17
10月になっても、いつまで夏のように暑かった先週と違い、 今週は月曜日から寒くなってきた。
その温度差のせいか、 真央のまわりでも風邪をひく人が何人かいた。
「 お早う 真央 」
「 はよー」
いつも通り、未希と波奈と登校する真央
だが 、声がかすれて元気がないように見えた。心配した波奈が声をかける。
「 真央、声かすれてる 風邪?」
「 うん 一応薬飲んだし、 大丈夫だろ」
「大丈夫って言うけど 、この前 生理痛 酷いのに 、保健室 あたしと未希に強制的に連れていかれるまで、我慢してた人誰だっけ?」
――波奈のやつ痛いところつくなー、ポワンとしてるかと思えば、意外としっかりしてんだもんなー。さすがは、三人姉妹の長女だ。
真央は、そう考えながら答えた。
「 気をつけるよ」
「 ひどくなる前に 、いいなさいよ。」
「わかったよ 」
真央は、未希にも釘を刺され、ちょっと情けない気分になった。
学校に着くと 下駄箱で、同じ美術部の先輩に呼ばれる。
「 長谷川 さん 頼んでたやつは、出来てる?」
「 はい、出来てます。例のやつですよね?」
真央は、スクールバックから一枚の紙を取りだし、手渡す。
「 ありがとー これで 締め切りに間に合うわ助かった」
先輩は去っていくのと、入れ違いで、渉がやってきた。
「 渉 お早う 」
いつも通り、登校してきた渉に、真央は、挨拶するが、渉の顔はいつになく険しい。
「 さっきの 先輩か?」
「うん あの人 保健委員なんだけど保健室の先生に 、保健だよりのイラスト頼まれてたの 忘れてたんだって、3年生で 塾とか忙しくて、今日までなんだけど、間に合いそうにないからって 、昨日頼まれて描いたんだよ」
「……お前 確か昨日 桃子さんが 締め切り前で 家の事 全然出来てないって言ってなかったけ?」
「 うん 部活なかったけど、帰って掃除とか、洗濯とか夕食の準備したり、 宿題やら 復習までしてからイラスト描いてたら 寝るの11時過ぎたけど、朝5時に起きたからちょっと寝不足なんだよ」
「なんで 朝5時に起きるんだ?」
「 母さんの昼 作って置いとかねーと カップ麺ですませちゃうんだよ。 それだと体に 悪いかなって思って。風邪ひいたのも そのせいかな?」
渉は、真央の話を聞いてイラついて 真央を引っ張って歩く。
「 痛い なんすんだよ!」
「いーから 来い 」
ずんずん歩いて ある場所まで 真央を連れていく。
「保健室?平気だよ。」
「 うるせ !ゆでた タコみたいに赤い顔してるやつの言うセリフじゃないだろうが!」
保健室の扉を乱暴にあける。
「 先生 このバカの熱測って 」
「あらま まーた長谷川さん 調子悪いのに無理したの?」
保健室の先生に真央は、そう言われ 渉から睨まれる。
さすがの、真央も観念して 大人しく体温を測る。
「 38.9℃ よくこんな熱で 学校へ来たわね」
「 だるいの気のせいかと思って」
「お前な だるいを気のせいにするな」
渉は、思わず怒鳴る。真央は、しゅんとなった。
「 ごめん」
「まあまあ 橋田くんも怒らないで長谷川さん このまま帰りなさい。担任の先生には 私から言っとくからね」
「 はい」
「悪かったよ 怒鳴って でもな これだけは、言っとくぞ 無理な時は、人に頼まれても引き受けるな 体調悪い時は、すぐ休めよ」
「わかった」
素直に真央は頷き、鞄を持って保健室を出ていく
「大丈夫?帰れそう?」
「大丈夫です。」
先生に そう言って真央は、家に帰った。
―――
放課後。未希と波奈にお見舞いにいけと命令され 真央の家まできた渉は、 どうしようかと 家の前で 動物園の熊のごとくうろうろしていた。
「あれー 橋田くん?もしかして、真央ちゃんの お見舞いに来てくれたの?」
玄関のドアを開けて、桃子が、そう声をかけてくる。
「 えーと、はい 」
笑ってごまかす渉 桃子は、渉を家に招き入れる。
「 今、真央ちゃん寝てるけど 少し、顔みてく?」
「えっ?」
「 顔みたら 安心するでしょ?」
桃子に言われ 内心 心配だった渉は、素直に桃子の言葉に甘える事にした。
「 失礼します。」
そっと、真央の部屋に入ると、窓際のベッドに入って眠る真央がいた。
いつも、ツインテールに結んでる髪がおろされた姿に、思わずドキリとするが 渉は頭をふって一瞬わいた|邪な邪念を振り払う。
「よく寝てるな」
「 渉」
渉に呼びかけてきたが、 んにゃんにゃ言うだけで、何も言わない。
「寝言か 帰るか」
渉が 帰ろうとすると、タイミングよく、
真央の寝言を言ってきた。
「渉 大好きだぞ」
そう言って、真央は寝返りをうった。
「 俺もだよ」
渉は、そう言って頭を撫でやった。すると心なしか 真央は、嬉しそうな顔で、すやすやと寝息をたてていた。




