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◆6月―都市対抗の予選が行われます。

6月のお話です。

この「前書き」を書いているのも6月です。

現在は各地で、都市対抗の代表チームが続々と決まっています。


5月のお話の前書きで、都市対抗の予選の形式について、地区によって異なるというふうに書きました。

1次予選がクラブチームによって行われ、1次予選の上位のチームと企業チームが2次予選に出場となる地区もあります。

都市対抗の予選は、1次と2次に分かれている。

1次予選で上位に進んだチームが、2次予選に出場する。


ぼくのチームが所属する地区は、1次予選はクラブチームが対象で、企業チームは出場が免除される。


都市対抗に出場できるかどうかで、社内でチームを取り巻く空気が変わってしまうのだと、先輩たちから聞いていた。

今回は、休部前の区切りの大会だ。

このメンバーで野球をするのは、今年が最後とあって、みんな、力が入っている。

だけど、変に力が入りすぎるのではなく、何か手応えを感じているようだった。


チームの人たちは、来年もどこかで野球を続けることを望んでいるが、休部後には会社の業務に専念するつもりの人や、実家に戻って再就職をと考えている人もいる。


ぼくの移籍の話も、進んできた。

移籍先は、3月の大会の、予選リーグの最初の試合で対戦したチームだったことが判明した。

キャンプの期間中の練習試合で、出場の機会を多く頂けたとはいえ、社会人での初めての公式戦として、ただ夢中で試合に臨んでいた。

先方の正捕手の人は、ベテランで、体力が落ちぎみ。他の誰かをレギュラーに固定させたいところだが、抜きん出たキャッチャーがいないという状況らしい。

移籍した後、ぼくが正捕手になれる可能性が高いからではなく、真っ先に話を持ちかけてきたから、お世話になることに決めた。とにかく野球を続けられるのが嬉しいのだ。



いよいよ、地区の第一代表決定戦の前夜となった。

なかなか寝つけないでいると、居酒屋の娘さんの顔が浮かんできた。

仕事を終えたところだろうか。

いつもは、連絡できる時間が合わないからメールがほとんどだけれど、電話をしてみたくなった。


「こんばんは。夜中にすみません」

「珍しいですね。お電話なんて」

「明日が都市対抗の第1代表決定戦なんだけど、緊張しすぎて眠れないんだ」

「代表決定戦なんですか? わたしったら、予選がいつあるのか知らなくて……」

「ウチのチームの誰かから、話を聞いたりしてない?」

「連絡先を交換したのは、あなただけですから。他の選手の方にわたしの電話番号とかを、聞かれたこともないですし」


連絡先を交換したのは、チームの中では、ぼくだけ。

意外な感じがして、ちょっと喜んだが、ぼくに対して、話しやすい人だと思っているだけなのかもしれない。


「都市対抗の本大会がいつあるのかも知らないんです。出場できることになったら、試合の日にちを教えてもらって、応援に行こうと思っていて……。何だか頼りっぱなしですよね。自分でも調べなきゃ」

「今年の本大会は7月の○日から。12日間」

「そうですか。ありがとうございます」



娘さんと話をしているうちに、緊張がほぐれてきた。

電話を終えたあとは、ぐっすり眠ることができた。


翌日には、無事に第1代表での出場権を獲得。試合の結果を娘さんに知らせるメールに、

『昨日の電話のおかげで、元気が出ました!』

と書いておいた。


娘さんからは、

『良かったですね!』

とのタイトルで、返信が届いた。

『とんでもない。わたしは何もしていませんから。頑張ったのは、あなたです。都市対抗の出場決定と、逆転の満塁ホームラン、おめでとうございます。試合のことが気になって、ネットで調べていたら、あなたの活躍を取り上げた書き込みを見つけましたよ!』


こちらからは個人の成績の話はしていないのに、ぼくがホームランを打ったことを娘さんは知っていたなんて!

出場を決めることができた喜びが、何倍も増した。



【8月】に続く。

移籍に向けて進んでいるようですが、恋の話は進展がありません。

果たして、これからどうなりますやら。

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