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24 カレーうどんにしてみた

 ルカは食品棚の調味料を眺めていた。うどんの生地を寝かせている間に、出来たうどんをどうやって食べるか考えているのだ。


 この世界、洋食に使う調味料はたいてい手に入る。使ったことの無い調味料でも醤油や味噌の代わりにならないかと、この1年色々と買い集めてきたので、棚にはズラリと調味料が並んでいた。

 ケチャップやマヨネーズ、ウスターソースといった定番のものは、ルカ達より先にこの世界にきた転移者が作って広めたらしい。シナモンやナツメグ等の地球にも存在していたスパイスもある。この世界にしか存在しない謎の原料から作られた調味料もある。この世界にも地球にも存在しなかった調味料も、地球以外からの転移者が持ち込んだりしている。


 これだけ数多くの調味料があるというのに味噌や醤油が無いのは、これまで日本からの転移者が居なかったからだろう。少なくとも、転移者保護育成のための専門機関が作られてからの500年程は確認されていないそうだ。それ以前に居たとしても、料理に費やす時間や情熱や余裕が無かったのかもしれない。いきなり知らない世界に放り出されたら、普通なら生きていくだけで精一杯だ。ルカ達は恵まれている。


「決まったアルか?」


 横からヒョイとハオランが顔を出し、ルカはハッとした。少しぼんやりしていたようだ。転移直後から相談役(チューター)として気に掛け、助けてくれている彼にそっと感謝して、ルカはまた食品棚に視線を戻した。黄色いラベルが目を惹いた。カレー粉の入った瓶だ。


「決めました。カレーうどんにします」


 カレーはイギリス風のチキンカレーが、冒険者ギルドの食事処でも定番メニューになっている。日本のカレーはイギリスから来たらしいので、日本で食べていたカレーと似た味で口に合い、ルカ達もよく食べている。人気メニューなので長粒米のご飯普及に一役買っているのだそうだ。お陰で食事処に行けば、たいていご飯が手に入るのが有り難い。


「カレーうどんですか?」


 アランがハオランの反対側から口を挟む。


「はい、ご飯の代わりにうどんにカレーを掛けます」


 アラン達に手伝ってもらい、カレーを作る。食べ慣れたチキンカレーに、うどんに合うよう隠し味で醤油を入れた。入れたいなーとルカが独り言を溢したのを耳聡く拾い、アランがまた提供してくれたのだ。賢者ヒューバートに毎日増やして貰っているのだそうだ。


「成分を分析したり、似た味になるよう調味料を配合したり、あれこれ試しているんですが。なかなか難しいんですよねー」

「そんな事まで!アラン先生凄いです!」

「いえいえ趣味の範囲ですよ」


 雑談しながらカレーを作り、出来上がったら次はうどんだ。生地を麺棒で伸ばして5mm位の太さの麺状に切り、沸かしていた熱湯で茹でる。うどんが浮いてきたら水に晒し、1本摘んで味見する。


 結果、アランが作ったうどんが一番、コシがあって美味しかった。ハオランのものは柔らかめ、ルカが作ったうどんは柔らか過ぎてネチョッとした感じになった。


「お塩は思ったより多くて良いんだな。捏ねるのも。やっぱり足で踏むべきか……」


 忘れないうちにメモをして、アランが作ったうどん以外はひとまず異空間収納(アイテムボックス)に仕舞う。ルカの家に冷蔵庫はない。冷蔵庫も冷凍庫も販売されているが、高価な上にランニングコストも掛かる。しかも動力源が魔石なので定期的に交換しなければならず、面倒なのだ。コンロなら使う時にチェックすれば良いが、常に魔石のエネルギーを切らさないようにしなければならない冷蔵冷凍庫は、一般家庭で持つにはハードルが高い。


「カレーうどんにはアラン先生のうどんを使いますね」

「ワタシのは駄目だったカ?」

「いえ、美味しいですよ。持ち帰りますか?」

「ワタシは料理は苦手ネ。良かったらルカが使うといいヨ」

「じゃあ、また今度別の料理にしてご馳走します」

「その時は私もご一緒してもいいですか?」

「はい、もちろん」

 

 うどんを深めの器に入れて、カレーを掛け、刻んだポロ葱をつける。出来上がったカレーうどんをテーブルに並べていると、アラン達がエプロンを外そうとしていたので待ったをかけた。


「あ、エプロン着けたままの方が良いですよ。服が汚れますから」


 カレーうどんは美味しいが、跳ねて服が汚れる。特にアランもハオランも初カレーうどんなのだから、服を汚れから守るためにもエプロンはしていた方が良い。


「なるほど、これは食べるのが難しいですね」


 箸が使えずフォークでカレーうどんを食べるアランとハオラン。2人共慎重にうどんをフォークに巻き取っているが、気をつけていてもエプロンにカレーの跳ねが飛んでいる。


「でも美味しいです」

「ワタシもこれ好きネ。ライスより好きカモ」

「カレーライスも美味しいですよね」


 少し早めの晩御飯の時間は、それぞれの好きな食べ物の話で盛り上がりながら楽しく過ぎてゆく。

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