反逆でも起こしたらどうなると思います?」
「そ、それは」
「最悪、国は滅ぶでしょうね。もし、取り押さえられたとしても他国からの反感を買ってこの国は悲惨なことになるでしょう。」
「で、でも!ヤマト様は国を救うと言ってくれたじゃないですか!だったらこんなこと……」
「いつ気が変わるかも分からないのですよ?それに勇者様は戦争も魔族も無い世界から来たんですよ?その可能性は十分にあり得るでしょう」
「………」
セシアは押し黙ってしまった。しかし、それなら何故セシアが今襲われているのか?
「なら何故私まで拘束する必要があるんですか?」
「簡単なことです。もし、勇者を拘束すれば一緒に旅をする貴方は疑わしく思うでしょう。言ってしまえばついでですよ、ついで」
「そ、そんな」
「信じられませんか?でも、残念なことにそれを言ってきたのは、貴方のお父様ですよ?」
それを言われ目の前は真っ暗になり、頭の中は真っ白になった。そして頬を涙が伝う。そんなセシアを見てバウルは大きく口を歪める。
「そう、その顔が見たかったんですよ。セシア姫、貴方は美しい。この上ないほどに。だからこそ、壊しがいがあるんですよ。やはり、美しいものを壊すのは、この上なく楽しい……」
そう言いながら首輪をセシアに近づけていった。
「い、いや……やめて……」
セシアはもう泣きながら力無く拒否する事しか出来なかった。
「そう、もっとその表情を見せてください」
もう逃げ道は無い。
「…ヤマト……様ぁ……」
そんな中、セシアは呟いた。ここには居ない彼女の憧れを。すると
「ーーあ~俺やっぱりお前嫌いだわ」
囚われの姫に光が舞い込んだ。
さぁ!とうとう激突です!バトルかけるかなぁ………。まぁと言う訳で次回はまたヤマト視点に戻りまーす。
それではまた( ´ ▽ ` )ノ