任務開始
ー海谷視点ー
去年の冬だった。
放課後、寮に荷物を取りに向かうところをライダーに引き留められた。
「ちょっと君、いいかな。大事な話があるんだ」
何も知らなかったオレは応接室に連れて行かれ、紅茶とビスケットでもてなされた後、とんでもない話を聞かされた。
「最後に本題を言う」
「…」
「以上のことを踏まえて、新田風磨の監視役になって貰いたい」
「は?」
なんで、オレが?
だってオレはただの、普通の部外者じゃん…
「なに、難しいことじゃない。当分は、いや永久に何もないかもしれないんだ。
ちょっと軽〜く見ていてくれればいい。
ただし万が一変化が見られたら…その時からは監視を徹底し、定期的に報告をくれ。
もちろん来年の時間割は同じにしてある。手筈は全て整っているんだ」
今となっては威厳のかけらもない、ふざけてばかりのライダー野郎だけど。
この時ばかりは逆らえる気なんて微塵もしなかった。
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今日も普通に1日が始まった。
相変わらずギリギリに登校してきた新田を、オレは遠目に見ていた。
いかにも普通な性格なのに、新田の周りにはいつも人が集まっている。
今日だって登校早々、お菓子だのなんだの騒いでいた。
「あれ、牧田なにやってんだ?」
隣でゲームをしていた斎藤が顔を顰めた。
「知らねー」
あんな変なオタクまで取り巻きにしてしまうなんて、我が監視対象はなんて恐ろしい陽キャなんだろう。
…だが監視対象とはいえ、所詮同い年のクラスメート。
あんな事情を聞いてなかったら、嫉妬ぐらいしていたところだ。