とうとう勇者になっちゃった
九話目~
謝らなければならないことがいくつか。
更新遅くなってすいません!色々ありまして……。その分今回は長いのでそれて許していただければな~、なんて。
そして、設定上魔族の侵攻を3年前から20年前に変更しました。ちょっと設定があれしちゃったので……。
長くなってすいません。それでは始まり~
カルミラ王と面会した後、俺たちは別の部屋に向かった。勇者認証の儀をするためだ。しばらく歩くと、前を歩くセシア姫が立ち止まった。
「ヤマト様、ここが勇者認証の儀を行う部屋です」
そう言いながら扉を開け部屋に入って行き、俺もその後に続いた。そして部屋に入るとそこには
ーー大きな魔法陣があった。
それは直径十メートルはあるもので部屋全体に広がっている。正確には魔法陣かどうか分からないが、俺は驚きすぎて声を発せられなかった。そんな俺を見てかセシア姫が話しかけてきた。
「すごいでしょ?ここは儀式を行うための部屋で、あの魔法陣は魔力を集めるためのものなんです。ここでヤマト様を召喚したんですよ?」
フフッと笑いながら教えてくれた。おぉ、エンジェルスマイル出ました。まさか!俺が来たことがそんなに嬉しいのか!……うん、それは無いな。きっと勇者を呼べたことが嬉しんだろう。セシア姫に笑顔に見惚れつつ、俺は気になることがあり質問してみた。
「魔力を集めるってどういうことですか?」
「空気中に漂っている魔力を人工的に集めているんです」
「なんでそんなことをするんですか?」
「人は体内に魔力をある程度保有しているんですが、それは人によって保有してる量は違うんです。儀式をする際には多くの魔力を使います。そのため儀式が成功しにくいのです。なので、この部屋に魔力を集めることによって儀式をしやすくしているんですよ」
へぇ~そうなのか~。とういうことは俺にも魔力があるのか?魔法を使いたい俺としてはぜひ知りたい。でも俺この世界の住人じゃないから、魔力無かったらどうしよう……。
「では、そろそろ」
「は、はい……」
暗くなりつつ俺とは対照的に、セシア姫は明るくそう言ってきた。姫様、今はその笑顔も眩しすぎるっス……。
「そういえば、勇者認証の儀って何をするんですか?」
「ヤマト様は私の質問に答えてくださるだけで大丈夫です、安心してください」
そういい彼女はこちらに微笑んでくれた。次は俺が励まされてしまったな。男なんだからシャキっとしなくては。
「はい、もう大丈夫です。お願いします」
「それでは、始めます」
セシア姫はすぅっと深呼吸した。すると、魔法陣が輝きだした。
「『異世界から召喚されし者よ。汝、己自身を勇者と認め勇者として行動することをここに誓うか?』」
これがセシア姫の言ってた質問か?勇者と認め勇者として行動する、か……。これを承諾すればもう後戻りは出来ないだろう。でも、答えは決まっている。
「あぁ、俺は勇者であることを認めそれに恥じぬ行動をするとを誓う」
「『良い。ならばこの力を授けん
ーー【勇者の加護】!』」
セシア姫がそう言うと、俺の足元に魔法陣が現れ光が俺を包み込んだ。その瞬間、俺の中に何かが入ってくるような感覚に襲われた。そしてその何かの正体はすぐに分かった。勇者に必要な力、つまり世界を救う力。それは俺の中に知識として入ってきた。武器の使い方、魔法の唱え方や種類、世界地図など、この世界で勇者として生きていくのに必要な知識が入ってきた。その知識が入り終わると光と同時に魔法陣も消えた。しかし、俺は突然のことに固まってしまっていた。そんな俺を見てか、セシア姫が
「終わりました。大丈夫ですか?」
こちらの世界に呼び戻すようにまた微笑んでくれた。
***
儀式を終えた俺たちはさっき話した部屋に来ていた。ちなみに、俺たちとは三人だ。悲しいことに。俺と愛しのセシア姫、そして邪魔者バウル。こいつとなんでずっとにいなきゃならねぇんだ!さっさと俺とセシア姫の二人にしろ‼いや、分かってるよ?こいつがずっと一緒にいんのは。これから一緒に旅するんだからだろーけど、それでも少しぐらいいなくなってもいいんじゃねぇの!お前騎士団長だろ‼そんなこと言ったらセシア姫も姫様なんですけどね!
「バウルさん、騎士団の方は大丈夫なんですか?」
俺はとうとうニコニコイケメン野郎に質問という名の攻撃を始めた。これが俺の初陣じゃあぁぁぁ‼
「僕は王様からあらかじめ知らされていたので、騎士団はもう他の者に任せてますので大丈夫ですよ」
「あ、そうですか」
そして俺の初陣は呆気なく失敗した。まさかこんなに呆気なく終わるとは……。しかもこいつ終始イケメンスマイルだと……!くそう!これが騎士団長のカリスマなのか⁉俺はバウルのことは諦め、セシア姫と親睦を深めることにした。
「それにしてもすごいですね。あんなことができるなんて」
「い、いいえ、私は王女として当たり前のことをしただけですよ」
顔を赤くしながら言ってきた。あれ?照れてるのかな?王女ならそんなこと言われ慣れてると思ったのに。
「そんなことないですよ。勇者の召喚ってなかなかできるものじゃないんでしょ?それが王女様ができるなんてすごいことじゃないですか」
「いえ、王女が出来るんじゃなくて、王女だからできるんですよ」
「?それはどういう意味ですか?」
もしかして私だから出来る的な?そんな自意識過剰なのか?この人。
「この国では魔族の侵攻が再び始まった時に王の相手には魔力の高い女性がなることになったんですよ。そして、ここの宮廷魔法士として働いていた私の母、セリア・エトラが選ばれたんです」
「それとセシア姫が召喚魔法を使えるのにどんな関係があるんですか?」
「個人が保有する魔力や使用魔法は親からの引き継ぐことが多いんです。そうじゃない人ももちろんいるんですけど。そしてお母様は類を見ない程の召喚魔法使いでした」
だからセシア姫も高度な召喚魔法が使えるのか。
「お母様は実力もさることながら、その美しい容姿から『美麗の召喚魔法使い』として他国でも有名でした」
そうか、セシア姫の美しさは母親譲りか。そりゃあそうだろな。カルミラ王とは似ても似つかなかったもんな。
「その容姿のためか色々な方から求婚されていたらしいですが、お母様はそれを全て断っていたそうです。なんでも、結婚すれば魔法使いとして働くのが難しくなってしまうそうでしたから」
女性が結婚して家庭のことをするのはこちらの世界でも普通なのか?
「先ほど言った決まりのため、お母様はお父様と結婚したそうです。お母様は他人の為に動くことを大切にしていたので、この決まりには不満はなかったそうです」
「いいお母さんですね、国の為にそこまでできるなんて」
「はい、とても優しい人でした……」
でした?どういうことだ?そういえば、カルミラ王との面会の時もいなかったな。……まさか!
「お母様は私を産んでからも魔法使いとして働いたそうです。これはお母様の願いでもあったんですが。そして2年前、魔族の侵攻の時に国を守って……」
やっぱりそうだったのか……。この世界にセリアにもういない。
「すいません、知らないとはいえ辛いことを思い出させてしまって……」
「い、いえ、私が話始めたことですし……。それに私はお母様を尊敬していると同時に目標にしています。だから、この2年間必死で色々なことを学びました。そして今、ヤマト様を召喚できたことでお母様に近づけたような気がするんです。だから、お母様のことをヤマト様にも知って欲しかったんです」
そしてセシア姫は今までにない美しい笑顔で笑った。
そうか、セシア姫が綺麗なのはお母さんのおかげか。見た目だけじゃなく心まで母親譲りとは。
「俺もセシア姫のことが知れて嬉しいです」
「え⁉わ、私のことが知れて嬉しい、ですか?」
「はい、もちろんです」
「は、はぅ」
どうしたんだ?そんなに顔を赤くして?そんなにこの部屋暑いか?
「こ、今度はヤマト様のことについて教えてください!」
「え⁉俺のことですか?」
「はい!私のことだけなんて不公平です!」
それって不公平ってなのか?
「ま、まぁいいですけど……」
まぁ俺の世界のことについて興味があるのだろう。
「俺は日本って言う国に住んでいましてーー」
そして俺は自分の世界について話した。俺の世界には魔法が無く科学が発達しているとか、人間以外の種族は居らず魔族はいないだとか、俺の国では戦争が無かったとか、そんなことを話した。俺の話にセシア姫は驚いたり、目を輝かせたりでこちらとしても楽しめた。眼福眼福♪そんな中、バウルの浮かべている笑みが少し変わった様な気がした。
ピピッ
***
「ヤマト様、今日はありがとうございました」
「いいえ、俺としても楽しめましたし」
「?何をですか?」
「い、いえ!なんでも!」
あ、あぶない。まさかあなたのコロコロ変わる表情を見て楽しんでたなんて言えない……。
「では、明日から頑張りましょう」
「はい、勇者として俺も頑張ります」
「今日はお疲れでしょうから、部屋を用意したのでそちらでお休みください。バウルに案内をお願いしていますから」
「は、はい、ありがとうございます」
どうせならセシア姫に案内して欲しかった……。いや、疲れているのはセシア姫も同じだ。そんなことを考えるな。いやでもやっぱり………。
「では、ヤマト様、お休みなさい」
「はい、セシア姫もゆっくり休んでください」
そういい俺たちは別れた。
「それでは、こちらです。勇者様」
バウルはそう言いながら俺の前を歩き出した。俺はその後に続いた。こいつと二人っきりって初めてだな。まぁ嬉しくないんだけどね。どうせならセシア姫と二人っきりになりたかったよ!ていうか、何話せばいいんだよ……。そんな風に思っていると
「セシア様って美しいですよね」
「え?」
バウルがそんなことを言ってきた。
「は、はい。そうですね」
「国民からの支持も多いんですよ。容姿が美しいのもあると思いますが、僕はそれだけでは無いと思っています」
やっぱりそう思うよな。あんなの見せられたら。こいつはイケメンだけど、嫌いではない。好きでも無いけど。
「きっとセシア姫のお母さんもあんな人だったんだと俺は思います」
「えぇ、セリア様も気高く美しい人でした。セシア様もきっとあの様な方になられるでしょう」
「俺もあんな人が人の上に立つなら嬉しいですし、不満は持たないでしょうね」
俺が見てる限りこいつは悪いやつでは無いと思う。人のそういうとこを見れるヤツはなかなかいない。気に入らないけど。
「本当に……壊したいほど美しい……」
だからそんなことを言ってる騎士団長に俺は気づけなかった。
ピピッ
***
俺は用意された部屋に案内された。少し質素な様に感じるが、今日だけなんだからこんなもんだろう。
「では、ゆっくりお休みください」
「はい、案内ありがとうございました」
「明日から出発なので、体が楽になれるといいですね」
「一日じゃ疲れはとれないんじゃないですか?」
「そんなことないですよ」
そんなもんか?
「ではお休みなさい」
そういいながら、バウルは部屋を出て行った。
そして俺はベッドに入り、今日の疲れを癒す為に目を閉じた。
「きっと……楽になれますよ……明日になれば、ね」
バウルが部屋を出てニタァと三日月の様に口を歪ませながら、そんなことを呟いたとも知らずに……。
ピピッ
どうだったでしょうか?
そろそろ動き出すと思うのでよろしくです。
次回も近いうちに出来たらと思っています。
では~( ´ ▽ ` )ノ