ステータス
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黒沼燈夜 16歳 男
Lv.1
職業:吸収士
HP︎︎:150/150
MP:75/75
攻撃力 30
防御力 50
敏捷 50
魔攻 40
魔防 40
スキル
[吸収][鑑定][翻訳]
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これが俺のステータスか。この世界の人達と会話が成立するのは[翻訳]のおかげというわけか。それにしても吸収士とは何だろうか。
「……吸収士? 初めて聞く職業ですね。期待してますよ」
マイナは顔に笑みを浮かべて言う。だが一瞬マイナの顔が固まったのを俺は見逃さなかった。しかし、今はこちらよりももっと他に知りたいことがある。この事については追々探っていこう。
「これで皆さん終わりましたね。それでは今からそのステータスの詳細について説明します」
ちょうどいい。ここで細かな話が聞けるだろう。散乱としていたクラスメイトの視線が一斉にマイナに集まる。
「まず職業について。これはその人の最も適している“才能”になります。剣士なら剣の扱いが、魔法士なら魔法の扱いが他人よりも秀でるようになります。続いてはレベルについてです。レベルは1から100まで存在し、魔物を倒すことで経験値を得て、レベルを上げることが可能です。神託では英雄が百を超えると記載されていました。続いてはステータスとスキルについてです。ステータスは基本的には見たままですが、魔攻と魔防について。魔攻は魔法の攻撃力になっています。魔防は魔攻の逆、いわゆる魔法の防御力です。そしてスキルですが、それは各々が持っている鑑定スキルで調べてもらえれば大まかですが知ることができます。中にはユニークスキルといい、世界に1つだけのスキルも存在しています」
今回はしっかり理解することができたため三村に聞く必要は無いだろう。スキルは後で調べるとして……
「そして最後にステータスの一番下にある称号についてです」
俺は体中を駆け回る嫌な予感が当たらないことを願った。
「皆様には勇者という称号が記載されていると思います。その称号は鑑定して頂ければ分かるように魔物討伐時の経験値が増加します。上昇値はレベルが上がるごとに初期ステータスのHP,MPを除く一番高いステータスの80%がステータスに増加されます。ちなみに称号“勇者”を持っていない人の増加率は10%となっています」
どうやら嫌な予感を当ててしまったらしい。俺のステータスに称号などという欄は無い。何かの手違いという線も考えられるがほぼ無いに等しいだろう。マイナの言う通りなら俺とクラスメイトでは成長率にとてつもない差が生まれてしまう。
「説明はこれで以上です。皆様にはこれから部屋の紹介の後、城の中で自由行動とし、明日からは早速訓練に取り組んでもらいます」
早速訓練を行うのか。こちらの心情も考えて欲しいものだ。
「燈夜殿〜。ステータスはどうでござったか? 良ければ拙者と比較して欲しいでござる」
「ああ。いいぞ。ちょうど俺も見比べてみたかったからな」
これは願ってもない相談。ナイスだ三村。そしてその優秀な三村のステータスを確認する。
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三村博士 17歳 男
Lv.1
職業:鍛治師
HP:240
MP:120
攻撃力 40
防御力 45
敏捷 50
魔攻 60
魔防 55
スキル
[水魔法][鍛治][鑑定][翻訳]
称号
/勇者/
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防御力以外のステータスが全て負けている。もしかしてこれも“勇者”の影響なのだろうか。しかしそのような話はマイナからされていない。気にしすぎだろうか。
「あれ?拙者のステータス悪くないでござるか?」
いつからこいつに煽り性能がついたんだ。
「少なくとも俺より強いことは確かだ」
「良かったでござる〜! 拙者てっきり弱いかと思ってソワソワしてたでござる〜」
三村は心底安心したような表情を向ける。
「俺が一番弱かったらどうするんだ」
「ギクッ。その時はその時でござるよ〜。それに燈夜殿に限ってそんなことはないでござる〜」
安堵の顔から一変し一瞬で顔が引き攣る。
「本当にそうならいいんだけどな」
「それにしてもみんな考えることは同じでござるな」
三村の言う通り、今各々が少数で集まりステータスの確認を行っていた。
「だな。やはり誰でも自分の強さは知っておきたいものだ」
そんな会話をしていると才原が散っているクラスメイトの中心にやって来る。
「みんな。それぞれが自分のステータスについて気になっているはずだ。だから今から全員でステータスを共有し合わないか?」
才原の問いかけに俺たちを除く全員が賛同し中心に集まって来る。
「三村。行くか?」
「これは流石に行くしかないでござる」
「だな」
俺たちも才原の元へ向かう。
……………
ステータスお披露目会が終わり、結果を言うと俺が最弱だった。クラスメイトのステータスは殆どが50を超えており、やはり全員が“勇者”を保有していた。
対する俺は50未満が3つもあり“勇者”無し。
やはり俺の推測は正しかった。“勇者”はステータスに影響する。そして、その事に対し高宮を筆頭とする数人の生徒には嘲笑や軽蔑の眼差しを向けられ、高宮に至っては毎度の煽りを見せてきたが田嶋先生が一喝し何とか場は持ち堪えた。才原には感謝しておこう。
ちなみに才原のステータスは全て百を越え次元が違った。才原を除くクラスメイトで飛び抜けている者は柊、前国を含め4人いた。
……………
「にぃー。本当に行くの?」
「ああ。放っては置けないからね」
背後から聞こえる男女の声がだんだんと俺の元に迫ってくる。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
「ん?」
こいつらは……確か南兄妹か。兄が南彗で妹の方が南栞だったか。しかしなぜこいつらが俺の元に。
「その……ステータスの事なんだけど、あまり気にしないで。黒沼くんにもできることはあると思うし、何より、僕たちはチームだ。お互いに協力し合っていこう。それと、高宮たちについても明人や先生がキツく言ってくれてると思うから安心していいよ」
「あ、ああ。そう言ってもらえると助かる。しかし、俺に話しかけてくるなんて珍しいな」
「そういえば今まで話したこと無かったっけ。あはは。余計なお世話だったかな」
彗が苦笑しながら言うとなんとも言えない居心地の悪い空気が流れる。
「にぃ……兄が心配してるんですから感謝くらいして欲しいです!」
栞が顔をムッとさせながら俺に訴えかけてくる。
「いや、そう言うつもりはない、ただ本当に珍しいと思っただけで感謝もしている。ありがとう」
「いいんだよ。栞。さっきも言ったけど僕たちはチームだ。それと黒沼くん、君のこと名前で呼んでもいいかい?」
おいおい。距離の詰め方が尋常じゃないな。これが普通なのか? と問いかけたくなるが、困る事でもなく、俺としても助かるため流しておこう。
「そうだな。苗字でも名前でも好きな方で呼んでくれ」
「ありがとう。これからよろしくね、燈夜くん。それと僕にも出来れば名前で呼んで欲しいね。ほら、僕たち兄妹だからどっちの事か分からないし」
なるほど、確かに一理あるな。
「それもそうだな。分かった、よろしく頼む。彗」
「よろしく!燈夜!それじゃあ僕たちはここら辺で先に行かせてもらうね。じゃあね。行くよ、栞」
「分かりました。失礼します」
「じゃあな」
この南兄妹は俺が思っていたよりもずっと人が良かったな。クラスの中でも中々信頼されており、ステータスも才原に次ぐ強さで先程話した4人に含まれている。そいつらと関係を持てたのは大きい。
それにしても彗のコミュニーケーション能力の高さには驚かされた。初対面からここまで距離を縮められるとはな。
「何を考えてござるか?燈夜殿。拙者たちも部屋に向かうでござるよ」
「悪い。なんでもない。行くか」
俺たちは部屋へと案内されているクラスメイトたちに置いて行かれないよう、小走りで向かって行く。
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反応を見てまた続き載せます。
それでは