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三が日も過ぎ、あと少しで、3学期が始まろうとしていたある日、真央は、未希の家で遊んだ帰り道、背の高い目付きの悪い少年に話しかけられた。
「あの、中島中学って、どこかわかりますか?」
見た目とは裏腹に、かなり礼儀正しいようだ。私服で歩いていたなら、小学生に間違われ、なめた態度をとられる事が、多い真央だが、この少年は、真央に礼儀正しい態度で、接してくれる。
「えっここから、まっすぐ行ったとこですけど」
「そっか、ありがとうございます。」
少年は、丁寧に礼を言って去って行く。
「デカイ奴だな」
その時の真央は、そんな感想をもらしただけだった。
数日後。三学期の始業式の朝。真央は、波奈に話かけられた。
「真央。休み中は、ラブラブしまくってた?」
「なんだよ。ラブラブしまくるって。まあいいや、普通だったよ。」
「えーウソだ。橋田の奴。真央からもらったミサンガ自慢しまくってたよ。腕に着けると没収されるから家の鍵に付けてたけど」
波奈からそんな話を聞かされて、黙ってても、バレるだろうから、素直にお正月の事を話す。
「なんだー結局ラブラブしてたんじゃない。ねぇ、そのミサンガあるの?」
「あるぜ。渉と一緒で、家の鍵につけてるけど」
鞄のポッケから家の鍵を取り出して、見せる。
「もう。ラブラブね。全く近くにいるだけで、火傷しそうなくらい熱いわね」
波奈は、よくわからない事を言うと自分の席に戻った。
用事で、職員室に行っていた未希が、教室に戻るなり、興奮した声で、話す。
「ねぇねぇ、ニュース。うちのクラスに転校生が来るんだって、しかも、イケメンらしいよ!」
「本当?」
クラスの女子は、未希のまわりに集まると、転校生の話で盛り上がりはじめた。
しばらくして、鈴木先生が、やってきた。
「お早うございます。もう、噂になってるみたいだけど、今日から転校生がきます。入ってきて。」
鈴木先生が、入室を促すと、背の高い学ラン姿の少年が入ってくる。
鈴木先生は、黒板に名前を書くと転校生を紹介する。
「高橋 健人くんです。隣の三城中学からきたそうです。それでは、高橋くん自己紹介をお願いします。」
鈴木先生にそう言われて、高橋くんは、自己紹介する。
「家の事情で、隣の学区から引っ越して来ました。高橋健人です。特技は、柔道です。よろしく。」
「じゃ、席は長谷川さんの隣ね。長谷川さんよろしく。」
鈴木先生は、そう言うと教室から出ていった。
「よろしく」
「ども」
真央は、それだけ言って即座に高橋くんから目をそらす。
――昨日、道聞いてきた奴じゃねーか!なんで、よりによって、うちのクラスに転校生してくんだよ。
真央が、心の中で叫んでると高橋くんが真央の顔を見て思いだしたようで。
「昨日、道教えてくれた子だよな?」
「人違いじゃないかな」
真央は、誤魔化すが、高橋くんはじいっと真央を見て。
「いや、人違いじゃない。昨日もツインテールにしてたし」
「んぎゃーもう、そうだよ。俺だよ。」
「やっぱり、昨日は、ありがとな。助かったよ。」
「そろそろ、俺に話かけんの辞めてくんね。高橋くんを殺しかねん奴がいるから」
渉の方を示すが、肝心の渉は、高橋くんを睨んだりしてない。それどころか、ニヤニヤと見守っている。
「渉。何ニヤニヤしてんだ?俺が、他の男と親しく話てるんだぞ。」
――焼きもち焼くかとヒヤヒヤしてるのにこっちは、なんなんだ、あの態度は!
渉の態度に呆れつつ、怒ってみせる。
「だって、そいつ俺の従兄弟だもん。なっ健人」
「そうだよ。それに、長谷川さんの事は、ウザイくらい渉から話聞いてるからな、気にしなくて大丈夫だから。」
二人の話を聞いてその場にへなへなと座りこむ真央。
「なんだよ。心配して損したじゃねーか。そんなら、そうと早く言ってくれ。」
「ごめん。ごめん。悪気は、ないんだ。許してくれ」
笑いながら高橋くんは、真央に謝る。
「まっいいよ。改めて、よろしく。」
「ああ。よろしく。」
――まあ、理由が、わかってよかったけど。ちょっとくらい焼きもちやいてくれてもいいのに
少しだけ、不満に思った真央だった。




