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2 ローストポーク(1)

 家。我が家。ここが俺のハウスである。

 マンションの一室だけどな!

 これでも角部屋3LDKでわりと住み心地がいい。父さんはいずれ一軒家に引っ越そうと言うけれど、正直家より先に金をかけるべきところがあると思うんだよな。

 ローン組むにしても中学時代の友人にローン地獄で極貧生活してる奴いたし。50年ローンはもはや払い切る気ないだろ。父さんがいい暮らしさせようとしてくれてるのはわかるけどね。

 うちの高校は朝早い分終わるのも早く、家が自転車の距離なのも相まって放課後が自由に使える。部活?そんなもの入ってるわけないだろ。

 ちなみに隆二はサッカー部で衣笠さんはそのマネージャーである。マジで絵に描いたようなリア充だな。ボールにして蹴りたい。


「ただいまー」


 大抵1番乗りは俺である。なんてったってまだ4時にもなっていない。電気をつけて制服を脱ぎ、そうだな。昨日(一応今日だけど便宜上、ね?)少々無理して漫画読んだから俺のサブカル欲は満たされている。寝る前1時間で満足する自信があるぞ。数学の授業をほぼ丸々寝た(茨木さんごめん)から昼寝もいらないし。明日は数学の授業がないから宿題は後回しにできるしな。記念日というわけではないが、せっかくだし家族サービスとして美味しい晩御飯でも作ってやろう。なんか英単語テストがあるなんて話を頭の隅に置いておきつつ


「いでよ、Cookbotクックボット!」


 結局料理なんてレシピ見たもん勝ちである。調理技術と創作力は違うのだ。巨大レシピサイトを開くと、ふむ。


「ローストビーフ…決まったな」


 簡単で豪華で美味しい。これだろ。

 父親が「ひもじい思いはさせたくないからね」という方針なので我が家の冷蔵庫にはいつもいろんな食材が眠っている。お陰で時々消費期限がヤバかったりするのだが、そこは妹様が管理しているので大抵なんとかなる。

 昨日妹様が買い物してきたばかりなので、優先すべき消費期限ギリギリなやつはないだろう…牛肉もない。さては節約したな?流石は妹様だ。

 妹様の牛を食べないという決定に異論を唱える気はないので、ローストポークにしよう。豚肉を外に出して室温に戻しつつ改めてローストポークのレシピを探す


「にんにくに塩胡椒、スパイス系は…あったあった。ワインは、うん。父さんごめんね」


 安いワインと笑っていたので大丈夫な筈だ。

 鍋いっぱいの水を火にかけつつ、ソースを作る。…ソースできちゃった。ふむふむ、やっぱり難しくはないが時間はかかるな。大量の水はどうしてこんなにも温めるだけでも時間がかかるんだ。父さんが帰ってくるまでには完成するといいのだが。


「あっ」


 ソースって肉焼いてからなのか。肉汁を吸わせる的なアレなのか。肉焼いた後そのフライパンで温めればなんとかなるかな?


「ただいまー」

「おっ、おかえりー」


 肉を焼き、煮込んだあとの放置中、サラダという名のちぎったレタスとミニトマトを並べてるとき。この可愛い声は妹様だな。


「んーいい匂い。兄貴なに作ってんの?」

「聞いて驚け、ローストポークだ」

「あ!あの豚ブロックは蒲焼きにしようと思ってたのに!」

「なして?」


 なんかの作品に影響されたらしい。鰻の代用…美味しいだろうけど鰻とは大分違う気がするが。全く、俺のせいで凛果も立派なオタに育ってしまった。

 凜果。俺の妹で、今は中学校の女子テニス部部長。茶色みがかった髪をポニーテールにまとめており、小麦色の肌はもはや芸術である。くりっとしたアーモンドアイに星を閉じ込めたような輝く瞳。しなやかな肢体が、とまで言い出すと流石に変態っぽいから自重しよう。やはり贔屓目なしでも可愛い。あまりの可愛さに定期的に男子に告白されるらしいが、お兄ちゃんは許しませんよ。


「このソース匂い強いけど大丈夫?」

「お兄ちゃんを舐めるなよ?問題ないどころか配合まで完璧だからな」

「すんすん、確かにいい匂い。おいしそう」


 すんすんする凜果に萌え萌えキュン。俺は二次元妹も三次元妹も大好きなので凛果が喜ぶと俺も嬉しい。それに俺のこと心配してくれてる。優しすぎるな。天使か?

 この程度の匂いの強さならもう慣れた。同じ強さでも臭いやつは辟易するが、これは美味しそうな匂いだからな。


 俺の鼻はめちゃくちゃいいが、それでできることなんて精々犬の真似事くらい。目とか耳ならドラマや漫画の主役張れたのに。

 それでも活かせないか考えた結果が料理である。(舌がよかったら料理系で主役張れたとか言ってはいけない)スパイス系に関しては、レシピは見つつも細かい調整は自分でやる。凜果の好みは把握済みだからな。スパイスの配合だけは凛果を上回っているという自信がある。スパイスだけ、それだけね。


「手伝うよ?」

「いいのいいの。日頃のお礼ってね」

「ふーん。兄貴の癖に殊勝な態度じゃん」


 うるさいやい。

 我が家の料理番は凛果であり、彼女のお陰で俺たちは生きていると言っても過言ではない。お礼というのは割とガチである。そもそもローストポークは工程が少なくて仕事を奪われるわけにゃいかんのだ。


「あ゛ー、ただいまー」

「「おかえりー」」


 凜果と雑談しつつもそろそろ完成というとき、父さんの声が聞こえてくる。丁度いい。出来立てを食べてもらおうじゃあないか。


「美味しそうな匂い…おっ、悠真が作ってるのか!」

「そうそう。ワイン勝手に使ってるよ」

「なん…だと…!」


 たかが安酒で崩れ落ちないで欲しい。いつもの酒ストロングワンで満足しなさい。

武内凜果りんか: 可愛い可愛い妹。兄妹仲がよく、互いに支え合っている。武内家の家事を一手に担うということになっている。が、兄も父もいつのまにか自主的に掃除などを終わらせているので一手に担っているという実感はない。責任感が強く雨の日も風邪の日もお弁当作りを欠かしたことがない。


武内拓磨たくま: 父。微妙に情け無いが、それは父と子というよりは家族の一員、運命共同体として対等に接してくれているため。まだ中学生の凛果やバイト禁止の悠真のため、パパは頑張って働きます。酒の味はわからないので普段はすぐ酔えるストワンしか呑まない。

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