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異世界転生を夢見るお前らへ  作者: 龍ヶ宮禅
10/19

あたしはゆうれい 中

 もらった魔法術式は暗記して原紙はその場で燃やす。小さな炎魔法をコントロールして掌の中でキャンプファイヤー。


 早速、変幻魔法を使ってみる。


 術式はいかにも師匠が作ったものらしい合理的で無駄のないもの。


 初めて使う魔法はどうやら術者の知っている人間にしか変幻できないらしい。個人のアカシックレコードのデータにアクセスして、なんやかんや。成蹊大学に落ちた俺の頭じゃ東大様の作ったものの構造なんて分からない。


 俺が知っているやつ。シモノフ。ズブロヨフカ。マスター。子供二人。サコー。コルト。子供には戻りたくないし、シモノフたちに万が一迷惑になってはいけない。数ある俺のセフレから選ぶことにする。


 セフレといっても結構な人数がいる。女の恨みは怖い。できるだけ寛容な女がいい。


 ふと俺は一人の女が思い当たった。名を小桜遠乃という。西洋風の顔立ちが多い異世界で、珍しいアジア風の顔。ちょっと幼い雰囲気のある黒髪の美少女。


 彼女は俺のセフレの中では一番寛容だろう。


 なぜなら彼女はもう死んでいるから。ちょっと精神的に不安定なところがあって、セックスに自己肯定感を求めた結果、ヤり回せれて性病で死んでしまった。


 湿っぽい話はよそう。とにかく俺は便所のなかで冴えない青年からここにはいないはずの美少女に変幻した。さらさらの長い髪が首筋にかかって気持ちいい。


 生きている亡霊になった俺はふらふら研究所の外に出た。


 ジョグジャカルタよりバンダルスリブガワンは整然としている。街は西洋建築とイスラム風の建築が混じった綺麗な町並み。


 ファンタジーな町並みをぶち壊すのは道のど真ん中をゆっくり警笛を鳴らしながら走るBMW・7大型セダン。運転手は黒いぴかぴかの車体を見せびらかして道をゆく若い女に声を掛けまくっている。異世界まできてクルマに乗りたいか?


 この運転手がまた傑作だった。現世から取り寄せたらしい「Supreme」のTシャツ。一枚何万円するのやら。


「ねぇねぇ、これからご飯行かない?いい店知ってるからさぁ」


 黒髪の美少女に目ざとく目をつけるのは時間の問題だった。師匠が言うには二度とこの辺に来なくなるようなきつい目に合わせてやらなければならない。


「えー」


 さすが俺、演技派。まんざらでもなさそうに身体をくねくねさせながら話す。


「彼氏いる?」


「いないですー」


 彼女はいっぱいいるけどね。嘘は言ってない。


「かわいいのにもったいない!やっぱり異世界の男どもは見る目が無いよなあ」


 お前の目の前の女、中身は男だぞ。


「とりあえず乗ってよ。これ、俺の世界で最高の乗り物なんだ。きっと気に入るからさ」


 この男はベントレーとかマイバッハとか知ってるんだろうか?


 俺は面倒くさくなって、バッグからナイフを抜いた。屋台で買った安物の片刃のシースナイフ。


 真一文字に振るったナイフは鉄の車体に長い傷を刻んだ。


「何しやがる!」


 男が絶叫する。俺はひらりと蝶のようにスキップしながら車道に飛び出す。ちょうど、BMWの鼻面を拝むような形になる。


 愉快な気分。俺はメビウスに火をつける。強すぎるメンソールが喉を焼く。


 男がなにやらわめきながら、アクセルを踏み込んだのがわかった。道行く人々が慌てて逃げ出す。


 BMWに跳ね飛ばされる直前に、俺は転移魔法を発動。


 BMWの後部座席へ。


 男の後頭部にメビウスの白い煙を吹きかけた。驚いた顔がこちらを振り向く。


「ねえ、あなたはわたしと一緒に死んでくれる?」


 男が言葉にならない悲鳴を上げて、思わずハンドルを切る。


 男と目線を合わせたまま、にっこり笑う。転移魔法を発動。レンガ作りの一軒家にBMWが突っ込む直前に脱出する。




 クラッシュしたBMWを尻目に、俺は師匠の研究室に戻った。


 師匠は俺の風体を見て一瞬フリーズした。いきなり乗り込んできた正体不明の美少女に、東条英機の愛弟子たちも視線をこちらに向けた。


「師匠。仕事を片付けて来ましたよ」


 一芝居打ってみよう。研究員ににっこり笑らって一礼。あわてて研究員も一礼、戻ってきた白髪交じりの髪をかきあげて、デキる研究員気取り。ワーオ。男はばかばっかり。


「龍ヶ宮。からかってやるな」


 呆れたような師匠。お硬いねえ。


「これが例の報酬だ」


「なんの魔法?」


 俺は魔法術式を読み込みながら言う。


「老化、若化を操る不老の魔法だ」


 肌のハリは保てそうだけど、人生のハリが無くなりそうな魔法。読者諸君がそういう哲学が知りたいなら「SIREN」ってホラーゲームをやると良い。PS3のリメイクはだめだ。PS2でしか出ない味がある。



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