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「真央って、しゃべり方きついよね。」
ある日の昼休憩。女子数名と話していた時、何気に言われた一言。
「あーなんかね。同じ男言葉使っても、ミズキと全然違ってさ、ただ口の悪い男子って感じだよね」
「言い過ぎじゃないかな。それは、僕も一緒だし。この前、父さんから注意されたんだよ。僕って言うのと、言葉使い直しなさいってね。ねぇ、真央。僕、携帯で怒鳴ってたろ?って、聞いてる?」
「ああ、うん。凄かったな。僕だってわかってるよーって」
ぼーっとしてた真央は、あわてて返事した。ミズキは、真央の気持ちを察し、こう言った。
「まあ、言葉使いは、少しずつ直して、いけばいいと思うよ」
「そうだな」
―――
「昼間の事、まだ気にしてるの?」
夕方、リビングで宿題をしながらミズキは、訊いてきた。
「まあ、そうなんだよ。俺じゃない、私ってそんなに言葉使い悪かったのかなって」
「ぼっ私は、あんまり思った事ないけど。大体、女言葉使っていても、しゃべり方一つで、きつく感じるから」
「……さっき僕って言いかけたよね」
「う〜やっぱりすぐは、ムリだな 」
頭を抱えるミズキ。
「昼間も言ったけど、少しずつ直して、いけばいいもん」
「だよな」
夕食とお風呂を済ませた後、真央は、部屋のスタンドミラーの前に立つと。
「私は、長谷川真央でーす」
思い切りドンびくような声で、ブリブリしながら、自分の名前を言ってみる。
「きんもい。無理だっつーの。俺が女言葉使うのって」
と言ってみるものの、女子に生まれ変わって、もうすぐ1年だ。そろそろ、男子みたいな振る舞いは、辞めたほうがいいかもしれない。
そう思ってると、クッションでお昼寝していた、そらが、体を起こしてきた。
「いきなり、何かと思うじゃない。女言葉使った上に、ブリブリしながら自分の名前いうなんて」
「いやー昼間さ、クラスの奴に言われたんだよ。言葉使いがきついってさ」
「な〜んだ。そんな事か。」
「なんだとは、なんだよ。そら」
真央は、そらに八つ当たりするように言った。
「だってえ、昔の私のが、きつかったもの。しゃべり方。今も、お世辞にもいいとは、言えないけど、昔は、もっと凄かったわよ。てめー何言ってやがる。みたいね」
「そうだっけ?そら、ヤンキーみたいにしゃべってたっけ」
「そうよ。中学入る前から中2くらいまで。ヤンキーに憧れてね」
「言われてみたら、そうだったような」
真央は、生前の事を思いだしながら言った。
「その。言葉使い、いつ直したんだよ?」
「うーん。まあ、覚えてないな。真央みたいに、友達に言われて直しはじめたけど、なんか、気づいたら今の言葉使いになってた。結局、一緒にいる友達のしゃべり方が、うつったみたいでね」
「そうなんだ」
真央は、目から、鱗が落ちるってこの事なんだなと思った。
「最初は意識してれば、いいわよ。その内自然に、しゃべり方変わるから」
「そうだね」
真央は、未希や波奈のしゃべり方を真似するところから初めてみようと思った。




