35/45
12
それほど時間をかけず、美佐穂はキャベツを炒め、ハムとドレッシングを合わせた漬物にし、レモンリゾットを作った。見かけもプロの仕上がりだ。こんなものが私の台所で作れるなんてと信じられない思いだ。
「すごい」
本心でそう言った。まるでかぼちゃを馬車に変えたくらい驚いていた。
美佐穂はくすぐったそうに微笑む。
「リゾットはレモンの皮だけの和風だしで作ってみた。リゾットというよりも雑炊に近いかな」
そんなことはかまわなかった。
「いただきます」と言って一口リゾットを食べる。
爽やかなレモンの風味、汁は入っていないらしく酸っぱくはない。キャベツもおいしい。美佐穂の腕は魔法のようだ。
やっと思いだした。美佐穂は栄養士の資格と取るということで女子大へ行ったんだ。さぞかし腕のいい栄養士なんだろう。卒業してどこへ就職したのか。
そんなことを訊きたかったがそれを聞いたら美佐穂がまた顔を曇らせるかもしれないと口をつぐんでいた。




