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勇者の旅立ち

 ――主都ケルブ・南門――

「あのう、流石に早すぎませんか?今何時だと思ってるんですか!」

「おいおい、そっちこそ何時だと思ってんだ?声のボリューム落とせって」

 えー今、朝の4時です。春先なのでまだ寒いですねー。この街が本格的に活動するのは朝7時ぐらいだから街並みはどこか閑散としていて寂しげ。まず人がいないから活気もあったもんじゃない。

「いきなり私の家に来たと思ったら、フウランに行くぞ。じゃないですよ!もっと時間は遅くてもいいじゃないですかー、朝弱いんですよ私!」

 ええい、騒ぐなシグルド。俺だって眠い、けどこの時間じゃないと、誰に見つかるか分からん。特に聖女だな、アイツに捕まると面倒だからな。

「思ったんだけどお前、女だったんだな。男装で若造って言われてたし、てっきり男かと」

 いや女って言われてみると女なんだが、随分と中性的な顔で大人になったな。あと、胸が・・・残n

「何か失礼なこと考えてませんかシノギさん?」

 おぉ、笑顔が怖いぜシグルドちゃん・・・。

【シノギは失礼なことを考えてることを悟られた!】 

「失礼なことなんて考えてませんとも・・・聞きたいんだけどお前年幾つ?」

「19です、勇者様の1つ下ですよ。なぜ笑うんですか!?」

 思わず笑ってしまった。この童顔で19は無いわ。17ぐらいかと思ったんだが外れたな。

 どっちみち19であの胸の成長具合では絶望的だろうな。身長も俺の頭1つくらい小さいしな。

 っつーことは身長150ぐらいのすれんだーな女の子が監視か・・・。逆だったら犯罪じゃね?こっちは許されるらしい、あら理不尽。

「また失礼なことを考えてますね、怒りますよ!」

 おっと怖い、ここで「もう、怒ってんじゃん?」とか言ったら完全にアウトだな。

「悪い悪い。からかいがいがあってどうしても・・・な」

 謝る俺。やりすぎると怒られるからな。

 長々と話してると時間が危ないな。いい加減馬車を探すか・・・。

「もう、からかいがいがあるだなんて・・・ふざけてないで行きますよ」

 頬を赤くして言うシグルド。なんだ寒かったのか・・・ホントに悪いことしちまったな。

「すいませーん!その馬車どこ行きですか?フウラン方面行きだったら乗せてってもらいたいんですか」

「うーん、ウチはフウランには寄ってかないね。向こうの方の馬車はフウラン行きだと思うよ」

 と馬車の持ち主が指さした。

「ありがとうございます」

 さてシグルドのおかげで向こうの馬車がフウラン行きだそうだ。


「すいませーん、この馬車はフウラン行きですか?あちらの方から聞いたのですが」

 休憩中なのかケルプスを飲みながらトーストを食べている男が

「ん?あぁ確かにウチはフウラン行きの馬車だね。お客さんかい?それとも護衛の用事かい?」

「どっちかっていうと護衛だな。身分の証明とかが出来ないのが残念だが」

 今は元・勇者だしな。ただのちょっと戦い慣れてる一般人だな。

「そうですか・・・。君の顔見たことがあるんだけど、もしかして有名人ですか?」

「そうなんですよ!この人は勇syむぐっ!」

 ええい!いらんことを言うな!?シグルドの口を無理やり塞ぐ(無論、手で)

 そんな俺達の様子を見て苦笑したケルプスの男は

「仲が良いんだね君たち。この所魔物たちも街道には多くないから、君たちを雇っても良いんだけどね」

「むぐっ!むぐむぐ!?(なら、お願いしてもいいですか?」

 むぐむぐ喋りだしたぞコイツ・・・。と俺が戦慄してると

「そろそろ離してあげたらどうだい?君。むぐむぐ言われても分からないしね」 

 それもそうだな、反省しろシグルド!

「プハッ!ケホッ!苦しかったです・・・。その話受けさせて頂きます。ありがとうございます!」

「いえいえ、これでも人を見る目には自信がありましてね。僕の勘が安全だと言ってる気がするので大丈夫でしょう」

「そうか、ありがとう。いつ頃出れそうだ?」

 出来るだけ早めに出たいことを伝えると

「そうですね・・・もうすぐフウランへ送る荷物が来るので積む時間を考えると、30分ぐらい後でなら出せますよ」

 30分か・・・大丈夫だな。よし!

「なら、その時間で頼む。それでいいよな、シグルド?」

「はい!大丈夫ですよ」

 さて、時間が来るまで暇だな・・・。

「お二方、護衛の報酬はどうしますか?僕たち商人は個人依頼での護衛は金銭より物品などになってしまうんですが」

 報酬か・・・。考えてなかったな。さて、どうするか。チラッとシグルドを見ると首を横に振っていた。任せるってことかな?

「そうだな。今は傷薬なんかが不足してるから報酬としてもらいたいな。あと、」

「あと?」

 俺はニヤリと笑うと

「他の商人に口利きして欲しいかなって・・・。こういうやつがいたと言ってくれるだけでいいんだ」

 商人は驚くと

「それが君の報酬でいいんですか?随分と無欲なんですね。僕が君のことを悪く言うかもしれないのに?」

 あ~そういう風に捉えるのね。

「商人は信頼が命だろ?俺はお前に信頼を置いた。お前は俺のことを見て勘が良い方向に働いたんだ。これでどっちも信頼できるってことが分かったんだ。だから報酬は薬と信頼そして知名度だ。どうだ?欲まみれだろ」

 俺の言葉を聞いた商人は笑っていた。変なことを言ったつもりはないんだが・・・?


 笑いが収まったのか真剣な顔をした商人が

「すいません。名前を聞いてもいいですか?」

「先に名乗るのが筋じゃないか?普通」

 と、おれが言うとまた笑って

「そうですね、それが礼儀です。失礼しました、私の名前はツェンと言います。出身は西の都アスランです」

 西か・・・特徴的な名前だしな。予想はついたが、

「んじゃこっちの自己紹介だな。俺はシノギ、冒険者志望だ。この女がシグルド。俺の仲間だ」

 おい、そこの仲間って単語で変な顔すんな。

「うふふ、仲間のシグルドです。よろしくお願いしますね」

 うふふって・・・何がうれしいんだか。呆れてる俺を尻目にツェンは話し出した。

「さて本題に入りましょう。率直に言いますと君たちの報酬の件は了解しました。期待してください」

 そりゃ良かった。情報も集めやすくなるな。

「と、ここで僕からも提案です」

 提案?なんだ?

「個人的な関係を結びたいんですよ。君みたいな人は他に見ない、しかも冒険者志望?その頭で冒険者になるのがもったいないぐらいです」

 おおう、いきなりまくしたてられても、困るぜ。

「君に興味を持ちました。ぜひ君の旅に連れてってもらえませんか?」

 連れてって?てことは仲間になるってこと?

おいおい男に興味を持たれたって・・・色んな意味でヤバイだろ。

「危ない旅になるかもしれないぜ?いいのか?」

「大丈夫です。護身ぐらいならできますか」

そう言って取り出したのは指ぬきグローブ。ん、グローブ?え、魔物殴るの、この人。

「いえいえ、本当に護身のレベルですよ。強化魔術は一通り使えますけどね」

 そう笑うと、グローブをしまってこっちを見た。

「という訳で僕を仲間に入れてください!決して損はさせませんよ」

 まぁ構わんが・・・。

「シグルドはどうだ?コイツと旅を一緒にしてもいいか?」

「私は構いませんよ。人は多いほうが楽しいですからね」コイツ・・・俺の監視(護衛)じゃなかったかな。

「では改めてツェンです。これからもよろしくお願いします」

【新しい仲間が増えた!】

 さて、そろそろ時間か・・・。フウランまでそんなに距離は無いからな、ゆっくりと行こう。

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