24
お正月まで、あと4日をきった12月28日の午後。自分の部屋でくつろいでた真央に、そらがある事を問いかけた。
「ねぇ、そういえばあんた。渉くんにプレゼントは、ミサンガ作るって言ってたけど、できたの?」
ポテチを食べながら、漫画を読んでいた真央は、そらの問いかけに、ギクリと、体を震わす。
そらは、真央の反応を見逃さない。
「その様子じゃ、全然出来てないわね?」
「 途中まで、奮闘したんだけど上手くできなくて」
真央は、素直に白状し机の引き出しから、作りかけのミサンガを出して見せる。
「何これ?縄?」
そらが縄と、言いたくなるのは無理もない。
作りかけのミサンガは、刺繍糸があちこちから飛び出ており、編み目もぐちゃぐちゃだ。
「本に書いてある通りにやってるけど、難しいんだよ」
真央は、買ってきた本を机の上から取ってみせる。
「ちょっと、この本見せてね。」
そらは、真央が机の上置いた本を器用に前足でページを捲っていく。
――こんなの無理に決まってるじゃない!
少し前のそらなら、怒鳴って、本を投げつけてるところだが、今は少し成長したのか、違う事を考えてる。
―-仕方ないな。真央の為だ。一肌脱ぎますか。……私の時間も少なくなってきてるしね。
「これ、超がつく程不器用な真央には、難しい物ばっかり。仕方ない私が、一番簡単な方法を教えてあげる。」
そらは、机の上に座ると、
「刺繍糸まだあるわよね?」
「あるよ。手芸屋の人に、勧められて買ったのが」
真央が、刺繍糸を出すとそらは、刺繍糸を前足で示しながら説明する。
「 まず、三色選んで、刺繍糸は、二本くらいずつ取ってね。」
「 選んだ、次はどうしたらいい?」
「次はね。刺繍糸の端から10センチのところでね。結んで一つに、出来たら結び目をセロテープで、固定するの 」
そらは、丁寧にミサンガの作り方を教える。
「 三つ編みで作ればよかったのかよ。こんな事なら、最初からそらに相談すればよかったな」
出来上がったミサンガを見ながら真央は、自分の無駄な行動を反省した。
「でも、あげる人の事考えながらあれこれ用意するの楽しかったでしょ?」
「まあな。行った事のない手芸屋だったけど、渉の事考えながら刺繍糸とか見るの結構楽しかったよ。」
嬉しそうに真央は、言った。
「 ところでなんで、ミサンガなの?しかも、手作りで不器用なのに。ミサンガが、どういう物かわかってるの?」
「わかってるよ。切れたら願いが叶うんだっけ。買ってもいいけど、それも面白くないかなって思ったんだよ。どうせなら、渉の事考えながら作るほうがいいじゃん。」
頬をかきながら話す真央。そらは、机から真央の肩へ登る。
「なんだよ。いきなり重いから、どけよ」
「だって、どんどん真央が私の知ってる真央じゃなくなるんだもん。寂しいじゃない。今日ぐらい肩にのせなさいよ。」
そらは、離れる気はないらしく真央の肩でくつろいでた。
「しょうがねぇな、今日だけだぞ」
真央は、そらを降ろすのを諦めてそらが飽きるまで、肩にのせていた。




