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プロローグ

―とある王城にて—


「今回もダメじゃったか。マイナよ」

「はい。お父様、すいません。次こそは必ず成功させますので」

「気にするでない。時間はまだあるのだ、そう慌てるでない」

「そうですぞ、マイナ殿下。陛下も仰るように焦りは禁物ですぞ」

「ありがとうございます。お父様。バイネス」


 このマイナが勇者召喚を成功させてから我々の物語は急速に加速する。


……………


 けたたましくなる目覚まし時計と共に意識が覚醒する。大きな欠伸(あくび)と共に布団から起き上がりキッチンへと向かう。普通の家庭なら母親が朝食を作ってくれたりするだろうが、いかんせん俺に家族はいない。いないというか失ったというべきか。


 俺――黒沼燈夜(くろぬまとうや)には元々兄弟はおらず、両親は俺が中学3年生の頃に交通事故に遭い亡くなってしまった。高校の学費は子供がいないが故、我が子のように接してくれた親戚夫妻が出してくれている。


 朝食のトーストを食べ終わった俺は洗い物を終わらせ制服に袖を通し、学校へと向かう。


 今日は生憎の大雨で雷も鳴っている。学校に近づくにつれ同じ制服を着た学生たちが増え、彼らと共に門を潜る。階段を登り手前から3番目の教室、いい加減見慣れた俺の教室だ。


 朝のチャイムと共に教室に入ると、1人の女子が駆けつけてくる。


「黒沼くんおはよう!今日も時間ピッタリだね!」


 笑みを浮かべて来た彼女の名前は柊奈々美(ひいらぎななみ)。明るい性格に整った顔立ちで学校中の男子からの注目の的だ。仮にも彼女と2人きりで話そうものなら、例外を除いて男子から目の敵にされるに違いない。


「黒沼おはよう。毎度の如くチャイムと同時か。もう少し早く来たらどうだ? 遅刻しても知らんぞ」 


 軽い警告をし、苦笑を浮かべ遅れてやってきたのは才原明人(さいはらあきと)

運動神経抜群、成績優秀、性格も気が利き交友関係も広く、先生生徒ともに信頼に厚い。


 正真正銘、彼こそが例外の男子である。彼は柊奈々美とは幼馴染で仲が良くいつも行動を共にしている。そんな2人だが、付き合ってはいないらしい。なぜ付き合っていないかは周知の謎である。


 軽い返事を返し席に着こうと振り返ると俺より少し背の高い男が立ちはだかる。


「チッ、邪魔だどけ」


 舌打ちと共に俺の肩を退け、進もうとするこいつの名前は高宮陸(こうみやりく)。素行不良でいつも取り巻きを2人抱える問題児の1人である。基本男女関係なくガンを飛ばしている彼だが、唯一柊にだけ甘々ななんとも分かりやすい一面も持ち合わせている。そして俺のことを極端に嫌っている。


 正直迷惑しているが、何か行動を起こしたところで逆効果なのは目に見えているし俺が解決できる問題だとも思っていない。


 そして何より1番の問題は友人関係である。柊や才原は訳あって俺に接してくれているだけで特別友人という存在ではない。


 実際に友人と呼べる人物はたった1人のみであり、その人物と関わったことが今のクラスカースト最下位という現実に繋がったのであろう。


「燈夜殿〜、おはようでこざるぅ〜。いつもあの高宮陸(イッヌ)に絡まれて面倒でござるなぁ。拙者に頼んでくれればいつでもあんなやつメッタメタにしてやるでござるよぉ〜」


 何とも意味のわからない発言をするこの男が俺の唯一の友人三村博士(みむらひろし)。発言からわかるようにこいつは重度の変態である。まさしく変態。正真正銘紛うことなき変態である。


 この変態と関わったことが俺の人生の分岐点であった。もちろん負の方で。しかし、俺は三村を嫌っているわけではない。むしろ好いている。知人に対しては世話を焼いたり空気を読むのが上手なため、良き相談相手となってくれる。


「おい、そこどけよデカブツ。邪魔なんだよ」

「あぁ? 弱いものいじめしかできない()()が何の用だ?」


 三村とくだらない話を交わしていると高宮と1人の男が睨み合っている。こいつは前国凱(まえくにがい)。身長が188センチもあり180センチの高宮も軽く見上げる程だ。


「テメェ今何つった? やんのか?」

「お前みたいな雑魚とはやんねぇよ」


 こいつらがもしやり合ったら恐らく前国の圧勝だろう。そう思わせる位こいつの体は仕上がっている。制服の上からでも分かるほど筋肉は引き締まっており、何より隙がない。


「おーいお前ら。チャイム鳴ってるぞ。座れ座れ」


 そうこうしているうちに担任の田嶋傑(たじますぐる)がやってきた。彼は陽気な性格と誰に対しても真摯に対応することから多くの生徒から慕われている。


 田嶋が来たことにより、前国と高宮はそれぞれ自分の席に戻っていく。その途中で高宮は前国に舌打ちをし、軽く睨みつけたが前国は全く動じなかった。


 そして遅れてやってきた田嶋についてだが、一度田嶋から俺にクラスで浮いていることに対して話を持ちかけられたことがある。

 

 俺の偏見でしかないが、こういう場合は大体教師含め全員が見て見ぬ振りと思っていたから少し驚かされた。こういう教師が増えればイジメによる自殺など減るのかもな。


 いやそれはないか。自殺まで追い込むほどのイジメには幾ら教師が介入しても効果はない。いくら未然に防ごうと返って逆効果だろう。


 全員が席に着き担任が話を切り出そうとした時、突然教室の床一帯に白色の紋章が浮かび上がる。


 何がどうなっている? これは現実なのか? 悲鳴が響き渡り、クラス中が混乱に陥る中、才原が手腕を発揮する。


「みんな落ち着いて、冷静に! みんな机の下に隠れるんだ。何があってもいいように頭だけは隠して!」


 白い紋章が突如急激に光り出し、視界がぼやけてくる。











――気がつくと俺たちは見知らぬ部屋にいた。



処女作の第一話いかがでしたでしょうか。

これは間違いなく面白いお話なのでどうぞ期待してください。

励みになるので評価、感想もお待ちしております。

それでは

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