19
授業が終わり、 真央は未希と波奈と帰る為、玄関へむかう途中、 知らない男子生徒から声をかけられた。
「1組1組の長谷川さんだよね?」
「はあ、そうです。 俺に何か用ですか?」
真央は、声をかけてきた男子生徒の名札を見る。
名札には、名前の下に、各学年ごとに違う色のラインがひいてある。 1年は黄色、 2年生は緑、3年生は紺色である。
目の前の男子生徒は緑色、2年だ。生田と書いてある。
男子生徒は、もじもじと落ち着かない様子だ。
「 あのさ、ちょっと話があるんだけど、今いいかな?」
「 はあ いいですよ」
――また告白かな。ちょっとうんざりした気分になりつつ、男子生徒について行く。テンプレ通りというか、予想通り体育館の裏だ。
「 話ってなんですか?」
「 その前に 自己紹介させてよ。僕生田 優真」
「 で、生田先輩は 俺に話って、なんです?」
正直、面倒だから、相手に嫌われるよう巣の態度で接してみる。男みたいな態度なら、相手がひいてくれるだろうと思っての、真央なりの作戦なのだけど、イマイチ効果はないみたいだ。
というか、恋は盲目とはよく言ったもので、男子生徒は、引くどころか、この態度すら、可愛いと思ってるようだ。
「 あー えーと 僕と付き合ってください。お願いします」
入学したての小学生のような、お辞儀のオマケ付のの告白だ。
「 すみません、俺 彼氏がいるんです。ごめんなさい」
真央は、0・1秒で即答する。振るのに、躊躇いはない。だって、渉がいるんだもん。それに一瞬でも、相手に期待をさせるというのは、酷な話だし失礼だ。
まあ告白に限らず、yesかNOか、さっさとはっきりさせるというのは、真央のポリシーでもあるからなのだけど。
「 そっか 」
「 本当にごめんなさい」
「いや いいんだ」
生田先輩は、肩を落として 去っていった。
―――
真央は、家に帰りながら 一体何人目だと思い 手で数える。
「今月に入って13人目だ。 なんでだよ。……男だった頃 、女子から告白なんかされた事ねーぞ もちろん、渉がいるから 駄目だけど」
「 何、1人で ブツブツ言ってるの ?」
「わぁ なんだ、圭かよ ビックリするだろ」
後ろから 話しかけてきた 信田 圭に真央は つい そう言ってしまう。圭は、苦笑いしながら謝ってくる。
「 ごめん 脅かすつもりは、なかったんだ
それより、さっき ブツブツ言ってたのって 告白された人数?」
「 うん。なんで俺に告るかな?他に、女子いるだろ」
「 真央は 知らないの? 最近 男子に 真央人気なんだよ 部活の先輩が言ってたよ 小さくてかわいいのに俺っ子 そこが いいって」
「 はあ?なんだよ それ しかも、小さいって 、入学から半年たっても 、身長が横ばいの俺には悪口だ」
「真央、いつの間にかクラスで、一番小さい女子になったもんね」
クスクス笑う圭の側で、真央は、大げさに、嘆いてみせる。
「 俺は、どうせちびだよ」
真央が、そう言ったところで、クスクス笑うのをやめた圭は、急に、まわりをキョロキョロと見渡して、切羽つまった顔で、真央に進言する。
「 真央、暫く橋田と一緒に 行動しなさい いいわね」
「なんで?」
「 なんでも! いい? 橋田じゃなくても、いいから、とにかく誰かと一緒に行動しないさい! いいわね!」
「 ああ、わかった」
圭の勢いに、真央は、それ以上追及せず、返事した。
圭の言った意味は、翌日理解する事になる。
「お早う 渉」
いつものように登校すると玄関で、渉に会うと挨拶して 一緒に教室へ行く。
教室に入るなり 圭に呼ばれる。
「真央 私の言った通りにしてくれてるんだ!」
「うん まあ」
「 あのね 真央、 こんな奴に出会って 、話しかけてきても 無視していーからね」
1枚の写真を見せてくる。メガネをかけた少年が写ってる。
「誰 この人?」
「名前 知らなくていい 変態ナルシストの危険人物って事だけ知ってくれてたいいから」
「 とりあえず、無視したらいいんだな?」
「 うん もう危険人物だから。近寄らないでね」
圭は、念押して真央の側から離れていく。
――ああやって、丁寧に警告されちゃ、昨日言われた通りにしてた方がいいな。
その日は、移動教室の時は、渉と一緒に移動し、普段1人で行くトイレも、未希や波奈と一緒に行くようにした。
しかし、放課後は部活があるため、終わるまで、真央は渉と別行動である。
「じゃ 今日は、終わりよ 気をつけて帰ってね」
部長がそう言うと、それぞれ片付けて帰る支度をする。
真央は、美術室を出て、吹奏楽部の部室をめざそうとした時、いきなり手をつかまれる。
「 長谷川さん いやーやっと 二人きりになれるよ。いっつも 誰かと一緒だったね今日は 誰かの入れ知恵なんだろうけどね」
真央は、相手を見る目の前には、昼間圭から見せられた写真に写っていたメガネ少年がいた。
「離してください! 俺 今から 友達のとこ行くんです」
「知ってるよ。吹奏楽部の橋田渉だろ?
しかも友達じゃなくて 彼氏だろ?」
「知ってんなら 放せよ 俺は、渉のとこ行くんだ」
「いやだ、あんな奴より君には、僕がふさわしい そうに 決まってる だから一緒に帰ろう」
――なんなんだよ、こいつ!痩せてる癖に、むちゃくちゃ力強いじゃないか!
ガッチリと握られた手首は、真央が引放そうにも、離せない。
「意味わかんねーよ。つうか放せ」
真央は、大声を出し、つかまれた手首をブンブン振り回して暴れてると、冷え冷えとした渉の声がした。
「 あんた何 人の彼女に手をだしてんすか?それに いやがってんだ!放せよ!」
「駄目だ」
「 いやだってば、」
3人がすったもんだしてると、メガネ少年の頭をスパーンとノートで叩く少女が現れた。
「 なにやってんの 兄さん 」
「圭」「信田」
真央と渉が叫ぶ。どうもこのメガネ少年は、圭のお兄さんらしい。
「 ごめんね 二人とも。この変態ナルシストは私が、説教しとから」
圭は、「なにふざけた事してくれてんのよ!馬鹿兄貴!」と言いながら、兄をズルズルと引きずっていく。
「 俺らも帰りますか 」
「うん あーもうどうなるかと思ったよ 助かったよ 。来てくれてありがとうな」
真央は、素直にお礼を言った。
「いや どういたしまして ね お返しに キスくらい してくれても いいんじゃない?」
「 調子に乗るなバカ」
ペンっと、真央は、渉の頭を叩いたのだった。




