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クラスマッチの翌日の朝、真央は、学校に行く途中、未希と波奈に、渉に告白したことを報告した。
「 「よかったね。」」
2人同時に そう言って喜んでくれた。
真央は、渉の事を報告出来て良かったと思った。 話題を切り替えて、昨日のドラマの話でも振ろうかと思ったら、未希と波奈が、新しいおもちゃを与えてもらった子供のような、眼差しで真央を見つめてる。
特に波奈は、恋ばなが大好きだ。根掘り葉掘り、訊くつもりらしい。
「 ねっ夏休みは、2人でどっか行く予定とかあるの?」
「 それがね ほとんど、会えません。渉、吹奏楽部だから 、コンクールの練習や体育祭の練習で忙しいんだと。 昨日メールしたとき、そう書いてありました」
あううと、子犬のように項垂れる真央。
未希と波奈には、真央の頭とお尻にイヌミミとしっぽが生えてるように、見える。そのイヌミミとしっぽが、垂れて、きゅ~ん。と鳴き声さえ発してもおかしくないくらい、真央は凹んでいるのだ。
未希は、フォローするように、言う。
「 でも、ほら、期末テスト前だから 一緒に 勉強するとかは?」
「それも、無理 。渉、お兄さんに、勉強みてもらうんだって、期末テスト終わるまで、学校以外では、会わないって言われた」
下がっていた頭が、さらに下がり、あうう、あううと、唸りを出す始末だ。
未希は、波奈に、「ますます、落ち込ませてどうすんの!」とツッコミを入れらりていた。
未希に変わって、波奈が質問した。
「 あっそういえば、期末テスト終わった翌日 花火大会があるじゃん それ、誘えば?」
「その日は、俺が予定あるの 。間に合うか怪しいのだ」
もはや 打つ手なしと未希と波奈は、ため息をつき、この話題からはなれたのだった。
―――
期末テストが終わった翌日の土曜日。
「真央ちゃん 早く早く 急いで」
「待ってよ、母さん このサンダル走りにくいんだから」
「 そんな事言って、花火大会はじまっちゃう」
桃子に急かされ 家まで走るが 、シックな紺のワンピースにサンダルという服装の真央は、走るに走れない。
桃子もスーツにパンプスを履いてるのに、真央より早く走ってる。
真央は、桃子と一緒に 親戚の家に用事で行ってたが 、予定より早く帰れたので、花火大会に行けそうだからと、桃子に急かされてる。
「 うりゃあ」
家に駆け込むなり真央は、そんな掛け声と共に、サンダルを脱ぎ捨てる。
「真央ちゃん、女の子がそんな事しちゃ駄目だと思うの。 急いでても」
真央は、桃子の注意を聞かずダッシュで、自室へあるものを取りに行く。
真央は、自室から今度は、浴室へ猛ダッシュする。
「 さっさと、着替えないと、間に合わない」
ワンピースごと キャミソールを脱ぎ捨て 、ブラやパンツもポイッと篭へほうりこむ。
走ってかいた汗をシャワーで流し、バスタオルで、しゃっしゃっと体を拭き新しい、ブラとパンツにキャミソールを着る。
その上に、水色に赤い金魚が描かれた、甚平を着る。
「 あとは、髪」
ドライヤーで乾かして、いつも通りツインテールにする。
「真央ちゃん 髪型変えたら?」
桃子が、ツインテールをほどいてしまう。
「時間が、なからこれしかできないけど」
和風のデザインのヘアクリップで、髪を止めてくれた。
ハーフアップ と呼ばれる髪型で、後ろのほう髪がおりてるのが、気になるが せっかく桃子が、やってくれたので我慢する。
「行ってきます。」
真央は、携帯と財布を入れた 小さなカゴバッグ1つ持ってでた。
花火大会の会場までは、歩いて20分ほど、中島川の周辺で行われる。
渉に連絡するため携帯電話にかける。
「もしもし、渉?今どこ」
「 ここ」
「わあ 脅かすなよ」
真央が 振り返ると、赤いTシャツと黒いハーフパンツというラフな服装の渉が、いた。
「 最初、いつもと髪型違うから誰かと思ったけど、やっぱり真央だった。甚平来てくるやつ あんまりいねぇから」
「あー 本当は、浴衣がいいんだろうけどな 時間なかったから」
「へぇ 浴衣みてみたいな。」
「今度な 」
2人は、花火が上がるまで、屋台をまわり買い食いする。
焼きそば、たこ焼き、わたあめと屋台を制覇していく。途中、真央は、渉から「食いすぎじゃね?」と指摘受けるも、「平気」と返した。ちなみに、この人、いくら食べても、体型変わんないという羨ましい体質なんで、食べ過ぎても、気にしないでください。
午後7時半。辺りが暗くなり、花火が、上がり始めると橋の欄干に寄りかかり花火を見る。
「すっげー 綺麗 やっぱ 花火は、いいな 手でもってするのもいいけど でも、手持ってすんの流石に子どもっぽいかな?」
「いいんじゃね?今度するか 2人で」
「えー2人で、さみしいくないか?せめて、何人かよぼうぜ」
「クラスのやつら?」
「いーなそれ」
2人は、花火を見ながらそんな会話をかわした。
花火大会も終わり、2人は、人混みの中を移動する。
「今日、これてよかった。」
「真央」
「何 ?」
「手つなご」
「いーよ」
恥ずかしいなと、真央は、思いつつ渉と、手をつないだ。




