田嶋
俺が狙っていたのはそう、この田嶋の介入だ。予想より少し遅かったが、どうやら間に合ってくれた。
「んだよ〜。どうして戻ってきたんすか?」
「おまえと黒沼が戻ってきてないと聞いて、もしやとな」
「ここからが楽しいとこなのによ〜。ちっ。興醒めだなぁ」
さも、今までの状況を楽しんでいた、と言わんばかりの発言とともに、部屋に戻ろうとする。
「おまえ、黒沼に蹴りを入れようとしていただろ?」
「だったら何なんすか? それに先に仕掛けてきたのはあいつっすよ。それを返り討ちにって」
そうだよな?と言わんばかりの視線を向け、俺を脅そうとする。
「何? 黒沼、本当か?」
もちろん、真っ赤な嘘であるが、後々楽をするために高宮に乗らせてもらおう。
「はい。今回は俺から手を出しました。以前のことや、今回のステータスの件で少しストレスを溜めてしまったようです」
「そ、そうなのか。しかし、この事は教師として看過できん。高宮は黒沼の後に話を聞く、今は先に戻れ。そして黒沼はここに残り少し話を聞かせてもらう」
「分かりました」
「うい〜っす」
三村や松田、赤田も高宮と共に部屋から出ていく。
……………
田嶋との会話を終えた俺は現在部屋に戻っている。
話は10分程度で終わり説教は一度もなく、本当に俺から手を出したのか、心はもう落ち着いたのか、など俺の心配ばかりで俺から行ったという事を信じていなかった。
田嶋がなぜ、ここまで俺にこだわるのかは分からないが、信頼してくれるのなら色々と行動の範囲が広がるため助かる。そして今は、高宮と話をしているだろう。
俺が今回、高宮たちに絡ませたのには理由がある。
まず1つはステータスに関してだ。俺の防御力は50で松田の攻撃力は60となっており差は10。何度か拳を受けたが全て、流せるほどの強さだった。これに関しては差が小さいため納得だ。
次は高宮とのステータスの差だが、これは25。そう、これは松田よりも倍以上高い。しかし、これもまた対処できるほどの力だった。もちろん松田よりも多少強くはあったが、それは誤差程度のものだった。
これがどういうことなのかというと、地球にいたときの能力がステータスの値に不可視で増加されているということだ。
恐らく、地球にいたときの能力が反映されていなかったとしたら高宮の腹の一撃で俺は本当に倒れていただろう。しかし、実際はそうではなく受け止めることができた。
高宮は地球にいた頃から度々、裏で内気な生徒を殴ることでストレスを解消し、優越感に浸るほどのクズだったので、俺が怯える素振りさえ見せれば興味を掻き立て手を出すと読んでいた。
結果は俺の読み通りだったが、改めて思うとあいつは異常だ。言葉による暴力はちょっとした負の感情で誰にでも行えてしまうが、直接的な暴力は常人には中々出来ない。それも一度だけでは収まらず定期的に行っているところが特にだ。
話を戻そう、俺が地球にいたときの能力は分からないが、今のステータスよりは高いことは確かだ。それに伴い、高宮の地球での能力もここでの合計のステータスも俺より低いことが分かる。さすがに才原や前国などには及ばないかもしれないが最低でも平均以上あることは確かだ。詳しいことは追々探っていこう。
いかがでしたでしょうか。
ただ黒沼はやられっぱなしではありません。
今後に期待してくれる方は感想、評価を是非是非お願いいたします。
それでは