か、帰れない、、
俺は学校からの帰り道、アスファルトの車道を走っていた。通い慣れた道で、どう転んでもこんな中世の石畳の道になんて迷いこむはずがない。だいたい、峠道を走っていたはずなのに周りは見渡す限りの草原が消え行く夕日に染まっており、やがて日が沈んで暗闇に閉ざされた。街灯が一つもついていないばかりかいつもなら眼下に綺麗に光る街の灯りもどこにも見当たらない。ナビを見てみると、すでに峠を下りて麓の「畑の中」を俺の住んでいるS市の方へ向かっていることに、、、、畑の中って、、、、
とにかく今自分がどこにいるのかを知らないことには帰ることも出来ない。
車を停めてスマートフォンから自宅に電話してみたらりりあがでた。
「お兄ちゃん?もうすぐご飯できるよ。早く帰って来てね!!」「おう!そのつもり。なんだけどな、なんか知らない道に迷いこんじゃったみたいでさぁ、ナビもどうも役にたたない感じなんだよ。とにかく出来るだけ早く帰るようにするからご飯は先に食べててくれな?」
「・・・・・・」
「りりあ?」
「そんなにりりあをほったらかして遊びに行きたいの?」
「へ?」
「相手は同僚の先生?それともまさか教え子とかじゃないでしょうね?」
「な?なに?」
「そんなの絶対許さないんだからぁ!!今すぐ帰って来て!!」
「ちがーう!!ホントに迷ったんだってば!!」
「ナビもついてるのに迷うわけないでしょ?とにかくすぐ帰ってくること!!いいわね!!」
いきなり電話切りやがった(汗)
・・・・
と、とにかくここにいても仕方がない。
俺は車のライトを頼りに、慎重に運転しながら進んでいった。何しろ本来峠道を走っていたはずなのだから、間違って崖下に転落なんてしたら洒落にならない。それともマジで事故ってここは死後の世界とか?いやいやそんなはずは、、、、なんか怖くなってきた、、、、
気をとりなおして30分ほどのろのろと進んでいくと、前方に微かに明かりが見えてきた。
「やった!!民家かなにかだ!!あそこでここがどこか聞いてみよう。」
明かりに近づいて行くと小さな湖に面した、こぢんまりとした集落が見えてきた。
道を挟んで篝火が2つ、おそらくここが集落の入り口なのだろう。だが家々には灯りが灯っておらず、静寂の中に虫の鳴き声だけが響いている。
入口近くの民家の玄関に立ってみたものの、ドアホンがない。
さすがにドアをドンドン叩くことははばかられたので仕方なく車に戻って湖の岸に駐車して夜を明かすことにする。ここがあの世でないなら明日は直接出勤かぁ。多分一度帰宅する余裕はないんだろうなぁ、、、、
そんなことを考えながら運転席のシートを倒し、スマートフォンを取り出して暇潰しにゲームをはじめる。りりあに「今夜は帰れない」なんて電話したらどんなことになるか想像したくもないので現実からは逃避することにする。
そうこうするうちにいつの間にかスマートフォンを助手席に放り出して眠ってしまっていた。