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とある日曜日の昼間。中島中学近くの住宅街。
「 うひひ」
あからさまに怪しい笑い声を出しながら歩く少女 がいた。
表情もニコニコというよりはニヤニヤ
はっきり言って怪し過ぎる。絶対に関わってはいけない。
現に、愛犬と散歩してるおじいさんも、幼い我が子を連れたお父さんも、その少女から10メートル以上離れ、かつ目を合わさないように歩いてる。
そうやって、誰しもがニヤニヤしながら歩く少女から、離れて歩いてるにもかかわらず、ただ1人の少年だけが近づいていた。
「長谷川、 何 昼間から、ニヤニヤしながら歩いてんだ 。皆お前の事避けてるぞ」
ニヤニヤの少女 真央にそう話かけたのは、橋田だ。たまたま用事で、自宅から出てきた所、ニヤニヤ顔の真央に出くわした。そのままスルーしようかと思ったが、真央のニヤニヤの理由が知りたくて、つい声をかけてしまった。
「あー 本当だ、 いやー嬉しくてよ、ついな」
「 何があったんだよ?」
「 カーブのシバケンのサインボールが当たったんだよ。」
うひひと再び笑う真央の一言に、橋田は固まる。
カーブのシバケンのサインボールが当たっただと?
カーブというのは、この地元で人気のプロ野球チーム。正式名は、中島東堂カーブといい、シバケンこと柴田賢一投手は、ルックスとその実力で、カーブで一番人気の選手の事だ。
そのシバケンのサインボールが当たったというのだ。正直、羨まし過ぎる。
「 マジかよ 先週テレビで、視聴者プレゼントしてたやつか? 1名しか当たらないやつ」
「 そうなんだよ。当たるわけねーって思ったんだけど、おもいきって応募したら、当たったんだよ。」
「 ちょっと長谷川 見せろ」
「いーけど、あるの俺ん家だぜ」
「それでも、いいから見せろ なっ」
「 それなら、来るか うちの家」
「おう」
2人は、連れだって走っていく。 そんな、2人の姿を見てる怪しい2人組がいるとも知らず
「波奈さん見ましたか?」
「バッチリ見ましたよ 未希さん」
未希と波奈の2人は、偶然、 橋田と真央が会話してるのを発見し、今まで2人にみつからないよう、近くの塀に隠れて、観察してたのである。
「波奈 真央を誘って買い物に行くのは、また今度にしましょう」
「そうだね 邪魔しちゃ悪いし あーそれにしても、あの2人仲悪いのか良いのかわからないねー」
「そうね 今さっきの やり取りも男同士の友達にしか見えないし」
「だねー」
未希と波奈は、そんな会話をしながら目的地へ歩いていった。
その頃、真央と一緒に長谷川家に着いた橋田。
シバケンのサインボールを見せてもらえる事が嬉しくて、失念していたが、よくよく考えてみたら、こいつ女じゃねえか。
こいつの親にどやされないかな。橋田がそんな心配してる脇で、真央がドアを、開ける。
「ただいま 母さん 友達連れてきた」
「あらまあ、真央ちゃんお友達 連れてきたの」
ニコニコと話す桃子に 橋田は、自己紹介する
「俺、橋田渉っていいます。そのいきなりすみません」
「ごめんなさいね。どうせ、真央ちゃんがろくに考えずに、連れてきちゃったんでしょ?気にしなくていいから」
橋田の予想とは裏腹に、真央の母親の対応が、柔らかい事に拍子抜けしてしまう。真央との関係をネチネチ訊かれたり、嫌みの一つでも言われたらどうしよっかって思ってたのが、馬鹿馬鹿しい。
「お邪魔します。」
ペコリと頭を下げて橋田は、真央の後を追いかける。
「 真央ちゃんたら 自分が女の子って事忘れて、そりゃ困るわよね いきなり、女の子の家に行くの。 しかも お部屋に2人きり分かってるのかしら? あの橋田くんは、大丈夫そうだけど」
桃子は、1人呟きながら 2人にお菓子を持ってこうと準備する。
「 おまえの部屋すげーなカーブグッズだらけ」
「 ちっちゃい時からカーブのファンなんだよ
今 沢山カーブ ガールむけのグッズあるからなつい買っちゃうんだよ。」
部屋の隅には、東堂カーブの女性むけ応援グッズが、整頓されて置いてあり 壁には、シバケンのポスターが貼ってある。
――相当なファンだな、こりゃ。俺と話が合いそうだな。
「今日のコーデだってカーブのチームカラー入れてるし、髪は、カーブのシュシュだしよ」
真央は、自分の髪を指さす。
橋田は、改めて真央の服装を見る。上は白Tシャツ紺ののパーカーそして、カーブのチームカラー赤のスカートを履いてる。
髪は、いつもと違いサイドテールにしてカーブのシュシュでまとめてる。
「 ガチでファンだなお前!」
「うん」
ニコニコしながら言う真央に、橋田は、可愛いなと思うが、肝心の真央は そんな橋田の思いを知ってか知らずか
「 これが、例のサインボール すげーだろ?」
机から、シバケンのサインボールを出して 橋田に見せてる。
「すげーな 」
やっぱり、こいつは 見た目女 中身男だ。
子供みたいに、サインボールを自慢する姿を見て、橋田はそう思った。
2人で野球の話でもりあがる。この前の試合がどうだの。今年は優勝出来そうかどうかとか、
橋田は、気になってた事を指摘する。
「お前さ、スカートで体育座りすんなよ。少なくとも、男の前で」
「 あーまあ キュロットならいいかって思ってたけど やっぱりヤバい?」
「当たり前だ!」
橋田に怒鳴られて、真央は頬をポリポリかきながら
「今度から 気をつけるよ。」
「今度じゃなくて、今すぐ」
「はい」
真央が、正座すると、橋田は満足気に頷き
「素直でよろしい」
これだから、そらに怒られんだなと真央は、思った。
「じゃあな 」
「ああ、明日学校でな それと、気を付けろよ本当 男の前で無防備な格好するなよ。今日みたいに 男を家に連れてくなよ。お袋さんいたからいいけど」
「わかった」
本当に分かってんだろうかこいつ 橋田は、そう心配しつつ自分の家に帰った。
橋田が帰った後真央は、そらからたっぷり説教をくらってた。
「いーこと、あの橋田くんが、紳士だったからよかったけど、でないと、本当ヤバかったわよ」
「はい、反省してます。」
暫く、そらからガミガミ説教されていた真央だった。




