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◆10月―ドラフト会議が行われます。

社会人野球日本選手権は、毎年秋の開催です。

近年は、10月末〜11月上旬に行われています。

球場は何度か変わりましたが、ずっと関西で行われていて、現在は京セラドーム大阪が使われています。


プロ野球のドラフト会議は、昔はシーズンオフの11月でしたが、近年は10月下旬ぐらいに開かれています。

ドラフトで指名した選手の入団を早々と決めて、11月のファン感謝イベント(たいていのチームは11月23日の勤労感謝の日に開催)で、来年入団する新人選手の御披露目をするチームもあります。


ドラフトが行われるのが社会人野球日本選手権の開催前、年によっては大会の期間中であるため、日本選手権ではドラフトで指名された選手の動向が注目を集めるところですね。


社会人野球での公式大会は、日本選手権でほぼ終了(地域によっては、日本選手権の後に公式の試合が組まれることもあります)のため、日本選手権の出場チームからプロ入りする選手にとってはアマチュアでの最後の試合。そして引退する選手にとっては、野球選手としての最後の試合となります。

日本選手権の開幕が近づいてきた。

今回の日本選手権は、プロ野球のドラフト会議の直後に行われる。


社会人の選手は、高卒で3年目から、大卒で2年目から、ドラフトの指名の対象になる。

ただし、チームの休部・廃部が決まっている場合は、1年目と高卒2年目の選手も、特例で対象になる。


社会人1年目で、シーズン終了後に休部するチームに所属するぼくも、『ドラフト候補』になっているらしい。


高校を卒業した後、音沙汰のなかったクラスメート(男)から、突然電話が掛かってきた。

そのクラスメートは、運動系の部活動には所属していなかったが、スポーツ観戦マニアだった。

スポーツ新聞に掲載された、ドラフト候補選手のリストで、数多くの選手の中からぼくの名前を見つけ出したとか。


「プロに行くなんて、すごいな〜!」

「指名される資格はあるらしいけど、今すぐプロに行くつもりはないよ」

「なんだぁ。プロになったら応援しようと思っていたのに」

落ち込んだような言い方だった。


ぼくがプロにならなくて、来年も社会人でプレーするのなら、応援してくれないのだろうか。


他のクラスメートには、大学の時も、社会人になってからも、ぼくの試合を観に来てくれる人たちだっているというのに。

高校時代から仲が良かった友人だけではなく、あまり付き合いがなかった人もだ。


プロ入りを考えていないのは、早々とぼくを受け入れることを決めた、移籍予定のチームへの恩義もある。

けれど、一番の理由は、アマチュアの舞台でもっと力をつけたいから。

社会人からプロ入りする選手は、どうしても『即戦力』として見られてしまうが、今の段階でのぼくは、まだ成長の途上のような気がする。



同い年で、ぼくと同じように所属チームの休部が決まってしまい、『ドラフト1位候補』と呼ばれている選手もいる。

ピッチャーで、大学の時もドラフト候補として名前が出ていた。社会人ではすぐさまエース格の活躍をした。

チームの休部が発表されたのは、都市対抗が終わったあとだったので、急きょ『1位候補』に挙がったわけだ。



ドラフトの前日の夜。

愛しい人から届いたメールのタイトルは、

『ドラフト会議』

だった。


『あなたは、来年の今頃、どこでどんな暮らしをしているのでしょう? プロの選手になっているのかもしれませんね。プロになるとしても、ならないとしても、どこかの街であなたと一緒に過ごす時間ができたらいいな、なんて、考えています』


しまった。

移籍することは話していたけれど、どこに行くのか言ってなかったっけ。


高校生や大学生なら、『プロ野球志望届』を提出した選手が、ドラフトの指名の対象になる。社会人の場合は、プロ入りを望む選手でも、『プロ志望届』の提出はない。

逆に言えば、ぼくが『今年はプロに行きません』と言っていても、指名されることが100%ないとは言い切れないわけだ。


ぼくが来年どこに住むのか知らせるのは、ドラフトが終わってからの方が良いだろうか?

彼女が、ぼくと一緒に過ごす時間がほしいと思ってくれているのは、喜ばしいこと。

遠距離である上、シーズン中のぼくは野球中心の日々を過ごしているから、なかなか会えず、お互いの気持ちを確かめあってからもメールや電話での連絡ばかりになっている。

来年、会いに来てくれるのなら、ますます嬉しい。



ドラフトは、予定通り(?)ぼくは指名されなかった。

同い年で、別の休部予定チームにいるピッチャーは、1位指名が2チーム重複して、くじ引きの結果、関東のチームが交渉権を獲得した。



彼女には、移籍先のチームの名前とともに、拠点にする場所についても、メールで知らせておいた。


その返信には、ぼくたちのチームの1回戦の日に合わせて家族旅行の旅程を組んだこと、勝ったら彼女だけ大阪に残って応援することが書いてあった。


『大阪に知り合いも親戚もいないので、単身向けで安〜いホテルに泊まります。家族で泊まるのは、ゆったり過ごせそうなところです』


ぼくの家族も、1回戦を観に来てくれる予定なのだ。彼女の家族と一緒に観戦してはどうかと考えたけれど、ぼくたちは結婚の約束をしたカップルではなく、遠距離恋愛を始めたばかり。家族同士の顔合わせはまだ早いような気がする。

ただし、球場で試合が終わった後などに、あいさつを交わす機会はあるかもしれない。


彼女の家族はぼくのことを知っているけれど、ぼくと付き合い始めたことを彼女から話したかどうかは分からない。

ウチの親には、『キャンプ地でお世話になった方』と言っておくことにしようか。いや、いっそのこと堂々と、『付き合っています』と宣言したほうがスッキリするだろうか。



【12月】に続く。

このお話の主人公がプロ入りしないことに、ちょっとガッカリな方もいることでしょう。

私は個人的に、ドラフトで指名された選手だけが『いい選手』なのだとは思っていません。

もちろん、指名されるというのは素晴らしいことですよ。

社会人野球にはいい選手がたくさんいて、いい試合がたくさん行われているので、もっと多くの方に注目してもらいたいのです。

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