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アルゴリズム ver.1.3  作者: 浜津スクノ
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バレンタインで、ええ?

「いらっしゃいあせー」

深夜のコンビニでバイト中の俺。うん、いつも通りいいかんじにやる気が無い。

「お弁当は温めますか?」

やる気が無くてもルーチンとして刷り込まれた言葉はするする出る。

今日は2月14日。女の子が、好きな男に、黒とか白の甘くて苦いアイツと一緒に自分のアレをあげる日だ。アレって何かって?察してよ、バカ!

「113円が一点。429円が一点で…542円になりあーす」

勿論、やる気の無い俺はどちらも貰ってない。なんならイケメンでもないし、友達も少ないし、苦学生だから金も無い。いや、苦学生なのは嘘ですね。先月に密林でポチポチしすぎたわ。そもそも貰ってないからやる気が無いんだけど(力説)

「お待たせ致しました。ありがとうございあーす」

温め終わった弁当を男性客に渡して、あくまでやる気の無い接客で見送る。

客がいなくなったな…

「あー…」

いかん。無意味に声が出ちまう。別に落ち込んではいないんだよ?本当だよ?でも今日という日は大嫌いだ。今日を蹴り飛ばせるようにシャイニングウィザードの練習をしておくんだったぜ。


ウィーン


お。おお?

「いらっしゃいませ!」

自動ドアの開く音と、来客ベルと共に常連の女の子が入って来た。ちなみにこの娘、学科は違うけど同じ大学。めっちゃ俺のタイプ。だからスマイルと笑顔大奉仕。

「……」

彼女はちら、と俺に視線を向けるもそれだけ。うーん、クール。それがいいんだけど時にはデレも欲しいなぁ。

3日に1回くらいこの店に来て、飲み物や雑誌を買って行くマイエンジェル。今日は何を買って行くのかな?

「げ…」

思わず声が出ちゃったよ。おいおい、なっちゃいねえぞ、この店員。

そして彼女が向かったのは、今日で撤去されるバレンタイン特設コーナー。その中から1つ、赤いラッピングの箱を無造作に取る。

そりゃあねぇ…彼女可愛いしねぇ…渡す相手もいますよねぇ…

「はい。いらっしゃいませー」

さっきより明らかに低いテンションで、レジに来た彼女を迎える。

「こちら一点で907円になりまーす」

いいよなぁ。こんな可愛い娘に俺もあま~いの貰いたいなぁ。にがぁいのでもいい。もういっそカカオそのものでもいいよ。

「1000円お預かりしまーす」

主よ…やはり貴方を信じてない私は救われないのでしょうか?今何してますか?救ってもらっていいですか?

「93円のお返しです。ありがとうございまーす」

「……」

ん?

お釣りを受け取った彼女が、帰るでもなく俺のことを見ていらっしゃる。なんだろ。ちょっと緊張するんだけど。

「…お釣り、足りませんでした?」

とりあえず考えられる可能性を訊いてみる。

「これ、あげる」

「え?」

俺の方に差し出される手。そこには今しがた買ったばかりのチョコレート(税抜840円)が。

「じゃ、仕事頑張って」

「はい。頑張ります」

歩き去る彼女。後ろ姿もクール。


ウィーン


って…ええ!? 帰っちゃったよ?俺も普通に返事しちゃったよ?完全に真顔だったよ。せめてお礼くらいは言うべきだった。

「え~と…う~ん…」

店内の時計を見ると時間は午後11時58分。こいつは電波時計で、誤差がミリ秒程度しかない。レジの表示も2月14日。

これは、つまり、そういう事だよな?

「あは…えへははは…」

気持ち悪い笑い声が漏れ出るが、こんなの出てもしょうがないだろう。要するに、だ。


バレンタインデー最高!


(了)

元と比べると倍近い文字数を加筆しました。それでもコンセプトでもあるので、さらりと読める文量のはず。登場人物にほとんど描写が無いのも意図的なものです。

初期段階では中編程度のラブコメとしても考えていて構想もありますが、それはまた機会があれば…

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