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「 そこ、ねらぇ」
「ボールに当たるぞ 動きまわれ!」
7月の初め中島中学のグランドでは、クラスマッチが、行われていた。
競技はドッジボール 。しかも、使用するボールは、バレーボールだ。
「バレーボールでドッジボールするのは、どうかと思うよな。 当たるとめちゃくちゃ痛いし。」
「 だよね」
真央は、コートの外で、よそのクラスの試合を見ながら、仲の良い女子と会話してた。
未希と波奈は、別のコートに行って隣のクラスのイケメンを見たいとかで、そっちに行っている。
一緒に話してる女子生徒の名前は、信田圭髪をショートカットにした活発な少女である。
性格がサバサバしていて皆から好かれてる。
「それにしても、長谷川が、あんなに活躍するとは、思わなかった 体育もうちょい 本気だしなよ。」
「今、陸上競技とマット運動しかやってないじゃん 両方キライなんだよ。バスケとかバレーとかのが、燃える。」
「なるほど、けど そんなに、球技好きなら バスケかバレー部に、入ればよかったじゃん」
「入りたかったけど、大会とかで練習遅くなるだろ?だったらさ 母さんが締め切り前とかになったら、家事出来ないから困るんだよ。美術部なら 週3回だし 絵かくの好きだしな」
「 そっか、変な事言ったね。ごめん」
「別に、謝る事じゃねーよ 次俺らじゃん、行こうぜ。」
真央は、そう言って圭を促す。
コートへ入ると、真央は、外野へまわる。 試合がスタートすると、クラスメイトの激が飛ぶ。
男子達が、初戦敗退したため、女子達は、なにがなんでも、一年女子の部の優勝は、もぎとったると、気合いが入りまくっている。
「いけー長谷川 当てろ!」
「任せとけ、うりゃあ」
敵の内野へ向けて勢いよく、真央は、ボールを投げる。
けれど、かわされ、逆に 真央のクラスの内野へ投げられる。
かわしきれなかった 波奈に当たる。
「ごめーん、当たっちゃったよ」
「俺が、うまく投げてりゃよかったんだよ」
外野に出てきた波奈とそんな会話を交わし、真央は、再び戦闘モードへと、戻っていく。
真央は、獲物を狙う鷹のように、ボールを視線で追う。
「よし、次こそ!うらあ」
真央は、ボールをなげる今度こそ当たった。
当たった人間が、内野から外野に出ていく。
真央は、内野に入ってくと、さっきのお返しとばかりに、しつこく狙われる。
持ち前の運動神経を生かして逃げまくる。
「あーもう、チョロチョロとムカつく」
怒り狂った、相手チームの外野の選手がおもいっきり投げたボールを避ける真央だが、足がもつれ野球のスライディングのように、転ぶ。
「真央 」「長谷川」
審判に、タイムをかけて、未希と圭が駆け寄る。
「大丈夫?」
「いってー、膝 擦りむけた。」
真央は、むくりと起きて膝をみせる。
派手に転んだ為か、真央の膝はずるむけになり、かなり出血していた。
「あんた、すぐ、保健室へ行きな!」
「というわけで、橋田 真央を連れてけ」
「そりゃもちろん」
コートの外から呼ばれた橋田は、真央に手を貸そうとする。
「ひっ1人で立てる」
真央は、すくっと立ち上がりスタスタと歩いて、保健室へ向かう。
橋田も後を追う 真央はついてくんなと、言うのを我慢した。
「保健室行く前に、膝洗っとけ」
「うん」
橋田は真央の手を引いて、水道まで連れてく。手を離せといつもなら、怒鳴るとこだが、真央は、足痛いから、こいつの手を借りるのは当然だ。
真央は、そうやって、自分の気持ちをごまかし歩く。
「いったー しみる」
水道からジャーッと流れ出るお水で、傷についていた砂やゴミが、落ちていく。びしゃびしゃに、なった足どうしよっかと、思っていたら、橋田がハンカチを貸してくた。
「ほれ、ハンカチ」
橋田がハンカチを貸してくる。
「ありがと 渉」
ボソッとお礼を、言った真央に 橋田は、
「今 なんて言った?」
「ありがと 渉 。これで、いいだろ。何度も言わせるな」
「俺は、何度も聞きいの」
「下の名前ならいつでも呼んでやるよ。だって俺、お前の事好きなんだよ。悪いか!」
真央は、思わず言って後悔する。
――うわっ勢いで、告白しちゃった。どーしーよー。
「えとな」
「えーと なんて言いました?真央さん」
微妙な空気が2人の間に流れた。




