雌山羊は大嫌い 下
陵辱が一通り終わった後、オークたちとサコーは引きずられるように「回収」されていった。
「今の娘はどうなるんだ?」
「オーク三匹を殺したら賞金と一緒に解放するはずでしたが、オーク一匹殺して敗北ですから」
オーナーは歪んだ笑みを浮かべた。
「オーク一匹分の補償を要求します。ここのステージで二束三文で「女優」になってもらいます」
ワーオ、最低。
俺は男に渡された金の入った袋を投げ渡した。オーナーは慌てて受け取り、中身を確認する。
「足りるな?」
「はっ、はい。あの娘が、そこまで重要なので?」
「細かいことを聞くな。このステージごと生き埋めにしてやろうか」
ボディガードがじろりとこちらを睨んだ。俺がまっすぐ睨み返すと慌てて視線をそらす。転生者の恩恵に万歳。
「来ないで!ケダモノ!」
山羊人族のくせに、虐待された猫みたいだった。泣き腫らした目が真っ赤に充血している。
俺は壁を思い切り殴った。拳が石の壁にめり込んで、サコーが息を呑む。自己紹介するより、こっちのほうが早い。
「転生者の便利屋だ」
俺は鉄格子の扉を開けさせた。
「あんたの父親の依頼であんたを回収しに来た。早く出ろ」
サコーはこちらを警戒したまま、一瞬目を泳がせた。俺についていき此処から救出され親元に戻るか。それとも反逆を貫いてここで身売りするか。
最低限の分別はつく娘だった。こちらを警戒してみやったまま牢屋から出てくる。
こんなときに気の利いた言葉をかけてやるには才能が必要だ。俺には残念ながらそんな才能はない。だから昔大好きだったライトノベル――深見真の「ヤングガン・カルナバル」から抜粋する。ちょっとうろ覚えだけど。
「親から離れた仔山羊がどうなるか知ってるか」
俺はサコーに言った。
「群れからはぐれて、喰われて死ぬんだ」
ちょっと臭かったかもしれない。なんとなく恥ずかしくなって俺はサコーに背を向けた。
「……私は」
地下空洞から出て、夜が更けた頃。俺の家に向かって歩いていると唐突に話始めた。
「私は、村で一番綺麗だって言われてた。いい女房になるって。でも私は女だからって男の下に付きたくない。だから必死に剣の腕を磨いた。都市だったら男女平等だって言われてるのを知って村を飛び出したの。家で一番強い剣を持って。でも」
サコーは涙ぐんだ。
「ジョグジャカルタに来て、私は女だって思い知らされた。男女平等なんかじゃないって、思い知らされた」
「お前、そりゃ違うだろ」
俺は思わず反論してしまう。俺に心理カウンセラーの才能は無い。
「女しか子供は産めないし、そりゃ女には男とは違うことが求められるのは仕方ねえだろ。男女不平等なんだよ。現実は」
「でも私は男に勝ちたい!」
サコーが叫んだ。道行く人々が痴話喧嘩と思って非難がましい視線を向けてくる。
「……お前」
俺はさっきのオークの魔羅をふと思い出した。あのぶっとい魔羅を咥え込んだこいつの女陰なら、あるいは。
「双頭ディルドって知ってるか?」
拝啓 龍ヶ宮禅 様
突然手紙を送ってしまいすいません。住所はお父さんから聞きました。
教えてもらったものを早速取り寄せてみました。
私の許婚は自警団のリーダーで、一人前の戦士なんですがベッドの上では骨抜きです。
意外に男って弱いものなんですね、驚きです。
もし山羊人族の村を訪れる事があれば私の名前を出せば良くしてくれると思います。
それでは。
サコー・カニンガム
双頭ディルドが何か知らない清い一八歳以上の諸君は目の前のPCで調べてみることだ。パソコンは「PUBG」を遊ぶためのおもちゃじゃない。
サコーはサドの素質があったらしい。ねじ曲がった性的嗜好を教えてしまったかもしれないが、本人が幸せならよしとする。
コルトからは謝礼金をたっぷり頂いた。地下空洞のオーナーにぶん投げた前金が霞むくらいだ。
俺はベランダの椅子に座ってタバコを吹かした。煙が喉を焼く。
異世界に来るまでは女、タバコ、酒の順に好きだったが、タバコと女が逆転した。女は怖い。