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レベル1の勇者は、かつて魔王だった  作者: 臥亜


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10/12

選ばれる理由は、だいたい後付けだ


 王都からの使者は、翌朝に現れた。


「……早くない?」


 フィンが言う。


「早いですね」


 セラも頷く。


「噂の回り方が、異常です」


「盛られてる?」


「盛られてます」


 即答だった。




 使者は丁寧だった。


 丁寧すぎるくらいに。


「勇者殿」


 その呼び方に、彼は小さく眉を動かす。


「王都より、正式な要請です」


「……要請?」


「魔王軍の動きが、明確になりました」



 その言葉で、空気が締まった。




「前線指揮を、お願いしたい」


「前線?」


 フィンが口を挟む。


「レベル1に?」


 使者は一瞬だけ言葉に詰まり、

 それから――こう言った。


「“指揮能力”を、評価しております」


 全員が、彼を見る。


「……見られてたか」



 思わず呟いた。




 神殿。


 久しぶりに戻ったその場所は、以前より騒がしかった。


「歓迎されてますね」


 セラが言う。


「胃が痛い」


「顔に出てます」


「助けて」


「無理です」



 軽口。でも、いつもより硬い。




「勇者とは」


 高位司祭が言う。


「人を導く者です」


 その言葉が、胸に引っかかる。


「力は、後からついてくる」


「……それ、誰に向けて言ってます?」


 思わず口に出た。


 場が静まる。


 司祭は、ゆっくり微笑んだ。


「あなたに、です」



 その笑顔が――

 どこか、懐かしかった。




 会議のあと。


「……ねえ」


 セラが、低い声で言った。


「今の話」


「うん」


「逃げ道、用意されてませんでした」


「……気づいた?」


「はい」



 真っ直ぐな目。




「あなた、使われます」


 はっきり言った。


「それでも、行きます?」


 彼は、少し考えた。


「行く」


「理由は?」


「放っといたら、もっと壊れる」


「……世界?」


「多分」


 セラは、小さく息を吐いた。


「本当に、勇者向きじゃないですね」


「褒めてる?」


「半分くらい」


 いつもの言い方。



 でも、そこに迷いはなかった。




その夜。


 彼は、神殿の書庫にいた。


 無意識だった。


 気づいたら、そこにいた。


「……読める」


 古文書が、読めてしまう。


 内容は――

 “初代勇者”の記録。


 英雄。

 救世主。

 王となった者。



 そして。




 その後の記述が、消されている。


「……不自然だな」


 ページの端に、小さな走り書き。


 誰かが、あとから残したもの。


『勇者は、魔王を討たなかった』

『魔王は――』



 その先は、破れていた。




「やっぱり、ここでしたか」


 背後から、声。


 セラだった。


「……起こした?」


「いえ」


 静かに歩み寄る。


「それ、読めますよね」


「……ああ」



 否定しなかった。

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