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王様の感情で動く星  作者: 佐和多 奏
9/10

第九話・投票

次で最終回です。

 沈黙が続いた。

 まずはじめに立ったのは、級長だった。

 サッと文字を書き、それを、投票箱に入れた。

 みんな、続々と文字を書いていく。

 誰を。

 誰を書けばいいの。

 わからない。

 でも。


 なぜか。

 なぜか、みんなの筆が進んでいく。

 なんで・・・。

 ・・・。

 

『おれ、合唱コン終わってからカナさんがルフと一緒にいたの、見たぞ。』


『おれは、付き合ってはいないが、カナと同棲している。』


『なあ、カナ。おれは、お前のことが、好きだ。』


 そっか。


 これなら。

 私は気づかなかったけど。

 エクルが。

 私とルフくんと一緒にいたのが嫌で、それで。

 エクルが、ルフくんが殺したって。

『おれ、合唱コン終わってからカナさんがルフと一緒にいたの、見たぞ。』

 この発言がでてから。

『なあ、カナ。おれは、お前のことが、好きだ。』

 この言い方をすれば。

 クラスの全員。

 エクルが、ルフくんを妬み、殺した。

 そう、思い込む。

『エクル、私を、必ず護るって、言ったよね。』

『ああ。必ず、護る。』

 それって・・・。


第九話・真相

 エクルとクリスマスの話をしたあの日。

「ねえ、カナ。もうすぐ、クリスマスだね。」


 二つ目。

・12月24日、クリスマスイブ、午後6時。その日に王様だった人は、特別に、何でも願いを叶えられる。



 

「ねえ、カナ。王様の君は、12月24日、何を願うの。」




「それは・・・。」

「元の星に帰るの?それとも・・・」

「ねえ。エクル。」

「どうしたの?」

「エクル、私を、必ず護るって、言ったよね。」

 エクルは、私の目をじっと見て、言った。


「ああ。必ず、護る。」

 

 

 

 あの日。

 ルフくんと、帰っていた日。

 合唱コンの、帰り道。


「なあ、カナさん。」

「なに、ルフくん。」

 ルフくんに、見つめられている。


「おれさ、みんなに裏切られたりとか、ピアノ、弾けなくなったりとか、辛かったけど。でも、楽しかった。この合唱コンの練習とか本番とかね、すごい楽しかった!あの日。」

『私、元吹奏楽部で、指揮者やってたの!だから、わたしなら、できるよ。』

「おれのことを、助けてくれて。本当にありがとう。」

「そっか。」

 私は、恥ずかしくて、少し、目を逸らした。

 でも。

 こういうのは、目を見て言わなきゃ。

「私も、ルフくんのおかげで、合唱コン、すっっっごく、楽しかったよ!」

 私たちの周りには、誰もいない。

 隣には線路がある。

 木々に、花が咲いた。

 鳥たちが飛んでいる。

 馬車や、魔法の絨毯、箒に乗った魔法使いや、光る玉を持った鳥がバサバサと飛ぶ。

 周りにある木々が、イルミネーションのように、光る。

 まるで、私たちに。

 私たちのために。

 この世界が。

 できているかのように。

 まるで。

 私が。

 本当の、自由を。

 私の、思い通りになる。

 退屈じゃない。

 本当の自由を。

 最高の、幸せを。

 その時。

 手に入れた、気がした。


「それで、すごく、カナさんといる時間が、楽しくて。」

 踏み切りに差し掛かった。

 ルフくんは、踏み切りに背を向け、私の方を向いた。

 そして、私とルフくんは、歩くのを、やめた。

 ルフくんは、少し、震えた声で。

 かっこいい、声で。

 眼差しで。

 私に。

 こう、伝えた。

「おれ、カナさんのことが・・・。」


 カンカンカンカン・・・

 踏み切りが下がる。


「好きです。」


 私は、これまでにない、幸福を感じた。

 世界が、私を味方しているような。

 そんな。

 今までに感じたことのない。

 幸せを。

 あ。

 なんか。

 幸せで。

 ゆらゆらする。

 線路が。

 ゆらゆら。

 揺れてる。


 ガタンゴトンガタンゴトン・・・


「僕と、付き合ってください。」


 瞬間。

 電車が。

 ルフくんに、突っ込んだ。


 私は。

 これまでにない、悲しみに襲われた。

 急に、雨が降ってきた。

 やばい。

 こんなところ、誰かに見られたら。

 どうしよう。

 私は、一目散に走って、その現場から逃げた。


 その日の夜。

 外は、変わらず雨が強く降っていた。

 合唱コンが終わった後。

 私は、家で。

 久しぶりに、エクルが作ってくれた、オムライスを食べながら。

 泣き崩れた。

 エクルは、私の目を見て、尋ねた。

「ねえ。何が、あったの。」

「私ね・・・。ルフくんを、殺しちゃった。」

「え・・・。どういうこと?」

 私の話を一部始終話すと。

 エクルは、私よりも、たくさん、涙を流した。

 2人で泣いた後、5分ほど、経った。

 エクルは、涙をハンカチで拭いて。

 私の後ろに来て、抱きしめた。

「カナ。」

「・・・なに?」

「それでもおれは、お前を、護るから。」

 私は、エクルの手を握った。

「・・・ありがとう。」

 


『エクル、私を、必ず護るって、言ったよね。』

『ああ。必ず、護る。』




 教室は、氷のような雰囲気で包まれていた。

 みんな、投票を済ませた。

 あとは、私だけ。


 あれ。

 そっか。

 12月の王様の願いは。

 誰かを、殺すことだってできるんだ。

 だから。

 みんなは。

 毎年、この時期。

 王様のことが、怖い。

 そして。

 同じクラスで。

 その現実を目の当たりにしたら。

 当然、とても怖い。

 そっか。

 だから。


『王様を殺さなければ、他の誰かも、殺されるかもしれない。』


 みんな、王様を、殺したい。

 そういうことか。

 それで。

 もし。

 ここで。

 王様が殺されれば。

 王様はいなくなったってことに、なる。

 そして。

 エクルは。

 自分が王様だっていう演技をして。

 投票で、みんなに自分を選ばせて。

 そして。

 ここから、飛び降りる。

 そうすれば、クラスで殺し合いが起こることはなくて。

 私が、24日に、エクルと、ルフくんを、生き返らせれば、全てが・・・。

 ・・・あれ?


 四つ目。

・「人を生き返らせる」願いは、『1人にしか』使えない。


 1人にしか、使えない。

 まさか!!


 多数決の結果。

 王様として、殺されるのは。


 エクルだった。

 圧倒的多数の票が、エクルに集まった。


『一緒に帰ってきたの!?あいつ良い人だからね、すごい女子からも人気でね、よく告白されてたんだけど、なんでか、全部断ったんだよ!』


『それでもおれは、お前を、護るから。』


 エクル、私が、ルフくんのこと、好きなこと、知ってて。


『おれ、合唱コン終わってからカナさんがルフと一緒にいたの、見たぞ。』


 そのままだったら、私が王様として疑いをかけられて殺されることを知ってて。


『なあ、カナ。おれは、お前のことが、好きだ。』

 自分が王様だと遠回しに伝え。得票数を獲得し。私の身代わりになって。


 自分が、死ぬ。


 12月24日。王様である私の願いは、ルフくんを復活させること。

 ずっと、そうだった。


 

 私は、ルフくんが好きだから。

 それを、エクルは知ってて。

 クラスのみんなに、自分に投票させて。

 私を護るために。

 死のうとした。


 溺愛。


 私は。

 エクルに。


 溺愛、されている。

 私のことを、ここまで。

 ここまで、愛してくれた人が、今まで、いただろうか。


「じゃあ、おれは、ここから飛び降り・・・」


「待って。」


 私は、立ち上がった。


 こんなに、愛してくれるし。

 あと。

 めっちゃ、かわいいし。


 でも、ルフくんもかっこいいし、好きだし。


 かっこいいし、好きだし・・・。


 選べないよ。

 どっちか、なんて。

 選べないよ・・・。

 

「本当は、私が・・・」


「それを言わないで!!!」

 エクルは叫んだ。


「いいの!!!」

 私は、エクルくんから目を逸らした。

 エクルくんは、駆け寄ってくる。

 私は、エクルくんの方を向いた。

 

「私が、王様なの。」


 クラスは、ざわつく。


「カナ!それを言ったら・・・。」


「私、合唱コンの後、ルフくんに、告白されたの。」


 クラスがどよめく。

「それで、幸せで。私も、ルフくんのこと大好きだったから。線路が、揺れて。電車が、ルフくんに突っ込んで。」

「カナ・・・。カナ・・・。」

「でも。そんなに、私のこと、護ってくれたら。愛してくれたら。」

 私は、泣いた。

 エクルも、泣いている。


 四つ目。

・「人を生き返らせる」願いは、『1人にしか』使えない。

 

「選べないよ。エクルか、ルフくんか、どちらを、生き返らせるかなんて・・・。」


 エクルは、私を強く抱きしめた。

 私も、エクルを強く抱きしめた。


「エクル。大好きだよ。」


二つ目。

・王様の影響で人が「死ぬ」、そのうえで、自分が王様だと「他人にばれる」。その1分後に、王様は、「消滅する」。

 

 体が、どんどん、キラキラとした光と共に、消えていくのがわかる。

 そして、意識が遠のいていく。



 カナは、消滅した。

 消えて、なくなった。


 

 そして、エクルは、そのまま前に倒れた。


「うっ・・・」

 そして。

 立ち上がった。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 エクルは、そのまま、4階から飛び降りた。

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