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王様の感情で動く星  作者: 佐和多 奏
8/10

第八話・秘密

 12月15日、夜。

 外は、雨が強く振っている。

 合唱コンが終わった後。

 私は、家で。

 久しぶりに、エクルが作ってくれた、オムライスを食べながら。

 泣き崩れた。

 エクルは、私の目を見て、尋ねた。

「ねえ。何が、あったの。」

 

 エクルは、表情を変えた。

「え・・・。どういうこと?」

 ルフくんが。



 電車に轢かれて、死んだ。



 それを、伝えた。

 

 エクルは、私よりも、たくさん、涙を流した。

 2人で泣いた後、5分ほど、経った。

 エクルは、涙をハンカチで拭いて。

 私の後ろに来て、抱きしめた。

「カナ。」

「・・・なに?」

「それでもおれは、お前を、護るから。」

 私は、エクルの手を握った。

「・・・ありがとう。」


 

 次の日の朝。教室に着いた。

 その事件は、ニュースで、クラスラインで、広まった。

 もう、みんな知っていた。

 ルフくんが、死んだこと。

 雰囲気は、静まり返っていた。

 そしてもう1つ、みんな知っている。

 この中に。

 王様が、いる。

 そして。

 ルフくんを殺した犯人は。

 王様だって。

 みんな思ってる。

 でも。

 誰も。

 口に出せない。

 怖くて。

 口に出せない。


 三つ目。

・王様の影響で人が「死ぬ」、そのうえで、自分が王様だと「他人にばれる」。その瞬間、王様は、「消滅する。」ただし、「今までに王様になったことがある人にばれる」なら、何も起こらない。


 バレた瞬間、王様は、消滅する。


 今日も、土砂降り。

  

「もし、王様が殺したとしたら。」

 級長が話し出す。

「そして、このクラスに王様が、いるんだとしたら。」

 真っ直ぐに下ろされたボブのヘアスタイルの副級長が、メガネをクイっとして、口を開く。

「他にも、犠牲者が出るかもしれない。ルフくんは、王様に殺された。誰も、その現場は見ていない。だから、どうやって殺したか、真相はわからない。でも。ルフくんは確かに、電車に轢かれて死んだ。そんな都合のいいこと、あるわけがない。この中の、誰かが殺した。もし、そうだとしたら。」

 もう一度、副級長はメガネをクイっとした。

「王様を殺さなければ、他の誰かも、殺されるかもしれない。」

 クラスがざわっとした。

 アメリアが足を組む。

「お前!私たちを疑ってるのかよ!!私たち、合唱コンでみんなで頑張った仲間じゃねーかよ・・・」

「もうやめよ!」

 ミアが叫んだ。

「こんなこと話していても、仕方がないよ・・・。」

 級長が、ハッとした顔で、私を見た。

「おれ、合唱コン終わってからカナさんがルフと一緒にいたの、見たぞ。」

「は!?」

「どういうこと!?」

「カナが一緒にいたって・・・。」

 教室がざわつく。

「もうやめろよ!」

 エクルが、立ち上がって叫んだ。

「ミアの言うとおり、こんなこと言ってても、仕方ねえだろ。」

 クラスが、静まり返る。

 先生が、入ってくる。

「はい、授業始めるぞー。」


 その日の夜。

 食卓で、エクルは口を開いた。

 

「ねえ、カナ。もうすぐ、クリスマスだね。」


 二つ目。

・12月24日、クリスマスイブ、午後6時。その日に王様だった人は、特別に、何でも願いを叶えられる。


 翌朝。

 私が登校すると、みんな、私を白い目で見てきた。

 1番最後に登校してきたのは、エクルだった。

「はーい、朝の会はじめ・・・」

「先生。」

 エクルは、先生に告げた。

「僕たちの友達が死んでいるんです。今から1時間、その話に、使わせてくれませんか。」

「あ・・・ああ。1時間目はおれの授業だったな。そしたらおれも休めるし、好きに使ってくれー。はー、カフェでも行こ。」

 先生は外に出て行った。

 エクルは、机に鞄を置き、前に出て行った。

 チャイムが鳴った。

「いいか、おれの話をよく聞け。」

 みんな、席に座り、エクルの話に耳を傾けた。

 外は、相変わらず土砂降りだ。

「おれは、付き合ってはいないが、カナと同棲している。」

 え?

 それ、言っちゃうの・・・?

 

 クラスが、ざわつく。

 エクルは、空のティッシュペーパーの箱を教壇に置いた。

 そして、私たち全員に、紙を配った。

「ここに、誰か1人の名前。自分が、ルフを殺した犯人だと思う者、つまり。」

 エクルは、前を向いた。

「王様と思う者の、名前を書く。そして。」

 エクルは、窓の外を指差す。

 ここは、4階。

 まさか・・・!

「得票数が1番多かった物を、王とみなし、ここから落とし、殺す。そうすれば、みんなのモヤモヤも晴れるはずだ。」

「待って!」

 副級長が、話を止める。

「そんな残酷なこと。」

 

『王様を殺さなければ、他の誰かも、殺されるかもしれない。』

「お前が言い出したんだろ。」

 副級長は、下を向いた。

 

 みんなで、王様が誰かを投票して、多数決で1番票が多かった人を殺す。

 そうすれば。

 もう。

 ルフくんと同じ目に合う人は、いなくなる。

 もしその人が本当に王様だったら、の話だけど。

 人狼ゲームと同じ論理。

 エクル、可愛いのに、すごく、頭いい。

 

「いいか。これは、カナと相談して決めたことだ。」

 みんなの目線が、私に行く。

「いや、でもそれいい案かもしれないーーー!!!!だってさー、誰も殺した現場見てないんだし、1番、公平な手段じゃーん!!」

 級長がそう言うと、フッ、と、エクルが笑った。

 私は、そんなこと、相談してない。

 エクル。

 普段、あんなに可愛いのに。

 こう言う時。

 なんか、少し。

 かっこいいかもしれない。

「賛成」

 アメリアは、手を挙げた。

「おれも。」

「私も。」

「僕も。」

 みんなが、どんどんと手を上げていく。

 エクルが、声を張り上げる。

「なあ、カナ。おれは、お前のことが、好きだ。」

「・・・へ?」

 エクルが、少し、下を向いた。

 そして、前を向いた。

「じゃあ、投票を始めよう。」

 エクル、私のこと、好きって・・・。

 エクルは、私の方を見て、そして。


 笑顔で、涙を流した。

 

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