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年の瀬が押し迫ったある日。大掃除や買い出しで、世間は忙しい中、真央は、暇をもて余していた。
「やる事なさすぎて、暇だ。テレビでも観るか」
独り言を言いながら、真央はリビングのこたつに入ると、リモコンでテレビのスイッチをつける。
「 お正月&誕生日は、渉と過ごせるぜって張り切って、宿題や部屋の大掃除済ませたはいいけど、今度は、やる事なさすぎて暇になるし、母さんは、そら連れてどっか行くし」
一人文句を言ったあと、コタツの上の篭から、ミカンを取り出す。
前に観た特番の再放送をぼんやり観ながら、ミカンを食べた。
「 今こうやって、ミカン食べながらテレビ観てる暇な奴って、俺だけじゃね?かと言ってやる事ねえし」
ミカンを食べ終えると、ティッシュに皮をくるんでからゴミ箱に捨てると、ゴロリと寝転ぶ。しばらく、ゴロゴロしていた。
――このまま、コタツと同化しそう。
つか、いっそのこと、コタツ同化して、カタツムリならぬ、コタツムリにでもなるか?
と考えたあたりで、真央は叫んだ。
「あー!このまま何もしないと頭が、バカになる。コタツムリになるとかおバカな事をいう事になる。起きて何かしよう」
ムクリと起き上がるも、やりたい事がみつからない。
真央が、はあっとため息をつくと、テーブルに置いていた携帯電話が、ピピピと鳴る。
波奈からメールだ。携帯電話を操作してメールを開くと、絵文字を目一杯使ったハイテンションなメールで一言。
「 今から、ハワイへ行ってきます。お土産楽しみにしててね。はいはい、お土産楽しみしてるよーっと。送信 」
ポチっと、ボタンを押してメールを返信する。
携帯電話をテーブルに置くと、もう一度ため息をつく。
「未希は、確か沖縄に行くって言ってたよな。渉は、大掃除で忙しい。俺だけか暇なの」
真央は、ふと、窓の外を見る。よく晴れていた。
「思ったより、暖かそうだな。晴れてるし暇だから、散歩でもしようかな」
そうと決めたら、部屋へ行ってそれまで、着ていたフリースのルームウェアから白いセーターと紺のキュロットに着替える。
携帯電話と財布を小さなショルダーバッグに入れる。
散歩だけのつもりだが、桃子から急なおつかいを頼まれた時の為に一応財布を持って行く。
「 やっぱり、暖かいな。本当に12月と思えない。コートなしなのに、全然寒くないし」
思わず、鼻歌を歌ってしまう。そのくらい暖かくて気持ちいいのだ。
「どこまで、行こうかな?久しぶりに児童公園のあたりまで行ってみるかな」
真央は、行き先を決めると、歩くスピードをあげた。
児童公園は、長谷川家から歩いて20分程で着く。
真央も小学生の頃までは、そらや友達と遊びに来ていた。
てくてく歩きながら真央は、まわりを眺めていた。
「この辺も変わったよな。ここら社宅だったよな。」
久しぶりに来た児童公園の周辺は、昔と雰囲気が変わっていた。
昔は、ある企業の社宅があったが、今はその社宅はなくなり、集合住宅の替わりにお洒落な一戸建てが並ぶ住宅街になっている。
児童公園も、住宅街にあわせて改装されており昔と雰囲気が、変わって遊具が可愛い物になっていた。
「へぇ、昔と違って綺麗になったんだ。昔は、塗装がはげたり、錆びたりしてて見た目も悪かったし、結構ボロい遊具もあって怪我しそうだったけどな」
真央は、公園に入り遊具を見て回る。
年末のせいか、遊んでる子供は、皆無である。
真央は、ブランコの前に立ち止まり昔やった遊びを思い出す。
「そういや、ブランコを勢いよくこいでそっから飛び降りるなんて、危険な遊びしてたな。今考えたら、よく大怪我しなかったよな」
真央は、思い出したら呆れるくらいバカな事してなと思った。
しばらくブランコを見てたら、急に乗ってみたくなり、真央は、あたりをキョロキョロと見渡す。
「よし、誰も見てないな。……さすがに、立ってこぐのはヤバいけど、座ってこぐのは、いいよな?うん、いい。という訳で、俺は、ブランコに乗る。」
一人で質問して応答するというよくわからない事をしてから真央はブランコに乗った。
最初は、遠慮がちに、小さくキイキイと揺らしていたが、そのうち楽しくなって本気でこぎ始めた。
しばらく、ブランコで遊んでたら、パシャリとシャッター音が聞こえたので、振り向いた。
「 真央のベストショットをゲット」
「わっ渉いつからいたんだよ。」
真央は、あわててブランコから飛び降りると渉のもとに駆け寄る。
「真央が変な一人芝居してた所から」
「って、最初からかよ。見てたんなら声かけりゃいいだろ!」
真央は、真っ赤な顔して怒る。
「だって、それじゃ、真央のベストショット狙えないだろ?いつも、頼んでも撮らせてくれないだろ写真。だから、今がシャッターチャンスかなっておかげで、いい写真撮れたけど。」
渉は、携帯電話を見てニヤニヤしてる。
「 その写真見せろよ。変な顔じゃねえよな? 変な顔撮ってたら俺許さないぞ。」
「えーどうしよかな?」
渉は、意地悪く笑って真央を見ている。
「いいから、見・せ・ろ 」
真央が最後の三文字を一個ずつ切っ言てうので、渉はわざとらしくため息をついて、
「しょうがねぇな、ほら」
渉が見せた携帯電話の写真を見る。
そこに写るのは、満面の笑みの真央だった。
「 どうよ?」
渉のドヤ顔に真央は、呆れながらも。
「うん。変な顔じゃねえよ。ちゃんと撮れてる。」
「だろー!いや、可愛い真央が撮れてよかったよ。これプリントして俺の宝物にしよっと」
「 しなくていい。これよりもっと可愛い写真撮らせてやるよ。」
真央は、恥ずかしそうに言った。
「そう?そんな事言ってたら、本気にするぞ俺。ところで、真央はなんでそんなに真っ赤なのかな?」
渉は、再び意地悪く質問する。
「 寒いからだよ!悪いか!」
真央は怒鳴る。
「こんなに、暖かいのに?」
「んにゃーうるさい。」
からかう渉を真央は、拳を振り上げて追いかけまわした。




