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異世界転生を夢見るお前らへ  作者: 龍ヶ宮禅
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異世界転生に憧れて

 俺が初めて憧れたのは芸人の「濱口優」だ。毎週木曜日の夜七時から放送していた「いきなり黄金伝説」の無人島で生活する企画で、モリを片手に素潜りで海に飛び込み魚を突き、熱した油に豪快に放り込んで揚げて食らう姿にワイルドさを感じて憧れた。


 次に俺が憧れたのは「キノの旅」の「キノ」。クールでドライ。二言目には愛とか仲間とか家族とか薄っぺらい文句を並べ立てる週刊少年ジャンプに反骨精神を抱いた中二病の俺にクリーンヒット。「キノ」が乗るバイク「エルメス」にあこがれてセブンイレブンでバイトしまくり、「エルメス」のベースになった「ブラフシューペリアSS100」に似た「カワサキ・エストレヤ」を買ったのはいい思い出。


 これを読んでるお前も自分が憧れたものを思い出して見てくれ。無いわきゃないだろう?


 少なくとも今のお前は少なからず異世界転生に夢を見てるわけだ。退屈な現実が横たわっている日本国。河合模試の点数で殴りあう受験生。おそろいのリクルートスーツでボランティア経験を語る就活生。死んだ顔で中央線に乗り込むサラリーマン。ああはなりたくないよな。


 俺も異世界に転生したばっかりのときは色々やった。意気揚々だった。「CAPCOM」の「モンスターハンター」みたいに馬鹿でかい大剣を背負って旅をした。


 魔法も覚えまくった。炎の龍を飛ばしたり気に入らない司祭のいる教会に雷を落としたり、エターナルフォースブリザードをわざわざ術式を組んで食らわせてみたりした。相手の指がぽろぽろ凍傷で落ちて、思ったよりエグい魔法になった。


 女遊びも慣れたものだ。転生者は金持ちな上に異世界では華々しい経歴だから、なにもしなくても女は集まってくる。「快楽天」なんか目じゃない。


 まあ極端な話、「曽山一寿」の「でんじゃらすじーさん」や、「原ゆたか」の「かいけつゾロリ」を高校生になっても読んでいるやつは少ないだろう。それと同じように転生してしばらくすると落ち着いてくるものである。


 人を殺したり死んだりというのに憧れるのは、中学生がグロ動画を見るようなもの。慣れてくればよっぽどのことがなければ殺すこたあないかな……となってくる。「酒鬼薔薇聖斗」だって殺人を後悔する。詳しい話が知りたければ「絶歌」を読むといい。アマゾンマーケットプレイスの古本で四百円ちょっと。「日高屋」の醤油ラーメンと同じくらいの値段。読んで気分が悪くなっても俺は責任は取らない。


 面白いことはこの世界には色々ある。自分でそれを探したり、向こうからやってくることもある。転生者という身分はこういうとき得だ。


 今日の客は、よりにもよって転生者だった。




「あの!龍ヶ宮禅さんですか?」


 そう言ってくるのは中学生くらいのガキ。声変わりしたかしてないかくらいの年。


 俺?大学落ちてプー太郎になってからこっちに来たから年齢は二十四。


「そうだけど」


「異世界に来たばっかりなんです!色々教えてほしいんです!」


 異世界に来たばっかりのくせに、このガキは女を連れていた。身長150センチくらいなのに、アンデスメロンくらいの大きさの乳をばるんばるん揺らしている。よく見ると乳首が浮いている。ワーオ。商売女からみてもいいカモだよな、これくらいの年の転生者って。


 とりあえず応対用のテーブルに通す。女はばるんばるんの乳をテーブルに乗っける。


「異世界に来たばっかなんですけど、何から始めたら良いんでしょうか?」


「……知るかよ。魔法検査とかは受けたのか?」


「はい、測定器を壊しちゃいました」


 あれれ~ぼくなんかしちゃいましたかね~


「ああそう、じゃあ傭兵でもやれば」


「異世界界隈で僕が有名になりすぎて困ったりしませんかね?」


「馬鹿かお前」


 俺は机の足を蹴った。


「社会がお前一人でどうにかなるわけねえだろうが。一人異端がいるだけでぶっ壊れるほど社会は軽くねえんだよ」

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