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3 ローストポーク(2)


「うまい。脂が舌で溶けるこの感覚は豚の脂特有のものだろう。ポークは決してビーフの代わりではないと教えてくれている。そしてこのソースの香り。これが脂のくどさを打ち消し、箸を進めさせているのか。しかしこの味、ストワンにも合うんじゃないか?」

「おいしい。このソースおいしすぎる。これだけでごはん食べれちゃう。お肉も甘い。全くパサパサしてなくて口の中が幸せ。明日たくさん練習しないと」


 大絶賛である。父さん、そんな早口にグルメレポーターみたいなこと言わなくていいよ。妹よ、お前はまだまだ細くてたまに心配になるから遠慮せずじゃんじゃん食べなさい。というか俺の分まで食い尽くされそうな勢いだな。自分の分だけ皿に分けておこう。


「兄貴おいしい」

「お兄ちゃんは美味しくないぞ」

「は?」


 …白い目で見られた。悲しい。


「確かに上手くできたと思うが、流石に大袈裟じゃないか?」

「兄貴もいつもこんな感じじゃない?」

「うんうん」


 そうか?俺はただ妹様への感謝を込めて夕食を頂いているだけだが。不思議そうな顔をして凛果を見つめると、呆れたような視線をくれる。ジト目だ!ありがとう!


「兄貴もパパも毎日毎日飽きもせず褒めちぎってくるから、あたしも心のままに言っただけ。大袈裟でもなんでもないよ」

「ああ。久しぶりに悠真が頑張って料理してくれたんだ。少々熱は入っちゃったけど、嘘は何1つ言っていないよ。凛果のご飯と同じように喜んでるだけさ」


 なるほど。つまり凛果はこの嬉し恥ずかしを毎日味わっているのか。ナデナデしてやろう。


「ちょ、やめて」

「ハハハ、大人しく我がナデナデを受け入れるがいい」


 両手が茶碗と箸で塞がっていて抵抗できないようだ。ぐへへへへ、特に素晴らしい撫でテクを持っているわけではないが、お兄ちゃんの特権を行使させてもらう。これくらいなら嫌われないさ。


「パパは撫でてくれないのかい…?」

「あり得んが?」


 何が悲しくて父親の頭撫でなきゃならんのだ。とはいえ、今日は家族サービス的な日とさっき決めた。褒めるくらいはしてやろう。撫でないけど。


「父さん、いつも助かってるよ。学費も出してくれるし、小遣いまでくれて。父さんのお陰でお腹が空いて苦しんだこともない」

「悠真…」


 父さんが泣きそうな顔でこちらを見る。


「だから父さん、これからも…お財布として頑張ってくれ」

「うわああん!悠真ぁああー!」


 泣いちゃった。どうしよ


「どうしよ」

「自分で考えて」


 凛果がジト目で応援(主観)してくれてる!めんどいけど頑張るか!


「パパはこれからもがんばるからねえ!僕というお財布を使って元気に育つんだよおおお!」

「パパ、うるさい」


 勝手に立ち直ったかと思えば凛果が黙らせてくれた。妹様には誰も逆らえないのである。

 じゃあこのやる気はどうすれば。せや、ナデナデしたろ!


「ヤメロ」

「はい」


 これ以上はキレられてたな。本当に怒る前にちゃんとヤメロと言ってくれるのは凛果の優しさである。


 茶番はやめて俺もポークをいただく。俺の分はソース少なめの匂い弱めだ。うむ、悪くない。凛果のご飯と比べるとアレだが、なかなか美味しくできたじゃないか。


「美味いだろ?」

「なんで父さんが自慢げなんだ」

「自慢の息子の自慢の料理だからさ」


 しかし美味い。偶には料理するのもいいな。

 …というか凜果って今年高校受験では?


「そういえば凛果はどこ行くか決めた?」

「どこって?」

「高校」


 んーっ、と少し悩んだ末に、


「北原かなぁ」

「俺と同じか」


 ふーん、へー、俺と同じとこなのか。ふーん


「違うから。近くて学力的にもちょうどいいってだけだから」

「大丈夫、わかってるよ」


 北原高校。ここから自転車で10分でそこそこの進学校。とはいえ、


「凛果の学力ならもっといい高校行けるんじゃないか?それこそ東京の私立とか」

「お金なら心配しなくていいぞ。1人暮らしさせられるくらいには稼いでるからな」


 凜果はこれでも中学で1位を取り続けている。なんならこの前の模試でこの県トップ10に入ってた。北原なら鼻歌交じりに受かるだろう。テニス部のエースをし、毎日家族のご飯を用意しながらこれである。勉強に本腰入れれば俺が行かないと誓った東大だって夢じゃないのだが。


「いいよ別に。それに…あたし1人とか寂しいし」

「凛果……」


 なんだ?お兄ちゃんを泣かせにきてるのか?父さんなんて既に目からダラダラだぞ。


「あと、そんな勉強だけに力入れてらんないの。ご飯作んなきゃいけないし」

「そのことだが」


 これからは1年間、ご飯は俺が作ろうと思っていることを伝える。


「は?なんで?」

「凛果が家事に誇りを持ってることは知ってる。でも、流石に受験生に負担はかけられないよ」


 凛果がご飯の当番になったときから決めてたことだ。凛果が受験の時期は俺が代わりにやる。これからも料理してみようと思ったことで思い出した。


「パパは?どう思ってるの」


 泣き止んだ父さんが口を開く。


「僕はどっちのご飯でも嬉しいよ」

「キモ」


 凛果、実の親に失礼だぞ。俺が言えたことじゃないが。


「大変だよ」

「知ってるさ」

「今日1回だけじゃない。毎日やるんだよ?」

「あぁ、だからいつも感謝してるし、覚悟も決めた」


 覚悟決めたのは大分前の話だし、さっきまで忘れてたくらいだけどな。根っこの部分は変わらないさ。


「じゃあ、やらせてあげる。ありがと」

「こっちこそありがとう、だ。頑張ってうちに来てくれよ?」


 妹様との夢の高校生活…楽しみ過ぎる!

気を抜くと妹ちゃんばっかり書いちゃって妹9:その他1みたいになっちゃう

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