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「あ、ご苦労様です。こちらなんですけど」
太田はすっくと立ち、彼の後ろに積まれている箱を指さした。六箱ほどあった。
「これ、全部ですか?」
思ったよりも多い。二箱くらいなら一人で運べると思ったから、誰にも声をかけなかったのだ。こんなにあるなら誰かに来てもらうんだったと後悔する。そんなことを悟ったのだろう。太田が言った。
「僕も一緒に運びますから」
まず彼が一箱だけを手にした。その重さを計りながら私に差し出した。しかし、留守番をしている人に運ばせては悪い。電話もかかってくるだろう。
「あ、けっこうです。すみません。今、応援を呼んできますから」
私はその一箱だけを受け取り、慌てて営業部に戻った。駆け戻ったから皆が何事かとこっちを見た。
「誰か手を貸してください。サンプル商品の箱、けっこうあって、私一人じゃ無理でした。手分けしてこっちに持ってきちゃいましょう」
そう声をかけると、すぐさま行動を起こしたのは、新人君こと竹中圭馬だった。
「はいはい、僕、行きます」
学校で答える時みたいに真っ直ぐ手を挙げて、すぐに私と一緒に廊下へ出た。
「さっき、鹿島さんがサンプルを取りに行くって言った時、僕もついて行こうと思ったんです。でも、あっという間に出て行っちゃったから、すいません」
口ではすみませんと言っているが、その口調には私が楽しいところへ一人で行ってしまってつまらなかったみたいなニュアンスにとれた。いつも元気な新人君。しかし、廊下の向こう、商品開発部からさっきの若手社員、太田が三箱、運んでくる姿が見えた。
「あれ、運んでもらってるんですか」
取りにきてくれと言われているのに、向こうから運んでもらってしまっては悪いと思う。竹中も同じ気持ちらしく、慌ててその箱を受け取りに駆け寄った。さらに太田の後ろからも顔が見えない誰かが二箱を手にしていた。他にも応援してくれた人がいたようだ。




