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バレンタインの前日。長谷川家の台所では、チョコ作りが、行われてた。
真央は、生前そらにチョコ作りを手伝わされた経験がある。
その経験を生かして、ミズキにチョコ作りを教えていた。
「湯煎で、チョコ溶かす時は、均等に刻むんだよ。そうしないと、キチンと、溶けないから」
「わかった」
ミズキは、丁寧にまな板の上のチョコを包丁で、刻んでいく。
料理はあまり好きじゃない、と言っていたが、不器用な真央と違い、初めてのチョコ作りにも関わらず、手際よく、刻んでる。
真央は、見守る必要ないかと、自分の分も、刻んでいく。
「 いったー」
「どうしたの?」
「指を切ったんだよ」
「あーもう。水で、洗って、絆創膏貼ってきて」
真央は、ミズキが手当てしに行ってる間、残りのチョコを刻み、湯煎の準備をした。
「こう?」
「そうそう、そんな感じで、型に流しいれて。」
「後は、冷まして、冷蔵庫で、冷やしたら完成」
チョコが、固まるまでの時間、二人は渡す方法について話していた。
「ミズキは、明日いつ渡すの?」
「私は、明日学校で、部活があるからその帰りに渡す予定」
「俺は、うちに渉が来るからその時渡す」
「ふーん。この前の日曜日、言った通り、渡す時、私って言うんだよ。帰ったらきくからね」
ミズキは、意地悪な笑みを浮かべて、真央に言う。
「わかってるよ。絶対に言うから」
「はいはい。そろそろ、出来てるんじゃない。チョコ。」
「ああ、忘れるとこだった」
真央は、冷蔵庫を開けチョコをチェックする。
「いい感じだ。型から外してラッピングしたら完成」
真央は、冷蔵庫から出してゆっくりとチョコを型からはずしていく。
「きれいに、出来たね。」
ハートや熊の形などに出来上がった、チョコをラッピングしながら、ミズキは、言った。
「明日が、楽しみだな」
真央は、そう呟く。
翌日、真央は朝から、落ち着かず、リビングの中をうろうろしながら、渉の到着を今か遅しと
チャイムが鳴り、玄関へ行くと、渉がいた。
「お早う。渉。」
「お早う。」
渉も、いつもと違って、緊張していた。
真央と渉は、二人で、適当に話したり、して時間を潰した。
「あのさ、渉。今日なんの日か覚えてるよね?」
「もちろん。今日は、バレンタインです」
「そう。という訳で私からチョコです」
――私って言えた
真央が、一人、私って言えた事に喜んでると。
「真央、今、私って言った?」
「うん。言ったよ。」
「もっもう一回言って。お願いします。」
「言われなくても、言うよ。私。」
「かわいい」
いきなり、渉がかわいいと、叫ぶので、真央は、びっくりしていた。
「なんでだろ。私って言っただけなのに、真央が、一段と可愛く見えるんだよ。」
渉は、そう言いながら、グリグリ真央の頭をなでる。
「私は、小さな子じゃないから、頭なでられても、嬉しくないぞ。」
渉の手をのけて、真央は、自分から抱きついた。
「真央さん?」
「いーから、そのままで、聞け、いや聞いて下さい。これからも、私の事好きで、いてくれますか?」
「もっもちろんです」
渉は、どぎまぎしながら答えた。
「約束だぞ。破ったらゆるさないです」
「おう」
真央は、しばらく、渉に抱きついていた。
そのあと、こっそりと物陰に隠れて、見ていた、そらに、からかわれるのは、別の話。




