魔法使いは、だいたい気だるい
「次は誰を探すんだ?」
神殿を出た直後、フィンが伸びをした。
「魔法使い、だそうです」
セラが書類を見ながら言う。
「定番だな」
「定番ですね」
「即答だね」
「即答です」
フィンが笑う。
「もう息合ってるじゃん」
「気のせいです」
「そういうことにしとく」
王都の裏通り。
古い塔の前で、三人は足を止めた。
「……ここ?」
「ここです」
「ボロくない?」
「静かに」
セラがぴしっと言った。
「魔法使いは、だいたい気難しいですから」
「偏見?」
「経験談です」
扉を叩く。
「はーい……」
中から、気だるそうな声。
「誰……?」
現れたのは、眠そうな目をした女性だった。
「勇者候補です」
セラが説明する。
「レベル1です」
「言わなくていい!」
女性は少し考えてから言った。
「……面白そう」
「そこ?」
「マレーネ。魔法使い」
「よろしく」
「よろしく……?」
また疑問形になった。
塔の中。
「で、勇者くん」
マレーネが言う。
「なんでレベル1なの?」
「俺が聞きたい」
「正直」
「隠しても意味なさそう」
「うん」
セラが頷く。
「変なの、好きです」
「褒められてる?」
「半分くらい」
突然、空気が変わった。
「……来ます」
彼が言った。
「また“感覚”?」
セラが聞く。
「はい」
「……もう慣れました」
外から魔物の気配。
「数、三」
「即答?」
「即答」
フィンが剣を抜く。
「じゃ、行くか」
「無茶しないでください」
セラが言う。
「誰に言ってる?」
「全員です」
マレーネが笑った。
「いいパーティだね」
戦闘は短かった。
彼は前に出なかった。
代わりに、声を出した。
「……そこだ」
「了解!」
「もう一体、左!」
「はいはい」
指示は正確だった。
「……あれ?」
フィンが戦い終えて首を傾げる。
「指揮、上手くない?」
「……昔の癖」
「昔?」
「……わからない」
セラは、何も言わなかった。
ただ、彼を見る目が少し変わっていた。
夜。
「ねえ」
焚き火のそばで、セラが言った。
「あなた」
「うん?」
「……本当に、何者なんですか?」
「それ、俺が一番知りたい」
「ですよね」
少し間があってから、
「でも」
セラは続けた。
「今は、仲間です」
「……軽く言うね」
「事実ですから」
でも、その言葉には温度があった。
軽口は、もう始まっていた。




