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「なんで、高橋くん こっちに引っ越してきたの?」
「好きな女の子のタイプは?」
休憩時間。クラスの女子に囲まれ、高橋くんは質問攻めにあっていた。
真央は、高橋くんのまわりに発生した女子タイフーンから逃れる為に、渉や未希の席まで避難していた。
「健人のやつも災難だなー、転校早々女子に囲まれるとは」
「呑気な事言ってるけど、助けてやらなくていいのかよ?なんか女子に囲まれるの慣れてなくて大変そうだぜ」
真央の指摘通り、高橋くんは、女子の扱いに困り、アワアワしていた。
「前の学校じゃ確か、身長の高さと目付きの悪さから女子から、恐がられてたらしいから、女子に慣れなくて当たり前かもな。でも、健人には、彼女いるはずだぞ」
「それ、教えてやればいいんじゃねえの?」
「甘いわよ。彼女の存在を知ったとこで、女子が諦めるわけないでしょ。その彼女が、前の学校にいるなら尚更!少しでもチャンスがあると思って、アタックする娘はするわよ」
真央の発言をずばっと、未希は否定した。
「そういう未希は、いかないよな。高橋くんの所に。最初騒いでたのに。」
「騒いでないわよ。イケメンだってとは、言ったけど。それに、行かないのはタイプじゃないからよ」
真央の言ったセリフに未希は、少し怒ったように言い返した。
真央は、ハイハイと適当な返事をしながら未希の怒りをやり過ごす。
チャイムが鳴ると同時に、高橋くんのまわりに発生していた、女子タイフーンもなくなる。高橋くんは疲れきった様子だが、表情はホッとしていた。
―――
放課後、部活のない真央は、一人で下校した。
少し先に高橋くんが一人で、帰ってる所を発見する。真央は高橋くんの側まで近寄ると、声をかける。
「よっ!」
真央の声に反応するも、高橋くんは、粗か様に残念そうな顔をする。
「……なんだ、長谷川さんか。」
「俺だと悪いわけ?」
「別に、悪くないよ。ただ、ちょっとな今の行動がミズキにソックリだったから。」
「ミズキ?誰。」
真央は、ニヤニヤと意地悪に質問する。
「彼女だよ。」
高橋くんは、決まり悪そうに答えた。
「ほう。渉の言った事は、本当だったのか。どんな娘なんだよ?」
ニヤニヤしながら話す真央を見ながら。
――こいつのおしりに悪魔の尻尾が、生えてるように見えるのは気のせいじゃないなと高橋くんは、思う。
「長谷川さん。どこか、男みたいだけどこういう恋愛の話になるとやっぱり普通の女子みたいだな。」
「そうかな。それよりさっき言ってたミズキって娘の事教えてくれよ」
「そうだな。少しだけ、長谷川さんに似てるかな。どこかしら男みたいだし、自分の事僕って言うし。」
「へぇ会ってみたいな」
「でも、長谷川さんみたいに、素直じゃないいわゆるツンデレだし。そのくせ、天然なとこあるし。まあ、そこが可愛いんだけど。本人に言ったら絶対に怒るけど」
「ほぉぉ。何気にノロケてますな。」
「のっノロケてない」
真央の意地悪なセリフを真っ赤な顔で否定する高橋くん。
「ハイハイ、そういう事にしときます」
真央は、ニヤニヤと意地悪な笑顔で言った。
「じゃな、俺ここだから。」
「ああ、またな。」
二人が別れようとした時、女の子が駆け寄る。身長が少し高めで、茶色い髪を、ポニーテールと言うには、やや低い位置で結んでいる女の子だ。
「健人くん」
「ミズキ、なんでここにいるんだ。」
――高橋くんが、ミズキって呼んだって事は、この娘がミズキか。会いにきたのか?高橋くんに。邪魔しちゃ悪いな。
真央は、そう思い、さっさっと退散する。
「なんでって、僕もわかんないよ。学校から帰ったら僕の荷物、勝手にまとめられてるし。父さんは、ついてきなさいって言うだけだし。姉さんは、父さんに怒ってばかりで理由きけないし、車に乗っけられて、気づいたら、このお家に連れてこられたんだよ」
ミズキって娘と高橋くんの会話を聞いた真央は、即座に回れ右をしてダダっと駆け寄る。
「ごめん。二人の会話聞こえたけど、このお家ってここの事か。」
真央の勢いに押されて、ミズキはこっくりと頷く。
「どういう事だ母さん。何も聞いてないぞ。とにかく、二人とも家に入って。」
「「ええ!ちょっと待って。」」
ミズキと高橋くんが同時に抗議の声をあげるが、真央は無視して二人を引っ張りいれた。
なんか、むちゃくちゃな事が起きる。真央はそう思った。




