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プロローグ:あの蒼空(そら)に、想いを馳せて
規則正しい機関音が響く。
振動に身を委ねながら、離陸許可の瞬間を待つ。
「第3滑走路上支障物なし、離陸可能です」
離陸準備に入る。
試合開始は、もう間もなくだ。
娯楽としての空戦——
俗に"模擬戦闘"、なんて言われている、第二次大戦期を駆け抜けた歴戦の戦闘機を使った空中競技。
その競技における頂点とも言えるこの大会——"模擬戦闘会"。
この大会が、俺にとっては2年半ぶりの表舞台だ。
澄みわたる碧に、想いを馳せて。
操縦桿を握りしめた。
嫌が応でも気分が高揚する。久々の感覚だった。
すべてはあの日――
「昴っ! 私、昴とじゃなきゃ駄目なの!」
幼馴染、椎野 結花の、この一言から始まった挑戦。
俺たちの夏が、始まろうとしていた。