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56 あっさり塩味肉豆腐

 ひよこ豆豆腐はとても優秀だ。見た目も味も大豆の豆腐と遜色なく、豆の味が濃くて美味しい。1パック98円の豆腐じゃなく、もっとお高い豆腐の味がする。

 出来上がったひよこ豆豆腐を試食しての、ルカの感想だ。そのまま何も付けずに食べても、このクオリティーなのだ。これは大量生産決定だ。


 ルカはその場で、手持ちのひよこ豆を全て水中に投入した。お豆腐何丁出来るかな。切実にミキサーが欲しい。魔法で何とかならないだろうか。


「ミキサーとやらが無くても、また手伝いますよ」

「あ、口に出てましたか?」

「はい」


 アランに指摘され、微笑まれて、浮かれ切っていたのが恥ずかしくなる。だけどそれ位、会心の出来なのだ。1人なら歌い踊っていただろうほど、ザ・豆腐なのだ。


「嬢ちゃんが故郷で食ってたのと同じか?」

「味はほぼ同じです!見た目も食感も!材料の豆の種類が違いますが、同じ物だと言っても過言ではありません!」


 ルカはジャックの両手を取り、ブンブン上下に振って感謝した。ありがとう、本当にありがとう!魔王国バンザイッ!


「……嬢ちゃんは変わってるな。魔王国バンザイとか言ってると、偉い人に怒られるぞ」

「今は和解してるんですよね?あれ?また口に出てました?」

「駄々漏れだ。魔王国に忌避感()ーのかよ」

「特には。ジャックさんの奥さんも魔王国出身なんですよね?仲良く無いんですか?」

「滅茶苦茶愛し合っとるわ!だけどな、たった15年前まで敵だった国だ、魔王国も魔族も良くは思われてねーんだよ、普通はな」


 15年という月日が長いのか短いのかは、ルカには分からない。魔王国との戦いでついた傷やしこりを癒すには、充分ではないのかもしれない。だがルカは転移者だ、魔王国にも魔族にも思うところは無い。むしろひよこ豆豆腐で良いイメージがついたし、味噌やみりんが発見出来れば大好きにだってなるだろう。


「それよりも、このトウフーは料理には使えないのですか?」


 アランが豆腐を手渡してきたので、ルカは握りっぱなしだったジャックの手を放し、受け取った。


「使えます!豆腐料理は百種類以上ありますよ!」


 何しろ豆腐は江戸時代に『豆腐百珍』という本が出版されるほどの万能選手だ。でも、今日はおからコロッケも食べたことだし、豆腐は試食だけで料理するのは次回に回そうかと思っていた。夜に食べると身になるし。いくら豆腐がヘルシー食品だとしても、カロリーゼロではないので。


 しかしアランの期待に満ちた視線攻撃に、ルカは負けた。

 

「えーと……では、肉豆腐を作りますね」


 せめて自分用に作ろうと思っていた、カロリー控えめな肉豆腐を作ろうと決める。一般的な醤油味ではなく、塩味のあっさり肉豆腐だ。


 まずは材料。準備していた牛肉ではなく、ローカロリーな鶏のささみに変更する。ささみはそぎ切りにして薄力粉を軽くまぶしておく。パサパサしがちな鶏ささみを、しっとり仕上げるためだ。

 豆腐は食べやすい大きさに切る。煮崩れる可能性があるので、大きめでも大丈夫だ。ポロ葱は斜め切りにし、生姜もスライスしておく。


 鍋に和風だし汁と塩、生姜を入れて沸騰させ、鶏ささみ、ポロ葱、豆腐を入れて煮る。高温で長時間煮るのも鶏肉がパサつく原因になるので、グラグラ沸騰しない程度に火加減を調節する。時間があれば早めに火を止めて余熱で火を通すと、鶏肉がしっとり柔らかく仕上がる。味も滲みるので、しばらく放置がおすすめなのだが。


「本当は時間を置いて食べたほうが、美味しいんですけど」

「なら、先に片付けられる物を片付けてしまいましょう」

 

 豆腐作りやコロッケの調理に使った調理器具を片付けていると、30分くらい経っただろうか。熱々から少し冷め、温かくなった塩肉豆腐を器によそう。


「どうぞ。ジャックさんも」

「いただきます」

「何だその挨拶?」

「ルカさんがいつも、食事の前に仰ってるので」

「私達の国での習慣なんです。いただきます」


 塩と出汁でシンプルに仕上げた肉豆腐は、ささみにまぶした小麦粉でとろみがついて、優しい味だ。生姜を多めに入れたのが良いアクセントになっている。七味唐辛子や柚子胡椒が合いそうだ。


「お、美味いな」

「今日は鶏肉で作りましたけど、他の肉でも作れますよ」

「肉無しじゃ駄目なのか?」

「駄目じゃないですけど、肉豆腐ではなくなりますね」


 肉類が食べられない奥さんのための質問か。仲良しだ。


 ルカはおからコロッケと塩肉豆腐でお腹いっぱいだったが、アランやジャックには足りなそうだったので、肉豆腐の煮汁にご飯を入れておじやも作る。ジャックも生卵が平気だと言うので、卵を直接割り入れて半熟にしてみた。2人が美味しそうに食べるので、ルカもついつい卵おじやに手が出てしまった。これだからダイエットが捗らないのだと、分かってはいるのだが。


 明日は休みだ、ひよこ豆豆腐を量産してダイエットを加速させよう。豆腐百珍になぞらえて、豆腐尽くしといこうかな。

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