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34 トッピング色々

 マリナがお手本を見せてくれたので、次はルカがお好み焼き作りに挑戦する番だ。なかなか技術が要りそうで腕が鳴る──なんて張り切って始めたは良いが、これが予想通り難しかった。ルカは初っ端の生地をフライパンに流すところで、早速躓いた。生地が薄く均一にならないのだ。


「マリナー、これ広島県の人は皆出来るの?」


 デコボコの上に歪な楕円形になった生地を前に、ルカは何とかして修正しようと悪戦苦闘する。けれど、やればやるほど汚くなる。マリナが作った時のような、平らで真ん丸な円には程遠い。


「皆は出来ないと思います。お好み焼きは、家で食べるというより近所の行きつけの店で食べる物なので」

「プロが作る物じゃん!なのにマリナは作れるの凄くない?」

「母が料理が得意で、家でも作ってくれていたんです。手伝っているうちにワタシもお好み焼きだけは得意になりました」


 マリナとユウキがお喋りしているのを聞いて、ルカは上手に作るのを諦めた。証拠隠滅とばかりに千切りキャベツで生地を覆い隠す。更に難易度を下げるため、キャベツはマリナよりも少なめにした。次は如何するんだっけと思い出していると、マリナが塩の瓶を渡してくれる。


「そっか、塩コショウだ」

「はい。その上からつなぎの生地を回し掛けます」


 広島風お好み焼きは手順が多い。ルカは関西風お好み焼きなら作ったことがあったが、あちらは材料を全部混ぜて焼くだけだった。お手軽さは関西風に軍配が上がると思うが、マリナの前では言わない方が賢明だろう。


 その後もマリナに教えて貰いながら、何とかお好み焼きを作ってゆく。マリナはスタンダードな広島風お好み焼きにしていたので、ルカはトッピングに海老を使った。殻をむいた海老を炒めてこれでもかと投入する。好物を好きなだけ入れられるのが手作りの醍醐味だ。


「あ、いいなー!後で一切れ交換して!」


 さっさと調理から撤退し、マリナが作ったお好み焼きを食べているユウキがトレードを持ち掛けてくる。ユウキは料理が苦手だ。苦手なのにレシピ通りに作らず、余計な調味料を入れたり手順を省いたりするタイプだ。自覚があるのが救いだが、改善する気はないようなので救いが無いとも言える。


「いいよー」

「ワタシがもう1枚、チーズ入りのを作りますから、それも交換しますか?」

「うん!チーズ入り美味しそう!」


 そこからはお好み焼きのトッピングの話になった。イカ天や餅、牡蠣やイカやホタテといった魚貝類、キムチに納豆と様々なトッピングがあり、好きな物を追加して楽しむらしい。


「ワタシが好きなのは大葉と梅干しトッピングです。こってりしたお好みソースの味と、梅干しの酸っぱさが意外と合うんですよ」

「梅干しかー、梅干しも見ないよねー」

「梅干しって聞くと唾が出てくる!」

「パブロフの犬だね」


 ワイワイお喋りしながらも手を動かし、ルカは何とか広島風お好み焼きを作り上げた。魔導コンロの上に千切りキャベツが散らばっているが、平皿に乗ったお好み焼きはまずまず美味しそうだ。少々形が崩れていても、最上部のたまごが破れていても、お好みソースとマヨネーズをたっぷり掛ければ誤魔化せる範囲だ。

 

 せっかくだからマヨアートを試してみよう。カロリーの事は考えずにお好みソースを塗りたくり、マヨネーズでストライプ柄を描き、マヨネーズの縦縞に対して垂直に菜箸で線を引いてマーブリング模様にする。チョコレートケーキの装飾でやったことはあったが、お好み焼きでは初の試みだ。初めてにしては綺麗に模様が出来て、ルカは満足気ににんまりした。


「何それ可愛い!」

「綺麗ですね!こっちもやってもらえます?」

「えっ、アタシのだけ仲間外れになるよー!」

「ユウキのはもう半分食べちゃってるじゃん。隅っこにハート描いてあげるから」


 キャーキャー言いながら、スタンダードと海老入りとチーズ入りのお好み焼きをトレードした。ルカは全種類確保する。少食なマリナはユウキからスタンダードなお好み焼きを受け取らなかった。結果、ほとんど料理していないユウキが一番たくさん食べることになり、ユウキが申し訳無さそうだ。


「ユウキ、片付けは私と2人でやろう。マリナは食べたらゆっくりしててね」

「うんうん、そうする!アタシ食器洗いなら得意だよ!」


 ユウキの食べるスピードがまた上がった。ルカも負けじとお好み焼きを口に頬張る。芳ばしいソースの香りが食欲をそそり、甘辛いお好みソースをマヨネーズがまろやかにしている。うどんが入ってかなりボリュームがあるが、半分はキャベツだと思えば罪悪感が少なくなる。そのキャベツの甘みがソースの濃い味を落ち着かせ、どんどん食べられる。


「美味しーい!チーズ入り凄く好き!」

「うん、チーズのも美味しいね。けど私は断然海老入りを推すよ!」

「何処を食べても海老が居ますね。どれだけ入れたんですか?」

「手持ちの海老全部。なんか海老をガッツリ食べたくて」


 女三人寄れば姦しい。テーブルにはそのうち果物やデザートも追加され、賑やかな夕食は女子会へと変貌を遂げて、夜遅くまで話に花が咲いたのだった。

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