1 きんぴら
小説なんて書いちまったよ
「ふぁ、んっと。眠い、眠すぎる」
俺は武内悠真。青春を謳歌する鼻の高校生2年生だ。花ではない。
昔からやたらと鼻がよく、昔東京に行ったときはその空気の悪さに地獄を見た。東大なんて絶対行かないと決めたのはこのときだな。幼馴染には「行こうとしても無理なくせに」と馬鹿にされたが。事実陳列罪を適応したい。
「で?昨日は何、ゲーム?ラノベ?」
「人をなんだと思ってるんだ。漫画に決まってるだろ。あと昨日じゃなくて今日だ」
このムカつくほどのクソイケメンは佐々木隆二。勉強できる癖にオタク趣味にも理解があり、更には可愛い彼女までいる。裏山けしからんどころか、こいつが高校初めての友人でなかったら裏山に埋めてたところだ。このリア充オタクめ
寝る前2時か3時まで漫画を読んでた。quxivで人気なのをそのまま漫画にしたやつで、半分以上は読んだことある内容だったが面白かった。1200円なんて惜しくないさ。
「サーシャさんだっけ。ヒンドゥー語でデレてくるのが可愛いとかで話題の」
「ノンノンノン、俺はサーシャさんだけの男じゃあないさ」
確かにサーシャさんLOVEではあるが世の中にはこんなにたくさん素晴らしい作品があるのだ。一途でなんていられない。
「りゅー、数学問題集の解答貸して〜」
「おら呼ばれてるぞ」
「みゆきすまん、家置いてきたから代わりにこいつの使え」
「ちょま」
こいつ人の机に手ぇ入れて勝手に渡しやがった。許すまじ。
「武内くんせんきゅー」
「お前あとでジュース奢れよ」
「100円のやつな。代わりにあと9回はなんか借りるから」
「一回10円と申すか」
さっきのがこいつの彼女さん、衣笠深雪さんである。濡羽色の長い髪に雪のように白い肌。ラノベヒロインのような容貌である。少々ダウナーで興味ないことにはとことん興味がなく、俺の名前を覚えて貰うのに五ヶ月かかった。因みに俺がこの高校で初めて覚えた男子(隆二は同じ中学なので除く)らしい。キャラ濃いな。
授業が始まるのでそろそろ黙って前を向く。まだ4月半ば、席替えもしてないので出席番号順だ。名前的に隆二を衣笠さんと俺で挟む形だ。両手に花だなと冗談で言ってたら衣笠さんと手を繋ぎながら俺の鼻を摘んできやがった。どうせ俺は花じゃなくて鼻ですよ。
1限は数学。これでも隆二の1番の親友(自称)なので勉強は教えてもらっており、授業は割と余裕である。でも毎回宿題を出すのはどういう了見か。衣笠さんだって丸つけしなければならなかったから俺の解答テキストを取っていったわけだし。
「じゃあプリント見てください。前回の続きからです。関数を微分したものを導関数といい…」
…退屈だ。数学教師の茨木さん。取り立てて美人というわけではないが、若くて行動一つ一つに愛嬌がある。彼女を見ているが、しかし退屈だ。春休み暇だったので隆二と猛勉強したのだが、おかげて既に積分の基礎まで予習終わってるため授業聞いても意味がない。とはいえ寝るのは頑張って授業してる茨木さんに申し訳ない。寝ない、寝ないぞ。話が入って来なかろうが睡眠時間4時間だろうが関係ない。なぁに心配いらないさ。普段はきっちり6時間は寝てるし、世の社会人の皆々様は命削って働いてる。この程度、人間の限界には…まだ……ま…だ……
「はっ」
「きりーつ、きをつけー、れーい」
委員長の、誰だっけ。あー、あーっ、安楽とか?が授業終わりの挨拶をする。寝ちまったよ。すいやせん茨木さん。
「悠真寝てたろ」
「寝てないが?」
「プリントと睨めっこでもしてたのか?前見ないどころか微動だにもしなかったが」
まじか。俺実は寝相いい説あるか?
なんやかんや昼休み。可愛い可愛い妹様の手作り弁当である。1人も2人も3人も変わらないといって朝早くから妹、父、俺の分を作ってくれるのでお小遣いは俺の倍はある。なんなら俺からもお小遣いあげてる。
「美味そうなきんぴらじゃないか。よこせ」
「衣笠さーん、こいつ他の女の手作り食べようとしてまーす」
「ん、許さない」
「ちょま」
ざまぁ。妹様がお恵みくださったこれを隆二にくれてやるわけないだろ常考。衣笠さんは独占欲強めなので隆二が食べる昼飯は衣笠さんの手作りだけだ。
一年生の頃から見ていたが、最初は焦げてたり形が崩れていた具材も今では綺麗で美味しそうになってる。これを食べながら人のきんぴら奪うとか論外だな。滅べ
「はい、あーん」
「恥ずっ!う、あー」
隆二が勝手なことしないよう箸を取り上げたようだ。せいぜい公開処刑されたまえ
…うざいな。人のすぐ隣でイチャイチャしやがって。
「チッ」
おっとつい舌打ちが
隆二のことはどうでもいい。大事なのはお弁当だ。妹様は否定するだろうが俺は知ってる。鼻が良すぎる俺のために匂いのきついものは入れておらず、出汁も控えめ、しかし俺だけがわかる程度の弱めの風味が付いてる。鼻がいいのはうちでは俺だけなのでこれは俺のためと言っても過言ではないのだ。ツンデレさんめ。
「んまーい♡」
「ほんとに美味そうに食うな。でも♡はやめろ気持ち悪い」
「りゅーはもっと美味しそうに食べていいよ?」
これが俺の日常である。友人のイチャイチャを見せつけられる日々。俺のヒロインはいつになったら現れるんだ…?
武内悠真: 主人公。東大は無理だがそこそこ勉強はできる。そこそこの進学校で隆二の助けを借りつつも勉強面では余裕を見せている。やたらと鼻がいいが、それを活かす機会はあるのだろうか。もっと自信ある顔をして、オシャレに目覚めればイケメンに進化可能。
佐々木隆二: 悠真の親友。一年生のころ隣の席だった悠真に真っ先に声をかけた。陽キャかと思いきやリア充オタク。学年一位も時々取る優等生。
衣笠深雪: 隆二の彼女。隆二と同じ中学校出身で高校が始まる直前から付き合ってる。基本面倒くさがりだが隆二関連はやる気出す。悠真、隆二と一年生のころから連続で同じクラス。
茨木さん: 数学教師。授業の質は良くもなく悪くもなく。授業中は茨木先生と呼ばれるが、授業外に生徒は大概、さん付けで呼ぶ。なぜだろう。
安楽?: 2年2組の委員長。委員長って実は専門性の低い簡単な仕事しかないため委員長になった。モブモブしてる。本名は安藤




