勇者の準備 武器編
夢を見ていた。平和な夢だ。
まぁ、見慣れてるがな。
毎日、毎日同じことを繰り返して生きているだけの日々。
其処に進歩は無く、だが危険もない。
死んではいない。だが生きているかと問われると首をかしげる。
しかし、争いは少なく人が死ぬこともほとんどない。
そんな世界の夢だ。
どこか虚ろで死んだような世界。
人は盲目的に、世界は受動的に死んでいく。
誰もが当然だと思っている。最愛ですらこの世界では無力だろう。
俺はその夢の中でそんな光景をどこかで見たことがある。これが元の世界の光景だ。
けど、こんな世界でも異変が訪れる。もう、何年も見飽きた光景、しかし食い入るように見てしまう光景。
暗転。暗闇が晴れると一面が赤色になってた。これも見飽きた光景だ。見渡すばかりの赤、朱、紅。
どこの地獄だって話だ。くそっ!!
―宿屋―
「はっ!?はぁ、またこの夢か・・・、胸くそ悪いな」
とりあえず、水飲もう。ふぅ
「もう昼前か・・・寝過ぎたな。早く準備するか」
さて、シグルドも準備するって帰ったしな。
「明後日にこの街を出るんですよね?なら、その日に集合して出発しましょう」
護衛(監視)って離れていいんかな・・・?
ま、いいか!・・・いいのか?笑顔でGカウ食ってたし、アイツかなり食ってたな。
昨日の内に
よし!鍛冶屋とか防具屋とか行って準備するか。
―デクダル商業区―
熱が支配した空間に俺は来た。
「おい!ボウズ久しぶりだな!今日はどうした?」
「変わらねえなロイのジジイ!一ヶ月ぶりだな、頼んでた物は出来てるか?」
ロイは齢70ぐらいのドワーフの全体的に白いジジイだ。髭、髪、服装が白いから畏怖を込めて白翁なんて呼ばれてる鍛冶屋の元締め。
「おう!まったく面白いもん考えるもんだシノギ。設計通りにできてるぜ!なんだもう入り用か?」
「また旅に出ることになってよー。使う気は毛頭なかったんだが、これを気に使おうかと思ってよ。」
俺が頼んでた物というのは・・・
「しかし、お前ぐらいじゃないか?こんな武器使うのは」
「まあな。慣れなきゃ振ることも出来ないと思うぜ、この刀は」
「たしかムラマサだったか?名前。打ってて楽しい武器なんざ久しぶりだったな・・・」
楽しそうに語るロイ。根っからの鍛冶屋だなジジイ。
「つっても武器なんて究極、人殺しのためだからな。使い所間違えんなよ?ってそんな糞餓鬼じゃないか」
互いに笑いあう二人。
「分かってるよ。実際に魔物相手に使って感覚を確かめるさ」
さてと、俺を認めてくれるかなこの武器は。
この世界の武器はたまに意思を持つことがある。
理由は分からない。他にも意思をもつ木とかあるぐらいだから似たような物だろう。
俺の予想ではこのムラマサは意思を持っていると思う。何故か?それは白翁が、数少ない意思持つ武器の打ち手だからだ。打ち手は年々減少の一途を辿っているらしいが・・・。
このジジイはそんな稀少な達人というわけだ。
武器というのは相棒のようなもので戦場では命を預ける物だ。それの扱いを間違えたやつは長生きできない。だから信頼してる人に任せるんだが・・・。俺の場合はジジイだな。
おっと、心を読まれたかな?ジジイばっか連呼してるからか、今ジジイが嫌な顔していたけど。
「失礼なこと考えてなかったか、ボウズ?」
「いやいや、流石は白翁信頼できると思っただけさ」おれが苦笑しながら言うとニヤっと笑って
「じゃあ、早くやってしまえ、安心しろきちんと宿っている」
「分かったよ」
さて鬼が出るか、蛇が出るか!
俺はムラマサを手に取った。




