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大切な人はすぐそばに

私は朱莉。今日こそ祐隆君に振り向いてもらうのだから!


昨日は心音ちゃんに冷たくされたけどなんで急に怒ったのかしら?


あっ!もしかして…心音ちゃんも祐隆君が好きだったとか…?


確かにそれならとっても分かる。嫌われてしまっているかもしれない⁉


せっかく女子が来てくれたのにこれではヤバい。しかし…私の勘違いかも


しれない。ただ長湯が苦手でクラクラしていたのかもしれないじゃん!


だからとりあえず恵人と優衣に協力してもらおう。


そして恵人の部屋に行く。優衣は同じ部屋なのだ。だから一緒に行く。


恵人と祐隆君って同じ部屋なのだけど今日ももう出て行ったみたい。


恵人が「まぁ話しかければいいだろ」と言う。私は「何回も話しかけているわよ!


なのに祐隆君、いまだに無視してくるのよ⁉私、嫌われているのよ」と言う。


すると恵人は「それはないだろ。俺も無視されているし」と言う。


とにかく祐隆君はそういう人なのだ。じゃあなんで好きになったかって?


それはね。私が廊下で凄く苦しくなった時に彼が助けてくれたから。


あの時の事を思い出すと、どうしても好きが溢れてしまうのよね。


だけど祐隆君は心音ちゃんとは楽しそうに話している。


どうして?私は無視されるのに心音ちゃんは無視されないの?


恵人だって無視されている。考え着くのは祐隆君は心音ちゃんが好き。


という単純なものだ。次に出てくる疑問はどうして心音ちゃんが好きなのかだ。


可愛いからだろうか?でも彼女は地味だ。髪だって下ろしているだけだ。


色は…栗色っぽい気がするけど。私は黒色だよ。よく黒髪美少女っているじゃん⁉


髪型だって色々やってみているのに…ポニーテールとかハーフアップとか。


保湿だってしているし容姿には結構、自信があったのにな。


祐隆君は心音ちゃんを選んだ。それは私にとってショックな出来事だった。


それで心音ちゃんを恨むつもりは別にない。どうにかして勝つつもりよ。


優衣が「朱莉ちゃん。いっそ諦めてみたらどうです?」と聞かれる。


私は「嫌よ」と即答する。そして「祐隆君を今日一日尾行しましょう!」と言う。


恵人が溜息を吐き優衣が「自分はパスします」と言った。


だが私は問答無用で二人を参加させる。そして、尾行を始める。


彼は朝起きて歯を磨き部屋を出て行ったらしい。そして、心音ちゃんを見つける。


心音ちゃんは朝から行ったり来たりを繰り返している様だ。そんな彼女を見て


彼は微笑み近づく。「まーた迷っている」と言って彼女は「あっ!祐隆君おはよ。


朝から迷ちゃって大変なんだよ」と言う。祐隆君はもう着替えている。


だけど心音ちゃんはまだ浴衣姿のままだった。私は思わず笑ってしまう。


髪はブラシやくしで梳かしたようだが相変わらず結んでいない。


祐隆君が「なぁ心音さん。服って着替えないのか?」と聞く。


すると彼女は慌てふためき「ほ、ほんとだ。私ってば忘れていたよー」と言う。


彼は笑い出す。私の前では一度も笑った事ないのに…どうしてなのよ。


そこに優夜さんがやって来て「心音ちゃんは本当に可愛いな」と言う。


か、可愛い?優夜さんもそう思っていたの?私なんて言われた事、無いのに。


もしかして…私って自分で思っているよりも可愛くないのかな。


ただの自意識過剰だったのかな。そう思うと一気に悲しみに飲み込まれる。


だからもうこんな事やめてしまおう。自分の無力さを思い知るだけだ。


祐隆君は心音ちゃんみたいな天然で可愛い子がいいのよね。


私がもうやめようと言って部屋に帰ると恵人が「お前だって可愛いよ」と言って


くれる。さすが幼馴染だ。分かるのだね。私が自信を無くしているって。


だけど嬉しくない。そんな慰めの言葉なんてと思っていると恵人は


「お前が毎日努力している事なら知っているから。もっと自信もてよ。


髪だって綺麗なんだからさ」と言って優しくなでてくれる。


その瞬間、涙が溢れてくる。今までの努力を思い出して。


私は、自分自身で自分を傷つける所だったのだ。それを恵人が気付かせてくれた。


そうだ、私にはこんなにもすぐ近くに優しくて強い幼馴染がいるではないか。


それで十分ではないか。それ以上何を求めるというのだろう。


優衣だってなんだかんだずっと傍に居てくれているではないか。


それがどれだけ幸せな事なのかいい加減気づくべきだったのだ。


もう忘れないよ。恵人と優衣の大切さ。大事な友達の事。


優しさで溢れている恵人に飛びつくと彼は「相変わらずだな」と呟く。


あの日の事を思い出す。親を失い友を失いもう一人なのだと嘆いた日。


幼馴染の恵人が泣いていた私を見つけ出してくれた事もあの日の事も、


「大丈夫ですか?よかったら僕の家に来てください」と颯斗が言ってくれた。


素敵な和風な屋敷に連れて行ってもらった。そこで優夜さんに出会った。


彼の優しさはとても凄くて本当にお人好しだった。


恵人と一年間過ごすうちに明るさも取り戻していった。


それからの日々は段々と暗い心が浄化されるように幸せになっていた。


だからさ、お母さん、お父さん。私、もう大丈夫だよ。そしてありがとう。


最後の最後まで愛してくれて、守ってくれて。あなた達の子供で幸せだったよ。


それからね。見つけたよ。大切な人。とってもすぐそばにいたよ。


だからこんな日がずっと続くのならばとても幸せな事なのだ。だって私は――

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