勇者の武器(相棒)
っつ!?ここはどこだ・・・?
なんかもやもやするな。
「気がついたか?お前」
ん、なんだ?声がするな・・・。随分と幼い、良く言えば高い声だが、誰だ?
「失礼な!私は幼くないぞ!」
そこには美しい紋様が描かれた鞘を腰に携えた幼女が立っていた。
おっと、思い出したぞ。ここはムラマサの中だな?
「そういうことだ。ここは私の世界だ、どうせお前は私を従えに来たんだろう?」
まぁ、そういうことになるな。しかし、いつになっても慣れないな、心の声が漏れてるのは。
「ゴホン!改めて、私の名は村正」
ご丁寧にどうも。俺はシノギだ。
「この世界に来たということは私の力を借りたい、ということだろう?」
おおむねそういうことで合ってるな。
「ならば――――。」
覚悟を!力を示せ!だろう?
「台詞取られた・・・。よく分かってるじゃないか!」
それじゃ始めますか・・・!
「コホン!訳知りっぽいから説明は要らないな?」
あぁ、行くぞ!戦闘開始だ・・・!
戦闘が始まった瞬間に踏み込みで間合いが詰めらめた。斜め下から首に横振りがきた!後ろにステップして避けると今度は鞘が顔に飛んできた。
ッア!危ねぇ・・・。
それをしゃがんで避け、こっちも踏み込んで剣を振り上げた。
「ふっ。今のを避けるなんて・・・出来るな」
見た目は華奢な少女。しかし持っているモノと技量は一級品か・・・。冗談みたいな光景だな。
一発一発が致命傷、その武器がギロチンに見えてくるぜ・・・だが、長々と戦ってられんから決めさせてもらうぞ!
「ほう!奥の手か?使えばいい・・・使えるものならな!!」
そう言って攻撃を一層激しくするムラマサ。コイツ強いな・・・!だが強者だからこその弱点というのがある。
「ふん、弱点だと?お前の考えてることはまる分かりだぞ?どうする気だ」
こうするんだよ!!
俺はムラマサの刀の連撃を避けた瞬間、詠唱を始めた。
「剣で勝てなかったら魔法でか?甘いんだよ!!そんな時間与えると思うか?」
詰めて俺に連撃を食らわせようとしたムラマサの動きが止まった。
「お前・・・なに考えてる?それを私にぶつけたら無事じゃすまないぞ?」
広範囲殲滅魔術―逆炎ノ十字架―詠唱完了まで12秒。
お前らの弱点を教えてやる!強くなったやつってのは自分に驕り、価値観が変わってくる。自分の命が惜しいよなぁ!そうだよな!
けどな、持たないものは唯一の自分の命を賭けに出せるんだ!お前とは最初から覚悟が違うんだよ!
「そうか・・・覚悟か、確かにこの身になってからそんなこと感じたことも無かったな。」
しみじみと呟くムラマサ。
広範囲殲滅魔術―逆炎ノ十字架―詠唱完了まで3秒。
「お前の覚悟、見せてもらった。このムラマサ、汝の覚悟が揺るがない限り汝に命を預けよう・・・!」
広範囲殲滅魔術―逆炎ノ十字架―発動。
瞬間、熱と炎が世界を覆った。
――ロイの工房――
意識が朦朧とする。暑いな・・・。
「お、目が覚めたか。流石に気分は優れなそうだなボウズ。少し寝ていろ」
ここはジジイの工房か・・・。自分に上級の改変魔術撃ち込むのは流石にやり過ぎたな。今後は注意しよう、精神世界でこんだけ傷負ったんだから現実世界は消し炭だな・・・。
「ムラマサはどうしてる?まさか消し炭になってないよな?」
消し炭だったら大惨事である。
「俺が創った武器だぞ?しかも過去に例を見ないくらいの最高級の。そんな簡単には傷を負わんさ。」
だ、そうだ。そりゃあんだけ強いわな。
「ムラマサも今は寝てる。すぐには起きんだろうからゆっくりしていろ。ボウズはこの街から出るんだろう?いつ頃になりそうだ?」
「あー、明日には出たいと思ってる」
「なかなか急だな。なら明日までにムラマサのメンテナンスをしておこう、少なくとも認められてるみたいだからな」
苦笑して部屋を出ていくジジイ。
「さて、明日までに熱は収まるよな。明日の段取り考えながら寝るかな」
ふう、なんか今日は疲れた。明日は旅立ちだ、手がかり見つかるといいけどな。
その夜は夢を見なかった気がする。
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詠唱しなくても魔法は撃てます。詠唱すると威力と制御を細かくできます。
広範囲殲滅魔術―逆炎ノ十字架の詠唱は、
「逆さに吊られし刑死者よ、汝の悪を迎え、正義の御旗を塗りつぶさん。炎よ!愚かにも生きる者を燃やし尽くせ!」
以上




