◇5月―プロの二軍と対戦することもあります。
社会人野球の各大会の合間に、プロ野球のファーム(二軍)との交流戦を行うチームもあります。
5月のお話は、交流戦をテーマにしてみました。
後半には、都市対抗の予選のことも少し出てきます。
予選の形式は、地区によって異なります。
リーグ戦形式だったり、
トーナメントだったり、
リーグ戦とトーナメントが併用されていたり。
ほとんどの地区では、複数のチームが本大会に出場します。
日程表をチェックしながら、試合の結果をこまめに追わないと、応援するチームや、好きな選手の所属チームが、予選敗退となったのか、それとも本大会に出るチャンスが残っているのか、わかりにくくなってしまいます。
地区ごとの出場枠は、チームの数に比例しているわけではありません。
それぞれの地区の代表チームの本大会での成績などによって、時々見直されることもあります。
黒々まゆ毛さんのチームのサイトで、スケジュールをチェックしていたら、プロ野球のファーム(二軍)との試合が組まれていた。
わたしが応援しているチームとの対戦で、場所は相手チームがファームの練習や試合に使うグラウンドだ。
わたしはファームの試合を観たことはないのだが、野球そのものが大好きで、『一軍じゃなきゃイヤ』とは思っていない。
ケガや不調のためにファームで調整している選手を観る機会にもなるから、観戦に行くことにした。
友人は誘わず、一人で。
当日は、プロの選手ではなく、黒々まゆ毛さんのサインをもらいたいと思った。
目の前にわたしが現れたら、一体どんな反応をするのか、知りたいからだった。
試合は、プロのチームが3-2で勝った。
ファームとはいえプロだし、大差がついてしまうかも、なんて思ってしまっていたが、そうではなかったのだ。
「あれ? どうしたの?」
黒々まゆ毛さんから、わたしを見つけて声をかけてきた。
大きなカバンを肩からかけている。野球の用具が入っているのかな。
「どうしたの……って、応援に来たんですよ。それで、サインを頂けたらと思いまして」
「ぼくのサイン、ねぇ……。もらっても、価値はないだろう?」
「そんなことないですよ」
わたしは、ボールペンと、スケジュール帳のメモのページを差し出す。
黒々まゆ毛さんは、普通にフルネームをキッチリ書いてきた。
まゆ毛が濃すぎるから、自分の心の中では『黒々まゆ毛さん』と呼んではいるが、本名(?)も知っている。
今さら名前を書かれても……と、少し困惑したわたし。
「もっとクチャクチャして、何て書いているのかわからないような感じだと思っていたんですけど。プロの選手のサインって、だいたいそんなふうみたいだし」
「ぼくが入ってから、プロに行った人は何人かいたけど、ほとんどの人は、ドラフトで指名された後にサインを考えてたな」
「ちょっと意外です。みんな、立派なサインがあると思っていました」
「アマチュアでも、ファンへの応対に慣れている選手だったら、サインがある選手もいるだろうね。ぼくは……人気がないから」
黒々まゆ毛さんは、そう言って、苦笑いを浮かべた。
その日の夜に、黒々まゆ毛さんからメールが届いた。
『今日はありがとう。突然だったからビックリした。よかったらまた来てください。もうすぐ都市対抗の予選なんだ』
改めてスケジュールをチェックすると、5月の下旬に県の1次予選、6月には地区の2次予選が行われるとのことだった。
そして1次予選は突破したと、黒々まゆ毛さんからメールで報告を頂いた。
チームのサイトには、2次予選の大まかな日程とともに、組み合わせ表も掲載された。
地区の中で、2チームが、東京ドームでの本大会に出られるそうだ。
夏の高校野球は、地区大会で優勝したチームだけが甲子園に出場となるのだが、都市対抗は、同じ地区から複数出場するらしい。
トーナメント表が2つ載っていて、1つには『第1代表』もう1つには『第2代表』と書いてある。
第2代表のトーナメント表の上には、
≪敗者復活戦≫
とも書かれている。
一度負けてしまっても、敗者復活で本大会に出られるチャンスが残るというわけか。
でもやっぱり、『第1』で出場してほしいな。
【7月】に続く。
途中で『サイン』の話が出てきました。
アマチュア野球の選手の場合、サインがある選手も、ない(名前を普通に書く)選手もいるようです。
どちらかというと、ない選手のほうが多いでしょうかね……。