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日曜日。真央とミズキは、電車で三城駅に来ていた。
集合時間の10分前、唯花のスマホにミズキが連絡する。
「唯花?今駅に着いたよ。寝坊で5分くらい遅れそう?相変わらずだね。タヌタンの前で待ってるから」
ミズキは、通話を終えて、携帯電話を切る。
「唯花寝坊したから、5分くらい遅れるって。タヌタンの前で、待ってよう。」
「タヌタンって、あの間抜けな顔したタヌキの?」
「そう。行くよ」
真央とミズキは、駅の近くにある観光案内所前に設置されてる、中島市のゆるキャラ タヌタンの人形前で唯花を待つことにした。ちなみに、タヌタンは、頭にねじり鉢巻を巻いた間抜け顔のタヌキのキャラクターだ。
10時5分過ぎ。髪をショートにした、活発そうな少女が、現れた。
「ミズキー 久しぶり。」
「唯花!久しぶり。元気だった?」
「もちろん」
ミズキと唯花は、抱きあって再会を喜んだ。
「そっちのツインテの子が、ミズキの言ってた、長谷川真央さん?」
「そうだよ。唯花、紹介するって唯花?」
ミズキの言葉が終わる前に、しゅっばっと唯花は、真央に抱きついた。
「捕獲じゃー 小さいのう。ぶち、可愛い。ほっぺ、プニプニじゃー 」
唯花は、真央に抱きついたまま、頬にスリスリする。
真央は、唯花抱きしめ攻撃から逃れる為、じたばたしながら、ミズキに助けを求める。
「みにゃー助けてーミズキ」
ミズキは、無言でペシッと唯花の頭を叩いて、真央から引き剥がす。
「ごめんなさい。つい、可愛いからね」
「まったく。初対面で、そんな事しない。ようきタウンに行くんでしょ」
「あーはいはい」
三人は、三城駅の前のバス乗り場からでてるようきタウンまで無料のシャトルバスに乗って、行く事にした。
「バレンタインのチョコ用の型は、やっぱりこの辺じゃ、ようきタウンじゃないと無理だね。雑貨屋や百円ショップは、ようきタウンにしかないし」
シャトルバスがようきタウンに着くと、バレンタインの特設コーナーへ行く。
「わ〜、色々な型があるねー」
「そうだね。迷う」
三人は、キャイキャイ言いながら、型を選らんだ。
三人は、型やラッピング用の袋を買ったあとフードコートで、休憩していた。
「ついでじゃないけど。真央の相談にものるけど。」
唯花は、真央をじっと見て言う。
「まず、俺の秘密の話から聞いてほしいんだけど」
「秘密?」
「私の秘密と同じと言えば分かるかな。」
「なるほど」
唯花が、納得したところで、真央は、自分の秘密を話した。
「ミズキと同じような体験してるんだ。で、真央の相談はズバリ俺って言うのを
辞めるタイミングでしょ?」
「うん、そうなんだ。なんで、わかったの?」
「ミズキが、私って言ってるからかな。」
「それだけで?」
「それしかないよ。」
唯花にあっさり指摘され真央は驚いた。
「俺って言うの辞めるの真央が、好きな人にチョコ渡す時にしたらいいんじゃない。」
「あっそうか」
真央は、散々悩んだのが、バカみたい思えた。
――渉にチョコ渡す時に、私って言えばいいんだ
真央は、バレンタインの時に、俺って言うのを辞める事にした。




