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卒業の日 最後の授業 〜恋の授業を始めましょう?〜

作者: 春咲 友花

 今日、私の卒業式があったので、投稿してみました。


 この作品はフィクションです。実際の人物、団体とは一切の関係がありません。


 (3/27)タイトルを変えました。

 卒業。それにどんな意味があるのだろう。


 別れ。そんなのがなぜ悲しい?


 私にはわからない。わかろうとも思えない。


 どうせ私には別れたくないと思うような友達などいない。


 私と別れたくないと思ってくれるような人もいない。


 みんな泣いてる。みんな笑っている。


 でも、その輪の中に私はいない。


――"みんな"の中に私は入れない。



◇◆◇



 卒業式は、あっという間に終わった。まだ、卒業する、という実感がわかない。


 みんなが集まって写真を撮っている。だが私は誘われない。別に羨ましいなんて思わない。


 見慣れた正門。見慣れた校庭。廊下に教室。明日から、この学校に私の"居場所"はなくなる。クラスメートと私は、ただの"他人"に戻る。先生は、私のことを忘れる。私も、みんなのことを忘れる。


 桜の花びらが散るように、私達の思い出も少しずつ散っていく。色あせない思い出なんて、そんなものはない。思い出は、いつかは忘れ去られてしまうもの。過去は過去。いつまでも囚われていることはできない。


 私の世界には、色がない。別に障害ではない。ただの例えだ。だが、色はない。まるで長い時間がたち色あせた写真みたいに、セピア色の景色を私の目に映す。


 たとえ私が今家へ帰っても、呼び止める者などいないだろう。


「先輩!」


 たとえ呼び止める者がいたとして、私の気にすることじゃない。


「先輩!!」


 私のことを気にする者など、ここにはいないのだから。


「桜井先輩!!」


「え?」


 思わず足を止めてしまった。まさか自分の名前が呼ばれるとは思ってなかったのだ。


「ま、……待って、ください」


 私を呼び止めた男子生徒がこちらに向かって走ってくる。帰ろうとしたのがバレたのか。マズイな。そう思った。みんなの視線が集まっている。これじゃ帰るに帰れない。仕方がないし、なぜわざわざ私を呼び止めたのかだけでも聞いておくか。そう思い後ろを向いたとき。


「………っ?!」


 びっくりした。後ろへ倒れそうになる体を必死に支える。


「え? あ、すみません。つい………」


 そう言って私に飛びついてきた者。例の男子生徒は私から離れた。一体何なのだろう。こっちに向いていた人々の視線が鋭くなる。


 それも当然のこと。遠くからでは気づけなかったが、この生徒、学校の人気男子NO.3にかがやいたものだ。そんな人気生徒が私に何の用だろうか。そう尋ねようとした私の声に、男子生徒の声が重なった。


「ね「先輩、好きでした! いえ、今も好きです! 僕と付き合ってください!!」ぇ……」


 突然の告白。それも大声の。一瞬にして世界からすべての音が消えた。そして、やがて小さなざわめきの渦がうまれた。


「先輩は自分との別れを惜しんでくれる人はいない、自分も惜しむような人はいないと思っていますね。」


「……なんで」


「それくらいわかります。いつも見てきていたのですから。ですが、それは違います。間違っています。ここにいますから! 先輩と別れたくないと思う人が、ここにいます! 僕は、先輩と別れたくありません。寂しいです。僕が先輩との別れを惜しんであげます! ですから先輩は、僕との別れを惜しんでください! 先輩は、卒業したら僕らとは他人に戻ると思っている。でも、僕はそれが嫌です。先輩と他人になんてなりたくない。だから、僕と付き合ってください。僕の恋人になってください。恋がわからないのならそれでいいです。僕が教えてあげます。だから、僕を先輩の"特別"にならせてください!」


 これはもうあっけにとられるしかない。これは男子生徒の気持ちの押しつけだ。ただの自分勝手な思いだ。だが、なぜだかそれを嬉しいと感じてしまった。自分との別れを惜しんでくれる人がいることを、嬉しいと思ってしまった。


「先輩……?」


 気づいたときには遅かった。それは次々と私の目から溢れ出ていた。男子生徒の心配するような声も聞こえた。でも、私の目から出てくる"それ"は、止まらなかった。


――ずっと誰かに言ってほしかった。離れたくないって、寂しいって、言ってほしかった。


 そう自覚したとき、ますます泣けてきて、どうしようもなくて。ただ、その温もりが嬉しくて。私はその後、体中の水分がなくなるまで、泣き続けた。



◇◆◇



「で、先輩。僕の告白に対する答えは?」


 男子生徒は、私が泣き止むまで、黙ってそばにいてくれた。寄り添ってくれていた。嬉しかった。だから、それに対する答えは決まっている。


「……はい。お願いします」


◇◆◇


 今はもう、景色に色がないとは感じない。あの時から私の周りは虹色に輝いている。


「先輩。恋の授業を始めましょう」








 

 もしいいなーと思ってくれたひとは、ポイント評価お願いします。この下です。

 もし他にも私の作品を読んでみたい、という人は、巫女姫が送るレクイエムの方も読んで見ください。お願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんな卒業式があれば、周囲の人はきっと冷やかすでしょうが、二人にとっては最高の卒業式だったでしょう… これからも幸せでいてくれるように珈琲に祈ります… [一言] これからも頑張ってください…
[良い点] 描写が細かくてそのときの情景が思い浮かべやすかったです。 [一言] 読んでいて涙が出てきました、感動しました。
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